フリーランスの集合体を“理想の組織”にするための10の極意とは? 伊勢丹新宿店のフロア売上記録を樹立したコラボブランド「F line」に学ぶ

左から秋濱さん、いずみさん、藤咲さん
左から秋濱さん、いずみさん、藤咲さん

こんにちは! 恋する旅ライターかおりです。今回お話を伺ったのは、彫金作家の秋濱克大さん、油彩画家の大和田いずみさん、革作家の藤咲和也さんのコラボブランド「F line(エフライン)」のみなさん。ソロでのワークスタイルを掘り下げた前編に引き続き、後編ではコラボレーションを成功させるための秘訣をお聞きしました。

作品は一つ一つ手作業でつくり出されているそう。一目見ただけで「F lineのもの」だとわかるぐらい、オリジナリティが際立っています。

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デザイン・縫製を藤咲さん、金物・押し型の制作を秋濱さん、ペイントをいずみさんが担当するというおおまかな役割は決まっているものの、会社の就業規則のような絶対的なルールはないそう。それでも組織として、理想的なカタチを保ちつづけられるのはなぜなのか。

F lineのワークスタンスを参考に、フリーランスの集合体を“理想の組織”にするためのポイントを、10項目に分けてお伝えします。きっとソロプロのみなさんにとって、新たな可能性を見つけるヒントになるはず!

〜プロフィール〜

◎彫金作家 秋濱克大
東京藝術大学大学院彫金専攻修了。2009年、ジュエリーブランド「akihama」を立ち上げる。「羽」をメインモチーフにして日本の伝統的な彫金技法を用いて、現代的なジュエリーやオブジェを制作。羽には、天と人とが繋がるアイテムという思想が込められている。
http://akihama.com/
◎油彩画家 大和田いずみ
日本国内に加え、フランスを中心としたヨーロッパ、アジアにて作品を発表。2012〜2014年、NYに拠点を移し、個展を開催。現在は平塚にアトリエを移し、自身の制作に加え、F lineで新しい世界観を表現している。
izumi-ohwada.com
◎革作家 藤咲和也
1988年生まれ、 茨城県出身。2010年 東京経済大学経済学部卒業。2012年 製作活動をスタート。青い鞄をメインに製作。革や布を使った壁掛け作品やぬいぐるみなども製作している。
http://kazuya-fujisaku.com/
◎F line(エフライン)
ジャンルの異なる3人のアーティストが出逢って生まれたブランド。すべて手作業でつくり出された一点物の美しさが、最大のウリ。2015年8月に行われた新宿伊勢丹の展示販売会では、フロアのリニューアル以来、最高の売上を記録。
http://fline123.com/

Contents

F lineは時代にマッチした理想の組織のカタチ

かおり
私はフリーランスになって、もうすぐ1年半が経ちます。まだまだソロでの課題は多いものの、今後の方向性として「フリーランス同士のコラボレーション」をどんどん取り入れたいと考えています。そこで、ぜひみなさんにお話を聞かせていただきたかったんです。2015年にF lineを結成して、どんなメリットがありましたか?
秋濱さん
僕らは最初に開催した2015年の伊勢丹の展示販売会で、フロアの売上記録を樹立するという衝撃的なスタートを切りました。相性の良い個性の掛け算で生まれる可能性は、無限大だと感じています。
藤咲さん
F lineを通じてソロでの認知度が向上しただけでなく、F lineのファンの方が個々のブランドのファンになってくれることも多いです。
伊勢丹での展示会の様子
伊勢丹での展示会の様子
いずみさん
F lineの作品においてディスカッションするのはもちろんですが、個々の作品においても意見を言い合えるので、ソロの作品にもいい影響を与えてくれているいると感じますね。
秋濱さん
それにF lineの活動が収入の柱になれば、個人でもっと好きなことに没頭できます。藤咲くんにおいては、「彼にアーティスト一本で食べていってほしい」という気持ちがあって、コラボしたほうが売れるだろうなと思ったので、話を持ちかけたんですよ。
藤咲さん
それは初耳かも! F lineの結成は僕にとって、まさしく転機でした。
かおり
メリットだらけですね! 上司・部下などの従属関係がなく、それぞれが必要なタイミングで意思決定をする「ホラクラシー組織」が数年前から話題に出ていますが、まさしくそれと同じ「自立分散型」のチームだと思います。ソロの活動は一人で自由に動き回れる魅力がありますが、深い価値観でつながれるチームをつくって一緒に上昇できたら、もっとワクワクする未来をつくれると思うんです。

「最強のチーム」を築くために必要な10のこと

藤咲さんのアトリエにて。藤咲さんのオリジナルぬいぐるみがいたるところに
藤咲さんのアトリエにて。藤咲さんのオリジナルぬいぐるみがいたるところに
かおり
みなさんのように、お互いの個性を調和させながらステップアップできる、最強のチームを築くために必要なことを教えてください!!

1、センスの良さと相性を見極める

藤咲さん
僕らはお互いの作品のセンスだけじゃなく、生活におけるものの選び方など、ライフスタイルそのものも素敵だなと思っています。その人のセンスに共感できるかどうかは大切じゃないかなと。
秋濱さん
そうそう。個々の作品に惹かれて互いに声をかけあい、試作品をつくってみたら、めちゃくちゃ相性が良かった。一緒にやるなら、形にしたときの相性の良さを見極めることも必須ですよね。

2、仲良くなれる人としか組まない

藤咲さん
自立型の組織は人間性でつながっていると思うので、仲良くなれる人とだけ組むことをオススメします。
いずみさん
私たちは年齢も経歴もバラバラですが、上下関係は存在しません。すごくフラットな関係性を維持しています。自分が気持ち良くいられるかどうかが大事かなって。

3、尊敬し、与え合う

秋濱さん
近い存在でも、尊敬の気持ちを忘れないこと。「2人のために自分ができることをしたい」という姿勢をみんなが持っているから、調和がとれているんだろうなって。与え合う関係性ですね。
かおり
コラボするにあたって、報酬面はどのように話し合っているんですか?
秋濱さん
作品ごとに「個々の貢献度」を考慮して話し合っています。メンバーのがんばりを認めるのはもちろん、「今回はすごく貢献できた」と思ったら、自らアピールすることもありますよ。

4、依存しない

いずみさん
逆にメンバーに頼りきりになる依存の状態が生まれると、どんどん関係が崩れていくと思います。
かおり
依存は自立の真逆にあるものですしね。ただ、つらいときは一人で抱え込まず「信じて甘える」ことがあってもいいのかなという気がしています。
いずみさん
そうですね。お互いの状況によって柔軟に役割バランスを調整することも必要ですよね。

5、最強のチームだと自負を持つ

秋濱さん
僕らには「この3人で組めば絶対にいいものしか生まれない」という自負があります。その気持ちがあるから、実際に想像を超える良い作品が生まれているのだろうと感じています。
かおり
ソロ活動においても自負があることで、良い影響が生まれていると思います。チームにおいてもそれは同じなんですね。
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6、個性のバランスを重視する

藤咲さん
僕は作品をデザインするにあたり、基本的に「秋濱さんといずみさんの個性を生かすこと」を大事にしています。土台みたいな役割ですね。そうやって個性のバランスを調整することは必要でしょうね。でも、これからは2人を生かすテイストだけじゃなく、自分の色をもう少し出す作品があってもいいのかなと思っています。
秋濱さん
今後は藤咲色が強いもの、いずみ色が強いものなど、幅を広げていきたいですね。

7、都度、目的をすり合わせる

いずみさん
展示販売会用に作品をつくるときも、オーダーメイドの作品をつくるときも、その都度、達成したい目的をしっかりすり合わせるように意識しています。ランチタイムや移動中を使って、効率的にミーティングをしていますね。
秋濱さん
たとえば展示販売会なら、「モノを売ること」が一番の目的ではありません。僕らが一番大事にしたいのは「仲間をつくること」です。それを達成するための課題の確認や反省会を毎回、丁寧に行います。

8、意見は素直に伝える

藤咲さん
F lineでは僕が一番年下で、アーティスト歴も浅いんですが、思ったことは素直に伝えるようにしています。2人は巨匠クラスなのに、いい意味で頑固さがない。むしろ僕のほうがこだわりが強いかも(笑)。広い心で2人が受け入れてくれるので、伸び伸びとやらせてもらっています。
秋濱さん
基本的に、自分がやりたいことをやったほうがいいと思っています。よっぽどおかしなものじゃなければ、「やってみなよ」と受け入れますね。

9、得意を生かし不足部分は補い合う

秋濱さん
藤咲くんといずみさんは接客が上手で、展示販売会でも2人に接客を任せると、ちゃんと売上につなげてくれるんですよ。
藤咲さん
まず仲良くなってから買ってもらう。この順番はすごく大事です。僕らはお客さんとの相性も大切にしたいと思っています。
いずみさん
現場での役割は決めていませんが、それぞれが話しやすい人を接客するようにしたら、いい流れができるようになりました。
かおり
チームになることでアプローチできる層が広がれば、新たなファンの獲得にもつながりますね。
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10、スピーディーなコミュニケーションが取れる距離感

秋濱さん
モノづくりにおいては、試作品を見ながらすぐに相談しあえる環境も重要ですね。アイディアが冷めないうちにディスカッションすることでエネルギーの相乗効果が生まれ、「最高のモノをつくろう」と全員のモチベーションが上がるんです。
いずみさん
相手に投げたボールが大きくなって返ってきて、そのボールを大きくしてまた投げるみたいな。最後は受け止められないぐらいになることもあるほど(笑)。
藤咲さん
スピーディーなコミュニケーションによるエネルギーのパス回しは、最強のチームをつくるのに必要不可欠だと思います。

どんなときも楽しむことを忘れず、仲間の輪を広げたい

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かおり
みなさんは何よりも、日々を楽しんでいますよね。誰かを笑顔にしたいと思ったら、まず自分がワクワクするような人生を生きることが一番だと最近、実感しています。
いずみさん
そうですね。まずは自分たちが楽しむことが大事! 自分の精神状態がそのまま作品に表れてしまうので。
かおり
ライターも同じくです。これから、どのようにF lineを成長させていきたいと考えていますか?
秋濱さん
今年から年に2回だった展示販売会が4回に増える予定で、その後も販売できる場所が増えていくと思います。それに伴い作品数も増やしていきたいので、アシスタントを雇うなど輪を広げていけたらいいですね。
いずみさん
大々的に募集という感じではなく、きっと流れに乗って、いいタイミングで最高の仲間が現れるだろうなと思っています。
藤咲さん
あとは、周りの人たちを巻き込んでアイディアを募って、作品づくりに落とし込むのもおもしろいなって。メンバー以外にも平塚に住む仲間に相談して、デザインを決めることもあるんですよ。今後、そういった化学反応をもっと起こしていきたいですね。

 

「このメンバーと出会えて、本当に運が良かった」。最後にそんなことを話してくれたF lineのみなさん。確かに上述した10個のポイントをすべてクリアできる人を見つけるのは、簡単ではないでしょう。

ですが私自身、自分が一番大事にしたい価値観がクリアになった途端、コラボしたい相手と続々と巡り会うことができました。実際にイベントでコラボが決まっている方もいれば、今後、イベントの共催や書籍出版を企画している方もいます。私の場合、会いたい人に会いに行く、好意や尊敬の気持ちを口に出す、自ら企画を立てて行動する、この3つを大事にしています。

ソロ活動も楽しいですが、仲間と一緒に切磋琢磨しあって、よりたくさんの人を幸せにできたら、きっともっと楽しい!! フリーランサーとして自身の未来を模索しているみなさん、ぜひコラボレーションを選択肢の一つに加えてみてください。

 

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