新卒フリーランスという茨の道を進んだライターが、著書を出版できた理由

こんにちは、ライター/編集者の齊藤颯人です。

2年ほど前、SoloProにて「新卒カードや安定を捨ててでも、新卒フリーランスライターという茨の道を進んだ理由」という記事を書きました。

あれから時がたち、私は2023年2月8日に『胸アツ戦略図鑑 逆転の戦いに学ぶビジネス教養』という書籍を出版できるまでになりました。

新卒フリーランスという茨の道を進んだライターが、なぜ著書を出版できたのか。今回の記事では、出版前後の働き方や出版のきっかけ、出版を経験しての感想などをまとめていきます。

Contents

ブックライティングを経験し、出版への思いが強まる

前回の記事を読んでいない方のために、内容を簡単に整理します。私は学生時代に就職の選択肢を捨て、新卒フリーランスを前提に独立。予定通り新卒でフリーライターとなり、有名メディアなどでも記事を書けるようになっていました。

しかし、前回の記事を書いた時期はちょうど「ひとりで働き、ひとりで学ぶこと」の限界に悩んでいたタイミングで、最終的に業務委託の編集者として東京のITベンチャー企業にジョイン。そこから現在に至るまで、週2,3日はオウンドメディアなどの編集者として活動を続けています。

一方、フリーライターの活動も並行し、時間的な制約があるなかでも得意分野の「歴史」に関する記事を書く機会は増えました。2021年の春には、歴史書のブックライティング依頼も届きます。これは2021年10月26日に『一冊でわかる江戸時代』という形で出版され、書籍の出版も経験しました。

もちろん出版を経験できたのは嬉しかったですが、一方で「著書」と「ブックライティング」に大きな壁があることを感じたのも事実です。ブックライティングを経験したからこそ、「自分の著書を出したい」という思いは強くなりました。

出版のきっかけはブログへの問い合わせから

著書への思いを強めていた2021年の秋ごろ。私のブログを見た書籍の編集者から、「著書を書いてみないか」というお誘いをいただきました。もちろん私としては願ってもない話で、即決でOKを出しました。

しかし、当時は別の本のブックライティングも抱えていたほか、新婚旅行の予定も組んでしまっており、スケジューリングがとにかく大変だったことを覚えています。結局、業務委託先でのお仕事はいったん休職同然にさせてもらい、2021年の秋~冬は執筆に明け暮れていました。

ところが、翌2022年には私の力不足もあって内容のほぼフルリライトが決まり、またもや1か月ほど休職状態に。もちろん、フリーライターとしての他の案件も原則ストップさせ、執筆に集中する日々を送りました。

2回目の提出で原稿にはOKが出て、夏の間は一息つくことができました。この時期には業務委託先での勤務を再開させ、従来より勤務数を増やして社業に専念しています。

ですが、この後に執筆で大変なのは「書き上げた後の確認作業」だと痛感させられることになりました。紙の書籍なのでリリース日が決まっており、そこに向けての確認作業は苦労しました。

今回は歴史を扱うという性質上、「歴史的事実が本当に正しいのか」「歴史解説やたとえ話は適切か」「図表に誤りはないか」などをチェックしていったのですが、何度修正してもミスが見つかり、編集の皆さんにはご迷惑をおかけしてしまいました。

2022年の冬から2023年2月8日という発売日に向けての追い込み作業が続き、業務委託先で完全休業こそしなかったものの、稼働日を減らし、状況によって急にお休みをいただくなどの対応でなんとか業務を両立させていました。

そして年明けにはギリギリの作業も無事に完了し、こうして発売にこぎつけることができたのです。

出版できた要因は「専門特化」と「ブランディング」

書店などを見てみると、有名人や経営者などの本を除けば、インフルエンサーやYouTuberなどの「強い素人」の本が多いことに気づくでしょう。理由は、出版不況の影響により著者の影響力を重視し、フォロワーやファンの購買力を見込んで著者選定が行われるためといわれています。

その文脈で言えば、インフルエンサーであれば出版には近づきそうです。しかし、私が出版オファーをいただいた段階では、SNSフォロワーは数百人。YouTuber活動をしているわけでもなく、単なる歴史ライターに過ぎませんでした。

では、業界での影響力が皆無といっていい私は、なぜ出版オファーをもらうことができたのか。その要因を分析すると、「専門分野」と「ブランディング」が大きかったです。

まず、私は「史学科出身の歴史ライター」として、専門分野をもって活動してきました。歴史ライターは意外と少なく、この肩書きで多くのお仕事をいただいていました。おかげさまで実績が積み上がり、過去の実績も著者選びの決め手になったと聞いています。

一方、「出版」という目標だけで言えば、ただ専門分野をもつだけでは不十分かもしれません。なぜなら、昨今は情報媒体の多様化により、書籍として出版されやすいジャンルと、そうでないジャンルがハッキリわかれているから。

仕事術や生き方、勉強などに関する本は出版数が多い傾向にあり、歴史も比較的出版との相性が良いジャンルです。出版を狙うなら、こういった分野に特化してみるのは一つの戦略かもしれません。

もう1つの「ブランディング」について言うと、私は影響力の低さをSEOによって補っていました。具体的には、「歴史ライター」と検索した際に私の記事がなるべく上位に表示されるよう、自分の書いた記事のリライトを繰り返しています。

▲2月10日時点のGoogle検索結果。紫字が筆者の記事

このあたりの技術は、ITベンチャー企業で編集者としてSEOを修行している成果が出たといってもいいかもしれません。インフルエンサーになるのは難しいですが、「歴史ライター」のようなニッチなキーワードで記事を上位表示する難易度はそこまで高くないのです。

まとめると、「専門分野」に特化して実績を積み重ねつつ、「ブランディング」を行って著者を探している編集者に情報を届ける。以上が、私が思う「出版オファーを待つ戦略」です。

出版オファーをもらった後が勝負

著書を出した経験がない段階だと、出版オファーをもらうこと、あるいは出版社への営業で精一杯になってしまうかもしれません。実際、過去の私もそうでした。

しかし、言うまでもなく出版はオファーをもらってからが勝負です。先ほども書いたように執筆や確認にはかなりの時間がかかり、本業を休まなければならない場面は多々ありました。自分で執筆を経験すると、世の中で「ブックライティング」がなぜこれほど普及したかがよく分かります。

出版オファーをもらった後、著書を書き切るためには、専業ライターでない限り「本業やプライベートとの両立」が最大の課題になるでしょう。急に仕事を休んだり、プライベートの予定を突然変更したりといった対応が必要になるケースもあり、執筆に対する周囲の理解は欠かせません。

また、今回の本に限らず、相場として出版で得られる原稿料や印税は皆さんのイメージするほどではないことも事実です。ハッキリ言って、重版でもかからない限り原稿料で大もうけしたり、印税生活を満喫したりはできず、時給換算すると目も当てられない数字になってしまう可能性すらあります。

こう書くと、出版へのイメージが悪くなってしまったかもしれません。しかし、出版を経験して改めて実感したことは、「出版経験はかけがえのないものである」ということです。

先のことを考えても非常に大きな実績になりますし、周囲からも大きな反響がありました。何より、自分の文章が本になって書店に並んでいる光景を見たときは、「この道を選んでよかった」と心から思いました。

出版は大変ですが、オファーをもらった際はぜひ前向きに検討してみてください。

 

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ABOUT US

(ライター/編集者) 上智大学出身の新卒フリーライター・編集者。大学で専攻した歴史系の記事を中心に、スポーツ・旅・フリーランス論などの分野で執筆。フリーランス向けメディア編集部にも参画し、編集者としても活動している。