「日本のママは我慢しすぎです!」そう語るのは、ニューヨークにて子どもの睡眠コンサルタントとして活躍している愛波文さん。彼女の元にはインターネットを通じて、子どもの睡眠で悩む世界中のママから相談の依頼が集まります。
今回は、アメリカと日本の育児に対する考え方の違いや、かつての愛波さんのように育児に悩むフリーランスのママに向けて、より子育てを楽しむためのヒントを伺いました。
愛波 文(あいば あや) 子どもの睡眠コンサルタント米国IMPI(International Maternity and Parenting Institute)公認資格を日本人で初めて取得。現在、ニューヨークで5才と2才の男の子のママとして子育てをしながら、子どもの睡眠に悩む保育者のコンサルティングを行う。IMPIと提携し日本語で妊婦と子どもの睡眠コンサルタント資格取得講座(オンライン)を開催し、講師も務めている。 公式HP:http://sleepingsmartconsulting.com 主婦の友社Millyにてコラム連載:https://millymilly.jp/column/51124 講談社BABYにてコラム連載:https://baby.frau.tokyo/_ct/17111264 |
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子どもの睡眠で悩み、育児ノイローゼ気味に
ーー愛波さんは現在、ニューヨークにて子どもの睡眠コンサルタントとして活躍されていますが、まずは今のお仕事を始めたきっかけを教えてください。
長男の夜泣きや子育てに悩んだことがきっかけです。毎日なかなか寝てくれず夜泣きもひどかったので、1時間おきに起こされる日々。常に睡眠不足で、育児ノイローゼ気味になってしまいました。可愛いはずの我が子をだんだん可愛いとは思えなくなってしまい、そういう風に思う自分も嫌で、よく一人で泣いていましたね。
そんな時、アメリカ人のママ達に会ったら、みんなものすごく元気なんですよ。子どもが寝た後、夜にランニングやヨガをしたり、ディナーに出かけているんです。私は寝不足で疲弊しているのに、なんでそんなに元気なのか理由を聞いたら、「スリープ・トレーニングをしてないの?」と驚かれ、子どもの睡眠に関する本を紹介されました。
ーースリープ・トレーニング? 私もはじめて聞きました。
実はアメリカって子どものスリープ・トレーニングが一般的で、本もたくさんあるんです。そこで、早速本屋さんに行って、片っ端から本を買って実践していきました。すると、なんと実践4日目で、夜の7時から朝の7時までの12時間、夜通しで寝てくれるようになったんです。お陰で自分の時間も持てるようになり、主人が仕事から帰ってきてから、夜ヨガに行ったりとリフレッシュできるように。育児も楽しくなりました。さらに長男にも変化が!癇癪(かんしゃく)をおこさなくなり機嫌がよくなったんです。それまで悩んでいたのが嘘のよう。大袈裟じゃなく、もう人生変わったと思いました!
それから子どもの睡眠に関する資格があることを知り、日本人として初めてIMPI(International Maternity and Parenting Institute)公認資格を取得しました。
子どもの睡眠コンサルタントとしてキャリアをスタート
最初は会社員をしながら、アメリカのママを相手にSkypeで個別のコンサルテーションを始めました。同時にブログやホームページも開設。子どもの睡眠に悩むママに向けた記事を綴っていったところ、ネットで検索して私を見つけてくれ、日本のママからも依頼が増えていきました。
それからは、実際に私のコンサルを受けた人がお友達にご紹介してくれたり、ママ友のグループ内で「最近、○○ちゃんすごく元気になったけど何かあったの?」「実は、愛波さんの睡眠コンサルを受けて……」というような感じで、クチコミで広がっていきました。
今年から個別コンサルだけでなく、オンラインでの睡眠講座や単発個別相談も開講。子育てで忙しいママが長時間時間を割くのは大変なので、スマートフォンでいつでもどこでも見られる動画講座を作り、講座閲覧後に質疑応答の時間も設けています。
ーー愛波さん自身が抱えていた課題が仕事になり、独立してソロのプロフェッショナル(ソロプロ)になったんですね!
日本では子どもの睡眠に関する知識が少ない
ーー講座ではどんなことを教えていらっしゃるんですか?
睡眠環境を整えることや、睡眠スケジュール、授乳やミルクの時間や回数、ふれあいの時間、寝かしつけの仕方、なんで夜泣きをしているのかなど細かくお伝えしています。その中でも特に大切なのは、睡眠スケジュールですね。
以下が赤ちゃんの月齢別活動時間と睡眠の表です。
実は赤ちゃんの活動時間や睡眠って、月単位で変化するんです。例えば、生後0~1ヶ月だと最長40分しか起きていられないんですが、毎月少しずつ増えていき、一般的には生後6ヶ月ぐらいからは昼寝が1日3回になり、生後9ヶ月ぐらいからは1日2回になります。
また、赤ちゃんは疲れ過ぎるとストレスホルモンのコルチゾールが上昇し、興奮して眠れなくなって泣くんですよ。だから疲れ過ぎる前に寝かしつけをする必要がある。例えば生後0~1ヶ月のお子さんだったら、40分ぐらいしか起きられないから、その前に寝かしつけをしなければならないんです。
アメリカではこういった子どもの睡眠に関する知識は知られていますが、日本ではあまり一般化していないですよね。なので多くのママが、赤ちゃんが泣いたりぐずったりしてから寝かしつけをする。でもそれだと遅いので、赤ちゃんはなかなか寝てくれず泣くばかりだし、ママもどうしていいかわからず疲弊してしまう。だけど、これらはすべて知識。事前に知っていれば赤ちゃんの睡眠だけでなく、ママの精神面もだいぶ楽になると思います。
他人からは完璧に見えるママだって、みんな悩んでいる
ーーその他に子育てにおいて、アメリカと日本の違いを感じることはありますか?
アメリカのママは、「あと1ヶ月で職場復帰するから、その前に子どもの睡眠対策をしておきたい」というように、問題になる前に事前に受講する方が多い。一方、日本人のママはそうではありません。我慢の限界に達して育児ノイローゼ気味になってから、受講する方が多いんです。
そういう場合は、赤ちゃんの睡眠を改善する前に、まずはママの精神状態をケアします。不思議なことに、ママが精神的に安定して穏やかな気持ちになるだけで、子どもの睡眠も改善されるケースもあるんです。赤ちゃんは言葉は分からなくても、ママの気持ちを敏感に察知しているんですよね。そうやってコンサルテーションを受け睡眠が改善されると、涙を流しながら感謝される方もいらっしゃいます。それだけ日本人のママは、我慢をし過ぎているんだと思います。
また、日本は「女としても、妻としても、母としても完璧でいなきゃ」と考えているママが多い気がします。コンサルテーションをしているとクライアント様が「公園に行くと他のママはみんな綺麗にしているし、楽しそうに育児をしている。私だけが苦労しているんですよね」と訴えるケースが多いんです。
でも、これだけ同じことを言う人がいるということは、もしかしたら、他人からは完璧に見えるママだって周りに言えないだけで、本当は悩んでいるのかもしれませんよね。
育児は一人でやる必要はない。周りに頼ったり、色んなリソースを利用してほしい
また、クライアント様の中には「主人にはコンサルテーションを受けていることを言わないでください。主人がいない時に相談にのってください」と言う方、ご主人にばれないようにと、ご実家からお金を借りて申し込む方もいます。
日本のママは、自分一人で完璧にやりたい、人に助けを頼むなんて恥ずかしいと思う人も少なくない。でも、育児って一人でやる必要はないし、そもそも一人じゃ絶対できないんですよ。ぜひ周りの人に甘えてください。
私のコンサルテーションを受けた方で、生後4ヶ月のお子さんの子育てで悩んでいる方がいました。毎回Skypeでコンサルをする度、「自分の時間がほとんどない」と泣いていたんです。そこで私は「週末ご主人に頼んで、30分でもいいので一人の時間を作ってください。近くのカフェに行くとか、コンビニでお茶を買ってくるとか、なんでもいいので一人で過ごしてみてください」と提案しました。
最初は抵抗があったようですが、その後Skypeでお話をしたら、以前とは違い明らかに表情が明るくなっていました。理由を聞くと、ご主人に頼んで久々に一人で買い物に行ったらすごく楽しくて、家に帰ってきたら子どもが可愛くて仕方なかったんですって。
また、今は子育てにまつわる色んなサービスがたくさんあるので、ぜひ利用してほしいです。例えば、日本にはアメリカにはない一時保育というものがある。ファミリーサポートなんて、1時間数百円で利用できる。これはすごいことです! でも、そういうサービスがあること自体、知らないママもいるし、知っていても「他人に預けてまで……」という方も多い。
私も最初は我が子を誰かに預けることに不安を感じたので、そういうママの気持ちもわかる。もし、どうしても不安だったら、サポートしてくださる方に家に来てもらって、ケーキでも買ってゆっくり一人で食べていただいたり、睡眠不足で疲れていたら寝ていただくだけでもいい。ほんの少しでいいから、自分のためだけに時間を作ってください。
人に子どもを預けることは、全く悪いことじゃない。むしろ子どもにとってもいい刺激になるし、ママ自身をケアするためにも必要なんです。
Happy Mom Happy Family!まずはママ自身が満たされること
ーー最後に子育てで悩んでいるママに向けて、メッセージをお願いします。
アメリカでは出産する際によく「Happy Mom. Happy Family.」と言われるんです。つまり、「ママの幸せが家族の幸せに繋がるのだから、ママを大切にしなさい」ということ。
私が出産する時もそうでした。夫はナースから「奥さんがハッピーになることをすべてやりなさい!」と言われて、出産前後は寝る間も惜しんで働いてましたね(笑)。そういうことを、他人が、それも医療関係者が言ってくれるのはありがたいですよね。
ママの幸せは、家族の幸せ。まずは小さいことでもいいので、自分自身が満たされることを少しずつ始めていただけたらと思います。
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主婦の友社Milly:https://millymilly.jp/column/51124
講談社BABY:https://baby.frau.tokyo/_ct/17111264
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