ハワイにて起業をし、エステサロンの経営やオーガニックコスメ通販サイトなどをはじめ5つの事業を経営しているイゲット千恵子さん。しかし、その輝かしい業績の裏には離婚、難病経験など苦悩もあったワーキングマザーでした。本インタビューでは、様々な困難を乗り越え、ハワイにてどのようにビジネスを軌道に乗せていったのか、その道のりを伺いました。
イゲット千恵子 ハワイ在住 女性起業家(Beauty Therapy LLC 代表取締役)。20代でネイルサロンを経営し、結婚、出産、離婚、難病、国際再婚を経てハワイへ移住。自らのアトピーや病気の経験から40代で再び起業し、オーガニックスパ「グリーンスパハワイ」をオープン。誰でも安心して使えるオーガニックコスメ通販サイトは、SNSの発信のみで世界中に顧客を持ち、初年度は3000万円の売上を達成。海外での子育て経験から、2016年4月には著書「経営者を育てるアメリカの親、労働者を育てる日本の親」を出版。現在は世界各国でセミナー活動も行う。 ブログ:http://ameblo.jp/beautifulhawaii/ posted with amazlet at 17.04.01
イゲット 千恵子
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Contents
起業のキッカケは、オジサンとは働きたくなかったから(笑)!?
―千恵子さんは、昔からハワイに住みたいと考えていたんですか?
15歳の時にハワイに住む叔父の家に行き、この島の魅力にとりつかれて。それから高校を卒業して、ハワイの大学に進学しました。卒業後もそのままハワイで働きたかったのですが両親に反対され、日本に帰って就職しました。でも入社してすぐに、大企業のオジサンと働くのは嫌だなと気づいて(笑)。手に職をつけて起業しようと、カルフォルニアでライセンスを取得し、25歳の時にネイルサロンを始めました。
ハワイではネイルが流行っていたので、ゆくゆくは日本にもその波が来るだろうと思って起業しましたが、私の両親は普通のサラリーマンと専業主婦。「ネイルにお金を払う人なんているとは思えないし、起業なんてしないでお嫁に行きなさい」と言って理解はしてもらえませんでした。でも、その当時はネイルサロンの先駆けだったので、付け爪が一人3万円ぐらいの時代。あっという間に私の店は大繁盛しちゃったんです。
誰に一番高く、自分のビジネスを買ってもらえるか考えた
―初めての起業なのに凄いですね! 時代の要素以外に、うまくいった理由はありますか?
私は神奈川県の藤沢市出身なんですが、その辺りって鵠沼や鎌倉などお金持ちが住んでいるエリアがあるんです。ネイルは日本で浸透していなかったので、「これは富裕層向けのビジネスにしないと成り立たないな」と思い、大きなお屋敷にチラシをポスティングして回りました。
すると、お金持ちの奥さんがお客様についてくれて、あっという間にクチコミで広がっていきました。この仕事を誰が一番高く買ってくれるか常に考えていたので、最初からターゲットを絞っていたんですよね。
出産後すぐに離婚、そして難病に
起業をしてしばらくしてから、高校の同級生と結婚したのですが、彼は私に専業主婦になってほしい人でした。でも、私は昔から仕事が大好きで、ワーカホリックなんです。次第に「僕より仕事の方が大事なんでしょ?」と二人の間に溝ができてしまいました。
また、子供を授かったのですが、その際にも意見がぶつかってしまいました。私はアメリカで出産して、子供にアメリカと日本の二重国籍を与えたかった。そうしたら、20年後に経済がいい国を子供に選んであげられるからとハワイで出産したのですが、その後、離婚に至りました。さらに追い討ちをかけるように、膠原病という手足が動かなくなる病気にまでなってしまい、ネイルサロンの仕事ができなくなってしまいました。
当時の日本には膠原病の治療法もありませんでしたし、離婚もしてしまった。病気療養も兼ねて人生を立て直そうと、赤ちゃんを連れて3ヶ月だけハワイに行きました。するとアメリカは医療が日本より10年進んでいたし、ハワイの気候もいいからか、関節の痛みや筋肉のこわばりもなくなって、元気になっちゃったんです。
婚活でもマーケティングが必要!?
体も元気になったし、まだ子供も赤ちゃんだったから、じゃあ婚活でもしちゃおうかと思っていたら、たまたまお友達の紹介で出会った男性と結婚することになったんです。それが今の旦那さんです。
―えっ!? ハワイにいた3ヶ月間の間に結婚相手を見つけたって、ものすごくスピード婚ですね!
そう。3ヶ月で見つけて、その1年後に結婚したんです。これもマーケティングだったんですよ。
1回目の結婚は、10年間付き合って結婚したけど、結局3年で離婚してしまった。だから、なぜ失敗したのか理由を全部書き出していって、次に結婚する人はどういう人がいいんだろう、どんな人だったら私のことを評価してくれるだろうと考えて、理想の結婚相手の条件を50項目ぐらい書き出していったんです。
その分析を経て、私はバツイチで子持ちだし仕事も大好きなので、日本人じゃなく外人マーケットの方がいいんじゃないかと思ったんです。また私だけじゃなくて、子供も愛してくれる人がよかったので、年が12歳以上離れていて子供を育てた経験がある人がいいと思っていました。その他にもデブOK、ハゲOK、再婚子持ちOK、子持ちだったら男の子など、とにかく細かく書き出していきました(笑)。そしたら、この項目にピッタリ当てはまる人が現れたから、「この人!」と思って結婚しました。
―国際結婚で、しかもスピード婚。こんなはずじゃなかったのに!? と、思ったことはなかったのですか?
1回目の結婚は日本人の旦那さんだったけど、同じ言語でも結局通じ合えなかった。外国人だったら、言葉も文化も違う前提でお互い理解しようとする。もちろん英語のハンディがあるから、言いたいことが言えなくてフラストレーションが溜まることもあるけど、逆に言語が違うから激しい口論になることもなく、平和に暮らしてますよ。
アトピーや膠原病、子宮がんの経験からオーガニックスパを設立
ハワイに住みはじめて4年ぐらいは専業主婦で、子育てだけをしていました。元々私は仕事が好きでワーカホリックだから、働くとまた家庭崩壊してしまうんじゃないかと思って躊躇していたんです。
でもアメリカ人の男性って、奥さんに稼いでもらいたいと思っているんです。奥さんが稼いでいたり活躍しているのが自慢なんですよ。だから旦那さんに働きたいと言ったら、大賛成。うちの息子も「ママはハワイにビジネスをするために来たんだから、やればいいじゃん」と言ってくれたので、働き始めました。
はじめはハレクラニやカハラホテルの超高級スパに勤務したり、美容学校で講師をしていましたが、次第にオーガニックエステサロンを経営したいと思うようになりました。
というのも、私はアトピーなどのアレルギーや、膠原病や子宮頸がんなどの病気も経験し、化学物質によって便利な社会になったけれど、その副作用として健康を害してしまっているんじゃないかと考えるようになったから。そこでオーガニックドクターズコスメを使用し、アレルギーや敏感肌などの対応ができるエステサロン「グルーンスパハワイ」を設立しました。
でも、ハワイの人々は南国気質で仕事ものんびり。エステサロンの設営工事がなかなか進まず、経費がかさむばかり。その解決策として、オーガニック化粧品のECサイトを開設したのですが、これが爆発的にヒットし最初の8ヶ月で3000万円を売り上げてしまったんです。
ほとんどコストをかけず、8ヶ月で売上3000万円の理由
お客さんのほとんどは、私のブログを読んでいた読者さんでした。
実は起業をする4年前からブログを書いていて、ハワイでブログを書いている日本人は少なかったので、ブログランキングでは常に上位でした。また、どういうブログタイトルだったらGoogleで上位表示されるのか、どういう記事を書いたら人は反応するのか、マーケティングが好きだったので、試行錯誤を繰り返していたら次第に読者が増えていき、オンラインサイトを始める頃には1000名以上の読者がいました。
また私はそれまで物販の経験もなかったし、元々ショッピングに興味がない人だから消費者心理がわからなかったのですが、どういう言葉を使えば消費者は心が躍って買いたくなるか、日々ブログを使って分析していったところ、売り上げもどんどん上がっていきました。
通販サイトはGoogleで調べたりしながら自分で作ったし、宣伝もブログのみ。それにブログ記事は、紙の広告と違いWeb上に残るから、検索をして私のブログに辿り着いたメディアの方からお声がけいただき、色々な雑誌に取り上げていただきました。だから初期費用や宣伝費はゼロ。全く何も知らない状態から、ほとんどコストをかけずに始めることができました。ネットを使えば、小さい島に住んでいても世界の人にリーチできる。だから、もうネットに弱いとか言ってられないですよね。
また人に紹介する前に、自分で商品の効果を確かめようと、商品を使う前と後でアトピーが改善していく経過を写真で記録していたんです。そのビフォーアフターの写真や体験談も効果がありましたね。でもそれをやらないと、日本未上陸で無名の商品を売るなんて無理だと思うんですよ。人は効果が目に見えて分からないと、ほしいと思わないですから。
女性が起業するならこの3つを考えて
―最近は千恵子さんのように、出産後も働きたいママや、自分でビジネスをしたい女性が増えているように思います。そんな女性にはどんなビジネスが向いていると思いますか?
まずは自分を活かせる仕事がいいと思います。私の場合は20年美容業界で働いてきましたし、アトピーや膠原病やガンを経てオーガニック化粧品についても学んだ経験があったので、今の仕事をしています。
あとは、今のニーズと未来のニーズが合致した仕事がいいと思います。私がサロンを始めた時は、オーガニック化粧品が流行るちょっと前。何を使っていいか分からないオーガニックジプシーみたいな人が、たくさんいたんですよ。この「今のニーズと未来のニーズが合致した仕事」というのは、時代によって変わる。もし私が、今からハワイに移住してビジネスを始めるとしたら、同じビジネスはしないと思いますね。
そして大事なのが、社会貢献できる仕事であること。例えば私が普通のエステサロンをやっていると言っても、誰も興味を持ってくれない。「じゃあいくらなの?」と聞かれて値段で決められてしまう。でも私はアトピーや膠原病やガンなどの経験から、敏感肌専門のオーガニックスパを経営し、このビジネスを通じて健康的なライフスタイルを提案している。そういう社会貢献につながる仕事をしているからこそ、多くの人に応援してもらえるのです。
また女性は出産もありますし、子供が風邪をひいたとか熱を出したなど男性に比べて障害があるから、大義名分がないとモチベーションが続かないんです。自分がその仕事をすることによって、世の中にどう貢献できるか説明できる仕事じゃないと、途中で投げ出してしまうと思うんです。
失敗しても1つも無駄にならない、骨まで食べられる魚みたいに(笑)
―千恵子さんがお仕事をする中で、大変だったことはありますか?
細かい大変なことはあるけれど、嫌だなとか辞めたいと思ったことはないです。だって仕事は趣味だもん。毎日ゲームをしている感じ。365日中、360日働いて残りの5日は病気で休むって感じでずっとやっていたい。
私は0から1を作ること、人がまだチャレンジしていないことをしたいという想いが強いんです。それにチャレンジしたことって、決して無駄にならないじゃないですか。もし失敗しても、そこから学んだことをネタにしてセミナーにして売ることもできちゃうから、一つも無駄にならない。骨まで食べられる魚みたいに(笑)。
日本人って失敗したらどうしようとか、まず失敗から考えていくじゃないですか。でも私は面白そうだと思ったら、走り出しちゃう。だから一緒に働くスタッフには「えっ、また新しいこと始めるんですか?」って嫌がられるですけどね(笑)
よく名刺の裏に取得した資格をたくさん書いているけれど、その資格を全く使っていない人も少なくない。そういう人に会う度に「どこまで勉強するの? それいつ使うの?」っていつも思う。日本人って真面目だから、一度始めたら失敗できない、辞めちゃいけないって思うからチャレンジできない人が多いけれど、もっと何でもやっちゃえばいいと思う。やってみて違うなと思ったら、また別のことをすればいいんだから。
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数々の困難を経験しながらも、常に明るく前向きなイゲット千恵子さん。インタビュー後編では、海外で13年子育てをした経験をまとめた著書「経営者を育てるアメリカの親、労働者を育てる日本の親」について伺いながら、これからの時代の目指すべき教育や、女性の働き方についてお話いただきました。
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