なぜ今、働き方に注目が集まっているのか?
その問いに対する「解」ではなく、「ヒント」が満載のイベントに参加してきました。
最近よく聞くワードでもあるマインドフルネスや、作務を切り口に、働き方を少し違った角度で考えてみる場だったので、たくさんの気づきがありましたよ。
Contents
『Mindful Work』トークセッション
会場となったのはLIFUL HUB
なんとオシャレ!
以下はHPから引用ですが、単なる仕事場ではなくコミュニティ要素が強い場所ですね。
LIFULL HUBはただ仕事をするだけの場所ではありません。
場を通じて強いビジョンとスキルを持った人々との出会いが生まれ、
共創へと繋がる多くのコンテンツを随時提供していきます
コワーキングスペースや、今回の会場となったプレゼンテーションエリア。さらには1階がカフェになっていたり、皇居も近いのでランをする方にも便利なスペースでした。
さて、イベントは、最初に登壇者3名のプレゼンテーション。
【登壇者】
◎横石 崇(よこいしたかし)
Tokyo Work Design Week 発起人/オーガナイザー
&Co.Ltd 代表取締役
2002年多摩美術大学卒。のべ1万人が参加する働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」代表。 広告代理店、人材紹介会社の役員を経て、2016年に&Co.Ltd設立。 ブランド開発や事業コンサルティング、クリエイティブプロデュースをはじめ、人材教育ワークショップやイベントなど、企業の内と外において”場の編集”を手法にしたエクスペリエンス・マーケティングを軸にしたプロジェクトを多数手掛ける。 『WIRED』日本版公認コントリビューター、「六本木未来大学」アフタークラス講師、やさしさの学校「NEW_SCHOOL」主宰を務めるなど、年間100以上の講演やセミナーを実施。著書に「これからの僕らの働き方 -次世代のスタンダードを創る10人に聞く-」(早川書房)。 |
◎黒田 悠介(くろだゆうすけ)
文系フリーランス/フリーランス研究家
「フリーランスを実験し、世に活かす」という活動ビジョンを掲げて自分自身を実験台にしている文系フリーランス/フリーランス研究家。新しい『事業』『発想』『働き方』を生み出すことが生業(働き方の多様性を高めたい)。帽子とメガネがトレードマーク。 東京大学文学部心理学→ベンチャー社員×2→起業→キャリアカウンセラー→フリーランス(ポートフォリオワーカー)→兼業COOというキャリア。スタートアップから大企業までディスカッションパートナーとして年間30社の 新規事業の立ち上げを支援。フリーランスに関する情報を発信する「文系フリーランスって食べていけるの?」というメディアを運営し、登壇実績多数。その他の肩書は、アイディエーション講師/キャリアシナリオコンサルタント。フリーランス800人の互助組織「FreelanceNow」発起人。転職に代わるキャリアマッチングサービス「Transit」を運営するブレンディッド株式会社 取締役COO。 |
◎水野 由貴(みずのゆき)
株式会社インナーコーリング代表取締役 社長/CEO
1988年東京都生まれ、名古屋市出身 大学卒業後、エン・ジャパン株式会社に入社。 法人企業の採用活動支援を担当し、 その後エージェントサービスにて個人のキャリア支援を担当。早期よりマネジメントを任せられ、社長賞新人賞、マネジメント賞を受賞。 現在はエン・ジャパン株式会社の子会社である株式会社インナーコーリング社の立ち上げに関わり、お坊さんが教えるビジネスパーソン向けのマインドフルネスサービスを提供。 インナーコーリング社提供プログラム 「cocokuri いま、こころのクリエイト」 www.cocokuri.com |
次にモデレーターの松島 倫明さんを交えたセッションという流れになりました。
【モデレーター】
◎松島 倫明(まつしまみちあき)
編集者/NHK出版 放送・学芸図書編集部 編集長
「Zen2.0」実行委員会メンバー
主に海外翻訳書の版権取得・編集・プロモーションなどを幅広く行う。書籍の解説では『なぜ働くのか』(TEDブックス)がある。 手がけたタイトルに、デジタル社会のパラダイムシフトを捉えたベストセラー『FREE』『SHARE』『MAKERS』『シンギュラリティは近い[エッセンス版]』のほか、2015年ビジネス書大賞受賞の『ZERO to ONE』や『限界費用ゼロ社会』、Amazon.comベストブックにも選ばれた『〈インターネット〉の次に来るもの』がある。 一方、世界的ベストセラー『BORN TO RUN 走るために生まれた』の邦訳版を手がけてミニマリスト系ランナーとなり、いまは地元の山をサンダルで走っている。また、『脳を鍛えるには運動しかない!』『EAT&RUN』『GO WILD 野生の体を取り戻せ!』『マインドフル・ワーク』『JOY ON DEMAND』など身体性に根ざした一連のタイトルで、新しいライフスタイルの可能性を提示している。 |
今回の記事では、主に後編のセッションを中心に禅の考え方や坐禅・マインドフルネスなどを活かした『Mindful Work』、そしてメインテーマの1つでもある作務についてもご紹介したいと思います。
働く時間を短くすると、ライフスタイルはどう変わる?
松島さん:あるデータで、アメリカでは働いてることに情熱を見出している人の割合は約13%という数字があったのですが、それは日本も同じなのでしょうか? 横石さんは、先ほどのプレゼンテーションで勤労は人の喜びとも言っていましたがどう思いますか?
横石さん:自分は働き方の専門家ではなく、働き方おじさんなので(笑)、日本はどうなのかわかりませんが、今世間で叫ばれている「働き方改革」は、もっと情熱的に働こうという呼びかけではないですよね。
1日24時間のうち、仕事する時間、休む時間、その他の時間があるとすれば、働く時間を短くして、他の時間を充実させようという試みかなと。
それでいうと、黒田さんの働き方はすごい注目しています。
黒田さん:僕は1日4時間しか働かないワークスタイルを実験しています。詳しくは本日のプレゼンテーションの資料にまとめていますが、昔から呼吸や脳科学などに興味があって、働き方にもそれを取り入れています。
松島さん:黒田さんは禅の修行のように、1週間鎌倉に家を借りて篭って本を読むみたいなこともされていましたよね。
黒田さん:ビル・ゲイツが「考える週」を1週間作っているのを参考にしました。
毎年ビル・ゲイツは1週間の「考える週」を実行しています。この間、社員や友人、さらには家族であっても、彼と連絡を取ることは禁止されています。Microsoft社で生まれた最も重要なイノベーションは、この期間中に生まれたアイデアをベースにしています。
年に2回ほどオフィスを出て、通常のルーチンを脱出し、「考える週」に突入します。全てから遮断された状態を作り、高いところから全てを見下ろしてみます。これによって、気持ちをリセットし、自分の目標や夢について効果的に考え直すことができるのです
関係している会社にも1週間連絡が取れなくなると伝えたりして。そういうことをやっていると、ひるがえって1日に4時間働ければ大丈夫なライフスタイルができてくるんですよね。
マインドフルネスは日本の働くシーンに浸透する?
松島さん:冒頭でアメリカと日本の比較をしましたが、アメリカの職場ではなぜマインドフルネス(※1)が浸透しているのかわかりますか? Googleなどシリコンバレーのテック企業がやっているので「カッコイイ!」みたいなイメージもありますが、本当は仕事で死ぬほど疲弊している人が多いことが要因かなぁと。
水野さんは先ほどのプレゼンテーションの時に、能力はあるのに心がやられている人が多いともおっしゃっていましたが、実際に日本でもマインドフルネスは流行ると思いますか?
(※1)マインドフルネスとは、今現在において起こっている内面的な経験および外的な経験に注意を向ける心理的な過程である。瞑想およびその他の訓練を通じて開発することができる。 wikipediaより
水野さん:アメリカ人は忙しくて主体的にマインドフルネスをやっているイメージで、日本にはまだそんな意識はないなぁと。
松島さん:アメリカ人は自己防衛で自らやっているみたいな。
水野さん:日本企業の社員の方は、人事から言われたらやるけど、それも一部の大企業や流行りもの好きなベンチャー企業の社長さんの会社が興味を持っている印象。心を整える研修などより、スキルアップなど効果がわかりやすい研修の方が要望が多いんですよね。
でも、実際にマインドフルネスの研修を行ってみると端的に効果が出る人もいて、最初はそんなスピリチュアルなもの持ってこないでよと言っていた大手企業の女性役員の方は……
研修後は朝の忙しい時間でも毎日10分だけ瞑想を取り入れたら、いつもより10分早く身支度が終わるようになって、「これって、マインドフルネスで集中力が上がった効果ですか?」と嬉しそうに聞いくるようになって!
松島さん:なるほど(笑)それで言うと、横石さんは毎年、TWDW(※2)を開催しているけど、どんな人が来るのかな? 大企業の方、フリーランスの方も?
(※2)勤労感謝の日前後の7日間に開催される”働き方の祭典”「TOKYO WORK DESIGN WEEK」
横石さん:企業で新規事業開発やマーケティング系など、常に最先端の情報にアンテナを張っているような人が多い印象ですね。
松島さん:TWDWにはマインドフルネスを扱ったプログラムもありますか?
横石さん:マインドフルネスってテーマでやったことはないですね。日本では、まだ宗教的なイメージもあるじゃないですか。でも、直接的ではなく、裏テーマとしてはやったことはありますし、今後はもっと日本でも叫ばれていいのかなぁと。
松島さん:あと、もう1つ聞きたいのが、昔の働き方ははしごを登るような感じで、今後の働き方はジャングルジムのような横にも縦にも上にも降りることもできるようなキャリアになるとも言っていたよね。
でも、はしごを登るキャリアの方が、登りきった楽しさがあったりして、逆にジャングルジムは右にも左にも行けて苦しく右往左往してしまうイメージもありますが、実際はどうなのかな?
横石さん:これについては、ジャングルジム型のキャリアを実践している黒田さんに聞きたいですね(笑)
黒田さん:僕の場合、大学を出たあたりからレールの上を走る競争は辞めました。はしごを登るキャリアはレッドーシャンなので、そこは避けて働き方も群れとは反対のことをやる必要があるのかなと思って。なので、会社の役員をしながらフリーランスをしたりといろいろなことをジャングルジム的にやって今のスタイルになりました。
松島さん:そういう意味では、働き方の価値感も変わってきているよね。
働くことは作務になっていくのか?
松島さん:働く時間を短くして、自分らしい生き方を作っていく必要性とか、禅やマインドフルネスなどのキーワードを話してきたけど、今回の会のテーマの1つである「作務」をどう捉えるかについてはどうかな?
水野さん:日本には昔から、茶道や合気道など”道”というものがあり、1つひとつに気づきを得ながら成長していくことに美徳を感じていますが、マインドフルネスや作務などにも通じるものがあるのでないのかなとも思いますね。
横石さん:ところで…… そもそも作務を知っている人ってどれくらいいるんですかね? 辞書には、禅宗で農作業・清掃などの作業などと書かれていたりするけど、働き方として語る場合ちょっと違うなと。
松島さん:そうですね。作務は働き方の解釈の深みみたいなもので、作務を修行としてだけで捉えると、はしごを登るイメージで辛いかもしれません。この仕事から何を得られるかってことが大事で。
黒田さん:仕事って繰り返すだけではなく、積み重ねていくものだと思うんです。その中で自分の働き方を改善をしていくと違いが出てくるのかなとも。
水野さん:私が研修で伝えていることでもあるんですが、勤務中の約8時間の中でどう自分を成長させていくかというのを考えながら仕事に向き合うと結果が出やすかったりして、それは作務に近いんじゃないかなと思っています。
松島さん:TWDWに参加する方も、そういった仕事を通じての成長を求めて来ているのかな?
横石さん:それはあるかもしれませんね。あと、仕事をする時間が短くなり、働くより務める時間が増えるのかなと思っていて、具体的に言うと地域コミュニティへの貢献などかなぁ。例えば鎌倉にはたくさんのコミュニティがありますが、そこで信頼を構築していけば生きていけますよね(笑)
松島さん:世間的にもベーシックインカム(※3)などが整備されるなどの話題も出ているしね。
(※3) 政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を無条件で定期的に支給するという構想
黒田さん:人間の労働時間は昔と比べて間違いなく減っています。だからこそ、レジャーが生まれたりして、今後は仕事をしなくてもいい時代になっていくと思います。
横石さん:それでいうと、昔は今と比べ修行・修羅場が多かったと思うんです。
松島さん:そうだね(笑)
横石さん:でも、今はどんどん快適になって、さらにこれからは仕事の生産性が上がって暇が増えれば、修行を買ってでもする時代になるじゃないかな。労働から作務への転換というか。
いずれにせよ、これからは自らの心をマネジメントしていく時代になっていくと思います。
最後に……
禅やマインドフルネス、作務まで、すでに今のワークシーンに取り入れている方は少ないかもしれませんが、今後は豊かな生き方をする上で欠かせないキーワードになっていくかもしれませんね!
ところで、今回の企画は立ち上げたのは、鎌倉をベースにしたローカルコミュニティ「カマコン(※4)」のメンバーが中心となって組織している「ZEN 2.0実行委員会」
(※4)「この街を愛する人を、全力支援!」というテーマのもとテック系起業家から経営者、インフルエンサー、住職、政治家までさまざまなローカルコミュニティがその基盤となっている組織。
9月2日、3日には、2日間にわたって大規模な講演セッションも行われるようです。
マインドフルネスやMindful Workに興味が湧いた方は、参加してみてはいかがでしょうか?
Zen2.0 – Kamakura, Japan (Sept. 2-3, 2017)
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