損得よりも好きかどうか。ファンドマネージャー藤野英人さんが語る、長期的に未来からのお返しを得る方法

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将来が約束されていない個人事業主や起業家。不確実な時代に私たちが事業を継続させ、意欲的に働き続けるためには何が必要なのでしょうか。渋谷ヒカリエで開催された『Tokyo Work Design Week2016』の中で、そのヒントとなる「さぁ、人生でいちばん大切な“お金”の話をしよう」というセッションが行われました。今回はその様子をお届けします。

登壇した藤野英人さんは、投資運用会社の代表であり、多くの経営者がバイブルにする『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)の著者でもあります。ファンドマネージャーとして多くの起業家を支援してきた藤野さんが語るお金の本質とは。投資をする際に、藤野さんが大切にしている視点も交えながらお伝えします。

◎藤野 英人(ふじの ひでと)
レオス・キャピタルワークス代表取締役社長・最高投資責任者
1966年、富山県生まれ。日米の大手投資運用会社を経て、2003年レオス・キャピタルワークスを創業。中小型・成長株の運用経験が長く、ファンドマネジャーとして豊富なキャリアを持つ。運用する「ひふみ投信」は4年連続R&I優秀ファンド賞を受賞。JPXアカデミー・フェロー、明治大学商学部兼任講師も務める。著書に『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)など多数。

そもそも投資とは…

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一般的に投資とは利益を得る目的で事業に資金を出すこととされていることから、マネーゲームや金儲けを想像される方も多いかもしれません。しかし、投資とは何もお金に限定した話ではないと藤野さんは言います。

藤野さん
私の考える投資とは「エネルギーを投資して未来からお返しをいただくこと」です。エネルギーとは、情熱、行動、時間、回数、知恵、お金、体力、運、愛情などを指すので、投資で投入するお金はごく一部です。未来からのお返しとは、プロダクト(モノ・サービス)、感謝、成長、経験、お金など、様々なかたちがあるので、お金で返ってくるリターンもごく一部と言えるでしょう。

お金とは、心の鏡。エネルギーを良くするのも、悪くするのも自分次第ということです。では、良いエネルギーを発し、長期的に未来からのお返しをいただくには、どうすればいいのでしょうか。

情熱を注げる仕事を通じて、感謝されるようになる

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藤野さんのお母さんはワコールで70歳まで下着の販売をしていたそうです。全盛期は数年間にわたり全国トップクラスの成績を記録。食卓では毎日のように「今日は何枚ブラジャーを販売した」という話をするほど仕事を愛していたそうです。その情熱は、お客様の会話を全て顧客台帳につけるほど。心地よい接客が好評で、娘、孫の三代にわたり、通ってくれるお客様も珍しくなかったそうです。
大学に通い教育を受けることができたのも、お母さんが仕事を愛し、長期的に未来からのお返しを得てくれたからと藤野さんは言います。しかし、日本人の多くが藤野さんのお母さんのように仕事を愛しているとは言えないようです。

藤野さん
2015年、18~29歳の日本で若者に働くことについてアンケート調査を行った結果、働くことが当たり前だと思う人が40%、できれば働きたくないと思っている人が29%だったんです。60%の人が働くことを当たり前と思っていないというのが現状です。

2012年、社員の「組織貢献・愛着度」を尋ねたアンケートでは、日本人は31%と、28カ国の中で最低の数字です。自分の会社が好きではないという人の比率が世界的に見ても日本が一番高い。なぜ、日本の会社の業績が上がらないのかというと、みんなが嫌いな会社で働いているせいなのかもしれません。

しかし、なぜ会社を辞めないのかというと、たぶん変化が好きじゃないからだと思います。働くことをストレスと時間をお金に変えることだと思っていて、労働力を搾取する会社が嫌い、それを応援する投資も嫌いという、負のスパイラルになっているんです。「投資=ダーティー」はもはや常識で、「働くこと=ダーティー」となっていることが問題なんじゃないかと思います。

感謝の気持ちを持った消費者になる

日本人が仕事を好きになれない原因は消費者にもあると藤野さんは言います。

藤野さん
よく飲食店とかで店員さんに文句を言う“モンスター消費者”っているじゃないですか。あれはあれで問題なんですが、それ以上に“サイレントモンスター”の多さが問題だと思うんですよ。“サイレントモンスター”って何かというと、例えば、コンビニとかで黙ってお金のやりとりをしている人たち。コンビニで買い物をしたときに、店員さんに「ありがとう」を言う人ってあまりいないですよね。私は黙ってお金を払って、商品を受け取るのって、サイレントブラックだと思うんです。お金を投げるように渡すとか、携帯で通話したまま会計をするとか、そういった対応が正しいかというと、そうじゃないですよね。

ブラック企業の問題も、裏にいる顧客側に問題があると思うんです。顧客が社員を追い詰めたり、無理難題を押し付けたり、そういった背景もあるんじゃないでしょうか。

この指摘に対して、私たち全員が自分は“サイレントモンスター”になっていないか、胸に手を当てる必要があるでしょう。コンビニ、スーパー、居酒屋、あらゆる場所で消費者が、「ありがとう」を言えば、物凄い数の感謝が集まり、働くことに誇りと楽しさを感じる人が増え、グッドスパイラルが作れると藤野さんは言います。つまり、感謝と誇りこそが投資の原点ということです。

損得よりも好き嫌いで選ぶ

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今の日本社会では、多くの人が物事を損得で考えています。しかし、それよりも好き嫌いを自分の中でむき出しにすることが大切だと藤野さんは言います。損得で考える人は、結果的に利益が薄く、丁半ゲームをしているために、深く大きく儲けることはないそうです。

藤野さん
実は僕らは損得で選ぶように、無意識のうちに教育されているんですよね。両親や学校も先生からも「好き嫌いで選ぶな」とよく言われたと思うんです。でも、好きとか嫌いとかいう感覚は、損得を超えた僕らの本音なんです。この会社嫌い、この上司嫌いっていうのは、大切にする必要があると思っています。だから僕が投資するときは、好きか嫌いかで選んでいます。それが損得を超えていい結果が出ると信じているからです。投資家って損得で判断すると思われがちですが、損得で動く人って実は儲けも薄いし、損することが多いんですよ。

自分自身の人生の投資家であれ

最後にこれからの時代を生き抜くために何が必要か、藤野さんからの提言をご紹介します。

藤野さん
私がみなさんにお伝えしたいことは、「自分自身の人生の投資家になれ」ということです。

世の中の見ているもの、聞いているものは、全て投資で成り立っています。この机だって、この床だって、誰かが投資したから存在しているんです。投資には2つあって、自己投資、他己投資があります。自己投資は自分をより高めることで、自分を通して世界を変える投資。読書をするとか、旅にでるとか、おしゃれをするとか、スポーツをするとか、いろんな投資があります。他己投資は直接的に世界を変える投資。主に、教育投資、設備投資、株式投資、社会投資などがあります。特に大事なのが教育投資。これが一番リターンがあります。僕らが今ここにいるのは、両親や先生が、僕らに莫大な時間を投入してくれたからですよね。

また、本業以外で稼ぐ力を身に付けることや、一緒にいて居心地がいい仲間を見つけること、そして、確定拠出型年金(iDeCo)への加入についても、藤野さんはお勧めしていました。

まとめ

短絡的な収益に走ると深く大きくは稼げない。ご自身の経験から、そのことを重々理解している藤野さんの言葉には、素直に心に響きました。お金とは、ただの紙切れではなく、過去の努力の缶詰であり、未来の缶詰。そんなお金の本質に向き合いながら、ひたむきに努力を続けることが、長期的に未来からのお返しを得る近道なのでしょう。

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ABOUTこの記事をかいた人

田尻亨太

1982年6月11日、埼玉県生まれ。リクルート系の制作会社、某広告代理店、大手クラウドソーシング会社を経てフリーライターへ。これまで取材した会社は800社以上。作成した原稿は4000本以上。「働き方」や「キャリア」領域のライティングが好きで、「時間と場所にとらわれない」今の働き方が気に入っている。