こんにちは! 恋する旅ライターのかおりです。今回は私の「会いたい!」という熱烈オファーで実現したインタビュー。水と緑が豊かな大地が広がり「アフリカの真珠」とも称されるウガンダで、新たな道を切り開くべく奮闘している仲本千津さん(32歳)です。
彼女は日本から遥か1万km以上も離れた異国の地で、ファッションブランド「RICCI EVERYDAY」を創業。仕事を得ることが困難な現地のシングルマザーを従業員として雇い、アフリカンプリントと呼ばれるカラフルな布を使ったバッグやトラベルグッズを製作・販売しています。
2015年1月、4人で始まったこの事業は現在10人に拡大、日本でもブランドのファンが急増中なんです!(現在、開催中のポップアップストアでも飛ぶようにバッグが売れているのだとか)
「アフリカの貧困問題を解決したい」、その強い想いを原動力にファッションの世界に一人飛び込んだ千津さん。ブランドの創業ストーリーと共に、千津さん流の夢を叶える秘訣を伺いました。
◎仲本千津 RICCI EVERYDAY.Inc 取締役副社長 1984年静岡県生まれ。一橋大学院卒業後、邦銀で法人営業を経験。その後国際農業NGOに参画し、ウガンダの首都カンパラに駐在。その時に出会ったシングルマザーたちとともに、カラフルでプレイフルなアフリカ布を使用したバッグやトラベルグッズを企画・製造・販売する「RICCI EVERYDAY」を日本に暮らす母と共に立ち上げる。2015年に日本法人、2016年に現地法人及び直営店舗をカンパラ市にオープン。2016年11月に第一回日本アフリカ起業支援イニシアチブ最優秀賞受賞。頭の中を巡るテーマは、「紛争を経験した地域が、過去を乗り越え、幸せを生み出し続ける場になるには、どうすればいいか」ということ。 RICCI EVERYDAY公式HP |
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試行錯誤の末に完成した4wayバッグは、完売御礼の人気ぶり!
かおり:会いたかったですー! テレビ東京「日経スペシャル 未来世紀ジパング 〜沸騰現場の経済学〜」で千津さんの活動を拝見して、千津さんの生き方とアフリカ布のバッグのかわいさに一目惚れして、今回インタビューを依頼したんです。
千津さん:ありがとうございます! テレビの反響は予想以上に大きく一気に商品が売れたため、現在もオンラインストアはSOLD OUTの状態が続いてしまっていて……。
かおり:先日伺った西武池袋本店のポップアップストアでも、次々と商品が売れていましたよね。(私も自分好みのバッグを購入♡)このバッグは千津さんが一からデザインしたそうですが、どのような過程を経て現在の形になったんですか?
千津さん:シーンに合わせていろいろな形で使えたら便利だなと思って、クラッチ・手提げ・ショルダー・トートの4wayタイプで使えるこのデザインを思いつきました。それから試作を始め、デザイナーの友人にアドバイスをもらいながらサイズや製法を変えて何十回と作り直して、ようやく現在の形になったんです。完成までに半年ぐらいかかりましたね。
かおり:このバッグはすべてウガンダのシングルマザーたちが、ハンドメイドで製作しているんですよね。この事業が彼女たちの生活向上にダイレクトに貢献していることにも、深く感動しました。
千津さん:ウガンダではまともな教育を受けられない女性が多く、彼女たちはどうがんばっても仕事が得づらい状態に陥ってしまうんです。子供を抱えたシングルマザーはなおさら。RICCI EVERYDAYは、そういったセーフティーネットから漏れがちな都市部のシングルマザーを積極的に雇用して、彼女たちの生活を守ることに注力しています。
死ぬときに後悔したくない!銀行からNGOへ大胆転職
かおり:千津さんは、大手銀行→海外支援を行うNGO→RICCI EVERYDAYとキャリアチェンジを重ねてきたそうですね。銀行員からの大胆なキャリアチェンジの背景が気になります。
千津さん:遡りますが高校生のときに、国連難民高等弁務官をされていた国際政治学者・緒方貞子さんの生き方に憧れを抱き、大学・大学院では紛争後の平和構築という分野の研究をしていました。将来的に国連、民間企業、NGOといった選択肢を考えるなかで、縁あって世界の食料問題にアプローチしているNPO法人「TABLE FOR TWO」のインターンをすることになって。その団体の代表である小暮真久さんは、マッキンゼーのコンサルタントを経て、NPOを立ち上げたんです。
彼の生き方を見て、私もビジネススキルを得てから社会課題に取り組もうと思い、企業の財務を学べる銀行への就職を決めました。銀行では中小企業の担当を通して、経営者の考え方や財務戦略について学べたことがすごく良かったです。
かおり:千津さんは壮大なビジョンを持ちながら、歩みはすごく堅実なんですね。
千津さん:そう、心配性なんですよ。でも2011年の東日本大震災をキッカケに、「やりたいことを先延ばしにするのはもうやめよう」と考えが変わりました。死ぬときに後悔したくないなって。そこから転職活動を始め、海外支援を行うNGOに入社したんです。
かおり:あれこれ考えすぎて立ち止まるより、願いを叶えるためのアクションを起こしてみると結果が早く出ると思います。私も未熟な状態で独立しましたが、やりながら道を見つけられたので。「もう突き進むしかない」っていう状況に追い込まれると、人間底力が出るものだなって。
千津さん:NGOでは東京オフィスで2年半勤務、その後、2014年6月にウガンダオフィスに駐在して、2年間、農業支援のプロジェクトを担当しました。東京勤務時代は同時進行で、エチオピア発のラグジュアリーブランド「andu amet(アンドゥアメット)」のプロボノ(※)もやっていたんです。そこで、ファッションブランドのマネジメント手法やアフリカで事業展開するときのリスクや注意点を学べたことで、自分のビジネスをスムーズにスタートさせることができました。
※プロボノ・・・社会人が自らの専門知識や技能を生かして参加する社会貢献活動
歩み続けるなかで見出した「ファッション×女性支援」の道
かおり:いよいよ、ここからがRICCI EVERYDAYの創業ストーリーですね。
千津さん:NGOのウガンダオフィスで働いているとき、幼い4人の子供を持つ1人のシングルマザーと出会いました。私も4人兄弟なのでなんとなく親近感を感じて。彼女は子供たちを大学に行かせたいと言っているけれど、一方でまともな就職には就けていない。もともと道端でB級グルメのような食べ物を売り、そのお金で畑を借りて自給自足する、お金を作る方法といったら育てた豚を売るくらい、という生活で、これじゃあ4人の子供を大学に進学させる夢を叶えるのは難しいだろうと感じていました。
かおり:彼女との出会いがキッカケとなって、「シングルマザーの雇用創出の可能性」を探り始めたと。
千津さん:はい。アフリカでは縫製産業が盛んで、独特な柄と色合いのアフリカンプリントがたくさん出回っています。この布をドレスに仕立てるテーラリングが現地で流行っていて、この斬新だけど、どこかしらレトロな印象を抱くデザインは日本人女性も絶対に好むだろうなって。そこからバッグのデザインを始め、ある程度、方向性が固まったところで、シングルマザーの彼女に「一緒にビジネスをしよう」と声をかけました。
かおり:彼女はどんな反応だったんですか?
千津さん:「うん、わかった。私やるわ!」と真剣な表情で返答してくれました。まずは、彼女に縫製の技術をトレーニングで身につけてもらって。その後、知人経由で知り合った職業訓練学校勤務でテーラリングの講師だった2人目のシングルマザーと、革を縫い付ける技術を持っていた3人目のシングルマザーの4人で、2015年1月に最初の一歩を踏み出しました。
かおり:そのとき、千津さんはブランド1本に道を絞ったんですか?
千津さん:いえ、しばらくNGOと掛け持ちしていて、当時、ブランドの事業はボランティアで関わっていました。ブランドが軌道に乗りそうだと思ったタイミングでNGOをパートタイムに切り替え、だんだん比重をブランドに寄せていきました。
かおり:基本的に堅実な姿勢は崩さないんですね。
千津さん:成功の確率を高めるために、50%ぐらいの自信を身につけてから次の一歩を踏み出すようにしています。50%の情報や経験があれば、あとは歩き続けるうちに道が見えてくるので。
かおり:私は30%ぐらいの自信でフリーランスになって、正直つらいと感じることもありましたが、早く動き出した分、成長も早かったと思っています。失敗しても死なないなら、できるだけ早く動いたほうがいいかなって。あのとき勇気を出してソロの道に飛び込んで本当によかった。
事業の継続は、信頼できるビジネスパートナーあってこそ
かおり:もう一つRICCI EVERYDAYにとって欠かせないのが、千津さんのお母様である律枝さんの存在ですよね。
千津さん:はい、2015年8月に日本法人を設立するにあたり、日本で営業や販売を担当する人が必要になり、静岡に住む母に「手伝ってくれない?」と声をかけたんです。そうしたら「いいわよ」と二つ返事でOKしてくれて、拍子抜け(笑)。母に日本法人の代表になってもらいました。
かおり:律枝さんの日本での活躍もメディアで大きく取り上げられていましたが、律枝さんはビジネス経験がまったくないそうで。千津さんがビジネスのアドバイスをされたんですか?
千津さん:いえ、営業開拓は母の自己流です。アポも取らず、地元静岡の伊勢丹のインフォメーションセンターに商品を売り込みに行って(苦笑)、運良くそこからバイヤーにつないでもらい販売にこぎつけることができました。母はビジネス経験こそないものの、PTA役員を長年務めるなど、コミュニケーション能力の高さやバイタリティーは信頼していたんです。
かおり:それはすごい! なんとも心強いパートナーですね。
千津さん:継続して利益をあげていくには、従業員の人選が要だと思っています。「一緒に働きたい」という申し出はありがたいものの、採用はシビアに判断していますね。私、人を見る目には自信があって、「この人はいける」と思った人材を一本釣りするんですよ(笑)。私が誘った女性たちは、もれなく活躍してくれています。
かおり:とはいえ、文化の異なるウガンダ人と働くことは苦労もあったのでは?
千津さん:品質面だと「まっすぐ縫えていない」とか「サイズが全然違う」ということは、時々あります。あと、ウガンダ人は「I’m sorry」の概念が薄いんです。たとえばラッシュアワーに巻き込まれて遅刻しても、決して自分が悪いとは思わない。「ラッシュアワーのせいだ」の一点張り。私だったら「ラッシュは予測できることであって、それを見越して早めに動けるだろう」と考えるんですが……。
かおり:そんなときは、彼女たちにどのように接するんですか?
千津さん:責めずに彼女たちの言い分を受け入れたうえで「また同じことが起こらないようにするには、どうしたらいいと思う?」と建設的な話し合いをします。
かおり:まずはビジネスパートナーを認め、信頼関係を育むことが大切だと私も思います。
これまでにない革新的なものづくりを提供したい、夢への道のりは続く
かおり:ブランドは順調に認知を拡大していると思いますが、現在の一番の課題はなんですか?
千津さん:生産体制が弱いことです。今、工房スタッフは6名いるんですが、月に300個ほどしかバッグを製作できていません。新たに工房をつくって生産体制を強化しなければ、会社として成長できないなと。
かおり:では、千津さんの個人的な悩みをお聞きしてもいいですか?
千津さん:自分が目指すべき未来が明確になっていないことですね。私はお金儲けをしたいわけじゃないし、どんな形のビジネス、企業体、ものづくりを目指していけばいいのかは、常に抱えている悩みです。
かおり:私自身のことで言えば、ベースの収入が保てるようになったら、次に目指すのは「自分の心が一番に欲するもの」。今は「自分が創りたい未来像」を基準に歩む道を決めています。私は誰もが個性を生かして自由なライフスタイルを選びとれる世界を創りたいと願っていて、同時に自らがそれを体現する人でありたい。だから、今はスケジュールが空いていても、自分が伝えたいメッセージからズレるお仕事は勇気を出して断っているんです。そうすると、自分が求めている仕事が自然と回ってくるんですよね。日々心が震えるほどの充実感があります。
千津さん:すごく素敵だと思います。私が漠然と思っているのは、「革新的なものづくりの形」を提案したいということですね。これまでビジネスや、もっと言えば資本主義から疎外されてきた人々を、適切に巻き込みながらものづくりをするブランドとして、何を特徴として伸ばしていけば、RICCI EVERYDAYがもっと世の中に価値を提供できるのか。その点はこれからも模索し続けたいです。
恋する旅ライター×千津さんのコラボイベントやっちゃうよ!
かおり:私のように、「RICCI EVERYDAYをもっと知りたい」、「何かしらの形で応援したい」と願っている人はきっと大勢いると思います。それにアフリカでの暮らし、ファッション文化、海外でのビジネスに関心を持っている人も。そういった人たちと、交流できる場をぜひ一緒につくりたいです!
千津さん:ありがとうございます! これからのビジネス展開のチャンスを得るためにも、積極的にイベント等に参加したいと思っているんです。
ということで、千津さんをゲストにお呼びして、恋する旅ライターかおりプレゼンツのイベントをやっちゃいますよー! 私が千津さんと会場にお越しのみなさんをつなげるコミュニケーターになります。(実はイベントプロデュースも司会進行も初めてですが、やる気で乗り切ります!)
ヴィーガンカフェのケータリングも用意しますので、ワイワイと時に熱く、盛り上がりましょう!!
〜恋する旅ライターかおりPresents 仲本千津さんとアフリカンファッションを語ろう♪ヴィーガンプレートもあるよ〜(仮)
日時:6月8日(木)場所:co-ba shibuya
アクセス:JR渋谷駅新南口改札より徒歩3分/地下鉄渋谷駅16番出口より徒歩7分
http://tsukuruba.com/co-ba/shibuya/access/
イベント参加方法:5月中旬にFacebookにてイベントページを立ち上げる予定です。詳細が確定次第、以下「恋する旅ライターかおり」のFacebookにて告知いたします。
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昨日の恋するウガンダ、楽しくてワクワク、質問詰めにしてしまいました。日本は改めて女性が元気、スゴいSPEEDで進化?してますね。沢山のパワーをいただき、50才の私にも何かできればー、と興奮しました。
コメントありがとうございます!
「恋するウガンダ」のイベントを主催した恋する旅ライターかおりです。
イベント楽しんでいただけたようで、本当に嬉しいです!
仲本千津さんのように、志高く突き進んでいる女性ばかりで私も多くの刺激をいただきました。
またイベントを企画したいと考えておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
SoloProでも、自分らしい生き方をされている女性をまた取り上げていきますので、応援のほどよろしくお願いいたします!!