移住は幸せの選択肢になる? 灯台もと暮らし編集長・伊佐知美さんと考える、私たちの生きる場所

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地方移住。
この言葉は、最近テレビや雑誌で多く聞かれるようになりました。

けれど移住が身近になってきた今だからこそ、「移住を迷っているけれど決められない」「移住をしたいけど不安がある」そんな悩みを抱えている人もいるのではないでしょうか。

そこで今回、書籍「移住女子」の著者であり、Webメディア「灯台もと暮らし」編集長の伊佐知美さんに、新潟に移住した私が移住をテーマにお話をうかがってきました。

今の暮らしに迷いを感じている人、移住に興味がある人にとって、考え方のヒントになると思います。

◎伊佐知美さん
1986年生まれのライター、エディター、フォトグラファー。三井住友カード、講談社勤務を経て独立。現在は㈱Waseiに所属。国内外を取材&移動しながら暮らしています。著書に『移住女子』(新潮社)。
Twitter:https://twitter.com/tomomi_isa
世界一周ブログ:https://note.mu/tomomisa
ポートフォリオサイト:tomomiisa.com
◎フリーライター/ルリ子
2016年より新潟を拠点にライターを始める。観光やグルメ情報をメインに各Webメディアへ寄稿。個人メディア「暮らしミル」では地方で生きる方たちに取材をしています。
Twitter:https://twitter.com/ruricocoa
暮らしミル:http://kurashimiru.com/

自分の選択に納得感を持って移住する

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ルリ子:伊佐さんの著書「移住女子」では、移住された8人の女性に取材をされています。最近では移住という言葉がよく聞かれますが、移住することは幸せの選択肢になると思いますか?

伊佐:はい、「移住したら必ず幸せになれる」とは言い切れないけれど、「移住が幸せの選択肢になるかどうか」の問いなら、確実にYESです

ルリ子:そう断言できるのはどうしてですか?

伊佐:彼女たちは震災などをきっかけに、「お金に頼りすぎず、食べるものは自分で作ろう」と住居地を見つめ直したり、新しい土地でやりたいことを見つけたり、前向きな理由で移住をしている、と私の目には映りました。
もちろん新しい土地で信頼を積み上げていく努力や覚悟は必要だと思いますが、彼女たちが幸せに生きているのは、自分の選択に納得感をもって移住したからだと思います。「幸せってなんだろう?」って私もよく考えるテーマ。難しいけれど、選んだ人生に納得感が持てるかどうかって、すごく大切な気がしています

ルリ子:納得感かぁ。私の場合は結婚を機に夫の出身である新潟に移住をしたので、最初から住む場所に納得感を持つことが難しかったんですよね。

伊佐:うーん。でも最愛のパートナーと一緒に暮らしの基盤を作れるって、とっても美しいことだと私は思いますよ。住んだ場所が合わなかったら、パートナーの責任にしやすいというのはあるかもしれないけど、何かあったら相談もできるし。自分ひとりだったら、責任を取るのはいつも自分しかいないですよね。

ルリ子:そうですね、頼れる人が側にいるのは心強いです。ただパートナーがいるとふたりで話し合う必要があるので、独身の方が移住しやすいですよね?

伊佐:「身軽さ」で言えば、独身の方がいいですね。ひとりだったら好きに選べるけれど、ふたりならふたりで一緒に選ぶ必要がある。さらに子どもがいれば、教育環境も大切な要素。
ただもしルリ子さんが独身で、場所を問わずに仕事ができるとしたら、どこに住んでもいいわけですよね? 自由だからこそ、選択肢が増えて悩みも増えてくるんじゃないですかね。難しいな〜。人生はバランスだ(笑)。

ルリ子:身軽さや自由は独身の方があるけど、選択肢が多いのも悩みどころですね。移住地の見極めはそれだけ難しさがあると思うんですが、「移住女子」の方たちは、しっかりと自分に合う場所を見つけていますよね?

伊佐:彼女たちも最初からうまくいっているわけではなくて、新しい土地で適応していくまでに色々な苦労があったと思います。私はよく、「彼女たちの未来と、地域の未来が重なっているから幸せそうに見えるのでは?」と言いますが、自分に余裕がなければ、地域のために何かをしようとは思えないですよね

「心地よく暮らすためにはどうすればいいだろう?」と考えた先に、移住という選択肢や、暮らしたい場所、ひとを見つけたんじゃないかなぁ。

移住先で必ずなにかを成し遂げる必要はない

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ルリ子:「移住女子」では、岩手県で自然栽培農法の農家を営む方や、宮城県で漁業の魅力を発信している方がいますよね。みなさん志が高くて、人や地域のためになることに率先して取り組んでいるので尊敬してしまいます。
私は新潟に移住してからライターとして新潟の魅力を発信しているけど、まだ具体的な何かや地域に貢献できていない気がするなぁ。

伊佐:そうなんですか? 移住しただけでもすごいと思うけどなぁ……。今のままじゃだめなんですか? 私は、必ずしも移住して何かをしなきゃいけないとか、目的ありきで移住しなきゃいけないとは思わないです

ルリ子:それはどうしてですか?

伊佐:「地域のために何か貢献しよう」とか「何かを達成しよう」ってすごく尊い意思だけれど、自分が目指していることが、必ずしも地域の方々が望んでいることなのかと聞かれると、わからないですよね。もしかしたら、移住してきてくれただけで、若い人の往来が増えてうれしいと思ってくれているかもしれないし、スマホが使えるってだけですごいかもしれない。

実際、移住前に意気込んでいたことと、移住後に手がけていることが全然変わった、という移住者の方々に多く会ってきました。「ひとりよがりだったな」という声も聞いたことがあります。

さっきと似たような話になるけれど、「移住女子」の彼女たちは、「好き」を追求した結果、いまの人生があるんだと思います

……まぁ、先駆者だから、たしかに本に出てくるひとはみんなパワフル。みんなが同じことをできたら、それはそれですごい世の中かも?(笑)。

ルリ子:自分の好きな暮らしができて、自然とそれが地域のためにもなっていたら素敵ですね。

伊佐:東京には新しいことをする隙間はあんまりないけど、地方だとまだやられていないことがたくさんあるから、ないものを作ろう、と思えたら楽しいと思います。ただみんな手放しで「ここ最高!」とは思っていなくて、地域の中でチャレンジできることや、ワクワクできることを見つけているんだと思いますよ。

ルリ子:伊佐さんは世界各国を旅されていましたが、これからどこで暮らしていきたいですか?

伊佐:場所は迷い中ですが、東京以外にも拠点を置きたいと思っています。その理由には、原稿を書くときは、できたら東京のリズムから逃れたいというのがあるんですよね。

ルリ子:東京のリズムというと?

伊佐:東京にいると電車は遅くまで動いているし、仕事が終わってやっと帰ろうかと思ったら、飲み会のお誘いがくる。楽しそうだからと行ってしまって、それをずっと続けていると、自分と向き合うことや作品を作る時間が滞ってしまうから、そういうリズムから切り離したいと思っているんですよね。私、放っておくと予定を埋めがちな女なんです……。

ルリ子:私も東京にいたころ、会社帰りに飲み会に行ったり、遅くまで空いているお店で時間を潰したりしたなぁ。東京では時間の使い方を自分でしっかりコントロールしないと、誘惑も多く流されやすいですよね。

伊佐:私が旅したオーストラリアのバイロンベイは、夕陽がきれいで、その時間になるとみんな夕陽を見に外に出てくるんです。私の場合は、そういった時間の過ごし方ができたらいいなと思うんですよね。

移住をせずに、今のままを選ぶことも選択肢のひとつ

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ルリ子:もし今移住に迷っている人がいるとすれば、どうしたらいいと思いますか?

伊佐:どうして迷っているのかを考えた方がいいんじゃないんですかね。お金の心配があって迷っているとか、何か理由があるとは思うんですけど。「今より自然が多いところに住んで野菜を作りたい」とか、「今の人間関係から逃げたい」とか、「なぜ今の暮らしを変えたいと自分が思っているのか?」をちゃんと考えるのが近道な気がします。

もし野菜を作りたいなら、地方じゃなくても畑を借りられる場所はあるし、自分で食べられる量だけでいいなら、身近で実現できるかもしれない。

ルリ子:やりたいことが今の暮らしのまま実現できるなら、移住する前にやってみた方がいいですよね。

伊佐:そうそう。あ、あとは移住する前に「スライド」を取り入れる、というのもいいかも。

ルリ子:スライド?

伊佐:二段階移住、と呼ばれることもありますが、それを実践するひとも増えてきています。例えば、いきなり東京から福岡に引っ越すのではなく、週末だけセカンドハウスを借りて何度か通ってみる。で、慣れてきたら、1週間休暇をとって週7で滞在してみる、とか。「0をいきなり10にするんじゃなくて、1を作って育てていこう」という考え方ですね。

ルリ子:でもそのためには、ある程度の貯蓄が必要ですよね。

伊佐:そうですね。よく移住される方は100万円ほど用意していると聞きます。でも、300円しかないのに移住してしまったという人もいるので、人によりますよね(笑)。

ルリ子:300円はすごいですね(笑)。

伊佐:先日、灯台もと暮らし編集部で青森の十和田市の無料の移住お試し住宅に泊まってきました。このように、移住体験に力を入れている自治体も多いので、充分な貯蓄がないという人は、まずそういった施設を利用してみるのも手だと思います。

ルリ子:それは助かりますね。一番最初に「移住したら必ず幸せになれるとは言い切れない」、とおっしゃっていましたが、移住以外にはどんな選択肢があると思いますか?

伊佐:「今のまま」ですね。

ルリ子:今のままですか。

伊佐:本の中にも少し書いているんですけど、今の暮らしを自分で選んでいなかったり、納得していなかったり、他の選択肢を持てていなかったりして、何かしら今の生活に引っかかることがあるなら、他の暮らし方を検討してみてもいいと思います。
それで本当に自分にあった暮らしを考えた結果、「今のままを選ぶ」と思えたら、それがその人にとって最適だと思うんです。何を求めているのかがはっきりしないと、移住って絶対成功しないと思うんですよね。

ルリ子:その通りですね。

伊佐:知らないことをやるって絶対怖いじゃないですか。でもただパソコンの前で座って、画面を眺めて考えていても、何もわからないですよね。
移住は旅の延長線上だと思うので、気になる場所があるならまずは行ってみてほしいなぁって思います。

おわりに

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今回のインタビューをさせていただいた時、私自身が本当に自分の望む暮らしをできているかどうか、迷いの中にいました。

移住は決して、今の生活を魅力的に変えてくれる魔法ではありません。けれど、時には立ち止まって今の暮らしが自分の納得のいくものになっているかどうか、見つめ直すことも大切だと感じます。

これから先どんなライフスタイルを送りたいか。そのイメージを自分の中にしっかりと持つことができたら、きっとその時が暮らしをより良いものにするタイミングなのではないでしょうか。

 

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