「挑戦への一歩を踏み出す人の背中を押したい」 萩と鎌倉の”2拠点生活者”新井 達夫さんに聞く、地域の盛り上げ方

「新井さん昔の建物が好きだから、一度行ってみれば?」と言われて訪れた山口県、萩。

今では、毎月1回は萩に通うデュアラー (2拠点生活者)として、現地にはぎ地域資産株式会社を立ち上げ、飲食店「いり吉」や「u-pitch」というピッチイベントの運営などを通じて街を盛り上げる活動に携わっている新井 達夫さん。

なぜ、萩で活動するようになったのか、2拠点を行き来しながらどんな働き方をしているのか、そしてこの地の魅力とは? 今回は 新井さんの活動から紐解いてみた。

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萩には歴史も自然もあった、応援してくれる人もできた

もゆる
現在、ぼくは萩に1週間滞在しながら現地でいろいろな方をインタビューしています。今回は、はぎ地域資産株式会社 代表の新井さんです。

新井 達夫(以下、新井さん)よろしくお願いします。実は普段は鎌倉にいるんですよ。定期的に萩に来るのは毎月1回、3日間ほどです。

もゆる:萩でお会いできるのはタイミングがよかったんですね! でも、新井さんはこちらに素敵なオフィス「ukishima」を構えていますよね。なぜ、萩に関わることになったのかを教えてください。

川沿いの古民家をリノベーションしたシェアオフィス「ukishima」

新井さん:ちょっと幼少期から振り返っていいですか。私が小学生時代を過ごしたのは福岡の北九州、門司港周辺で、このエリアは大正レトロな雰囲気が今なお残っているところです。子供心ながら、古い駅舎や昔のダンスホールなど歴史ある建物って素敵だなぁと思っていました。

もゆる:古き良き時代の建物が好きだったと。それでいうと萩もレトロな街並みが残っていますよね。

新井さん:そうですそうです。現在、私は鎌倉で洋館を改築したウェディングやレストランなどの事業を手がけているのですが、萩もそういった歴史のある建物が残る場所だから行ってみなよと言われて。今から5年くらい前ですね。

もゆる:実際に来てみてどうでしたか?

新井さん:とんでもないものがあると思いましたね(笑)視察で訪れた浜崎町は町家が数多く残り、菊が浜など海も近く自然豊か。そして、ここにいる若者たちにもエネルギーを感じました。

もゆる:私も今回初めて萩に来たのですが、本当に自然も人も素晴らしいところですね。でも、実際に何かここでやろうと思ったのはきっかけはあったのでしょうか?

新井さん:そうですね。もう誰も使っていない古民家などを見て、僕だったらこうやって活用するんだけどなぁと思ったんですよね。

そこで、最初は地域を盛り上げる施策を街に提案して、あわよくばコンサルのような形で少し関われるかなと考えていたのですが……正直、うまくは進みませんでした。むしろ、誰がここに来て誰がお金を出してやるんだと言われ、それだったら私が自分でやるよ、と。

もゆる:行政の支援ではなく、自分で?

新井さん:はい。もともと私は不動産業界出身なので、実際に物件をこちらで購入し事業で活用しようと考えたのです。

でも、これも最初はうまく進みませんでした。やるだけのことはやってダメだったら撤退しようとまで考え、この地をどう盛り上げたいのかというビジョンを掲げチラシを撒いたり、説明会を開いたりしたんです。

もゆる:それで道が拓けた、と!?

新井さん:いえ、これでもやはり難しいなと感じたのが正直なところです。

でも、ターニングポイントがありました。井上商店という会社の会長さんに想いを伝えたところ、「新井さん、なんでも応援するから言ってくださいよ」と言っていただき、初めて会った私に無条件で応援してくれる人なんているんだと思って熱い気持ちがグッと込み上げてきたんです。

もゆる:私も地方で仕事をすることは多いのですが、よそ者が地域に入ってくると最初はなかなか心を開いてくれない方もいます。それでも、想いを伝えることで、実際に動いてくれたり応援してくれる人が見つかるととても嬉しく感じますよね。

新井さん今まではこの地で何かできないかなという気持ちだったのが、この地のために何かをやりたいという気持ちになりました。具体的には、こちらで実業をやろうと思いました。

もゆる:行政からの支援などではなく、自分で事業を立ち上げようと。

新井さん:はい。まず手始めに「いり吉」というしゃぶしゃぶ店をオープンし、本店所在地として、こちらのシェアオフィス「ukishima」も立ち上げました。そこからだいぶ流れが変わってきましたね。

「ukishima」で取材中。光が差し込む、とても雰囲気のいいオフィスでした。

何かやりたいことがあっても実際には動かない。それなら…?

もゆる:具体的にはどんな変化が?

新井さん最初は鎌倉から来て何か企んでいるだけの人から、拠点を構えたことであいつら本気なんだと思われはじめたかもしれません。また、ここで定期的にイベントを開催し、街の人との交流の接点も作っていったんですが、参加者には今までこういう場が萩にはなかったと言っていただきました。

そのタイミングで始めたのが「u-pitch」です。地域の若者を中心に、自分のやりたいことを人前でプレゼンするイベントで、今では毎月1回開催しています。

もゆる:みんなの前で想いを伝えるピッチイベントですか。素敵ですね!

新井さん:萩の方は何かやりたいことがあっても実際には動かないことが多いと感じていました。だから、「とりあえず、やってみなよ! いいじゃん最初からうまくいかなくたって」みたいに背中を押して、最初のきっかけを提供したいなと。そしたら、一気にゲートが外れてやりだすかなと思ったのです。

もゆる:実際にやってみていかがでしたか?

新井さん:東京や鎌倉で行うピッチイベントではITやインターネットを活用したビジネスで起業したいといった内容が多いのですが、萩ではパン屋さんをやりたいとか、週2営業のカフェを運営したいといった店舗ビジネスが多いですね。最初は銀行の方などを審査員に入れて、出資するか否かの審査までしていたのですが、やっていくうちにまずはこういう発表の場があることが地方には大事なんだと感じるようになりました。

もゆる:発表の場……ですか?

新井さん:はい。小さい町なので、みんなの前で発表することでいい意味で自分を追い込む効果があるし、聞いている人たちも刺激を受ける。

例えば、萩の若手の中では有名なゲストハウス「ruco」のオーナーである塩満くんがプレゼンしてくれたのも、彼の同級生の「u-pitch」での発表を見たことで「友達が頑張っているなら俺も!」となって、手を挙げてくれました。こういういった連鎖がいいですよね。地方は特に。

もゆる:あっ、なんだかすごくわかります。子供の頃から知っている人が頑張っている姿を見ると気合いが入りますし、その頑張りが可視化できる場が地域にあるっていいですよね。

新井さん:そう。だからピッチの内容を審査するのはやめたんです。あと、このシェアオフィスはここで発表し手を挙げた人が誰でも会社を登記できるようにし、事業を立ちあげたらここで郵便物を受け取れるようにと、外のポストも増やしました。

地域の人の優しさに触れ、自分も優しくなれる

もゆる:新井さん自身は萩と関わるようになって何か変わりましたか?

新井さん:現在は毎月1回は萩に通う2拠点生活者になりました。こちらでは人に助けてもらうことが多く、人として優しくなったかな(笑)。サラリーマンを18年もやったんですけど、その時は仕事をお金という物差しで見ていたなと思います。それが萩の人達と関わるようになって人ベースで仕事をする楽しさを知りました。

もゆる:今後、萩ではどういう活動をしていきたいですか?

新井さん:萩の浜崎町というところで活動していますが、ここは白壁の町屋が残り、海も近く、とても風情のある場所です。ここのブランド力を上げる活動をしていくことが個人的には楽しみですね。私は首都圏のビジネスやお金のことはある程度知っているので、勉強会なども開いて地域の人を盛り上げていきたいと思っています。

もゆる:地元の人とよそ者が強みで繋がると地域は盛り上げますよね。これからが楽しみです。

 

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