編集長が旅しまくってる理由を尋ねたら「フリーランスはチームを組むことで自由になる」というので詳しく聞いてきた

こんにちは。ライターの坂口ナオです。

『SoloPro』編集長の松田 然(もゆる)さんとの縁は、私がフリーライターになって間もない2013年頃に始まりました。

「松田さんのように、全国を旅しながら稼げるライターになるにはどうすればいいですか?」

(参考リンク:http://moyulog.com/trip_workstyle/ )。

そう尋ねる私に、仕事の取り方や旅先での働き方などを指南してくれた松田さんは、最後にこう付け加えました。

「フリーランスとしてもっと自由に働きたかったら、チームで仕事することを考えたほうがいいよ」

その頃はチームを組めるような人脈もなかったし、「フリーランスってひとりで仕事するもんでしょ?」みたいな認識だったので、自分には必要ないと思いました。でも、今になってその言葉がことあるごとに思い出され、「あれはどういう意味だったんだろう」と気になるようになったんです。

自分はどちらかといえば寂しがりなのでぜひチームでは働いてみたいし、メリットがあるならなおさらだけど、そもそもどうやってチームを作ればいいかも分からなければ、どうやって案件を請ければいいかも、どうしてそれが自由とつながってくるのかも分からない。

ただ、松田さんがしょっちゅういろんなところに旅をして、楽しそうに働いてるのは事実。

▲なんでそんなにいろんなとこ行けるん? どうやって稼いでるん?

というわけで今回は、「もっと自由に働きたかったら、チームで仕事をしたほうがいい」の言葉の本意と、具体的にどうすればいいのかを聞いてきました。

Contents

「チームで働く」が「自由」につながる?

坂口
さっそくですが、なんであのとき松田さんは「もっと自由に働きたかったら、チームで仕事をしたほうがいい」と言ったんですか?
松田
たとえばナオちゃんは、クライアント 対 個人で仕事をすることに、プレッシャーを感じたことはない?
坂口
う〜ん。病気になってしまったときとかには感じますね。会社だとそういうとき同僚がフォローしてくれるけど、個人だと自分が対応するしかないじゃないですか。でも、やらないとその月の売上が減っちゃうから、結局無理してやるしかなくて……。
松田
そうそう。個人で働いていると、良くも悪くも案件の成否や売上が「自分の工数」に依存することになるよね。

アフリカのことわざに、“ 急いで行きたいなら、ひとりでいけ。遠くへ行きたいなら、一緒にいけ ”って言葉があって、これはそのままフリーランスと会社員のメリットとも重なると思うんだ。でも、自分は独立から8年間、いろいろなフリーランスを見てきた結果、「ひとりで行くことで、かえって道に迷って、スピードも遅く、疲弊して、結果的に独立当初の想いとは裏腹に挫折してしまう人もいる」と感じていて……。

チームで働くことは、そういったフリーランスのデメリット面を減らすことにも繋がるとはず

個人で働いていると、良くも悪くも案件の成否や売上が「自分の工数」に依存する—— 松田さんがそのことを強く感じたきっかけは、2011年の東日本大震災のときでした。

「何か東北の助けになることがしたい」そう思ったものの、当時まだフリーランス1年目だった松田さんには、そんな時間の余裕はまったくなかったと言います。なぜなら、案件を詰め込みすぎていたから。まだまだ収入も低く、結局できたのは少額の募金だけ……。

フットワーク軽く柔軟な働き方ができるのがフリーランスのメリットだったのでは? そんな矛盾に気づいた松田さんは、「どうすればもっと自らの働き方をコントロールできるか」について考え始めました。でも、考えても考えても、個人で仕事を請けている限り、自分が手を動かさなかったら案件は止まるし収入も減ってしまうことに変わりはありませんでした。

そうして行き着いた結論が「個人で請けるのは限界がある。プロジェクトチームを作ろう」だったそうです。

自由になるための「チーム構成」とは

坂口
自分の工数への依存を減らすために、具体的にはどういうチームを作ったらいいんでしょうか? 私はライターなので、チームというと「営業(ディレクター)・編集者・カメラマン・ライター」の四者の関係が思い浮かぶんですけど、それじゃ別に自分の工数は変わらないですよね?
松田
その四者は、職種によって役割が分担されたチームだよね。自分が組んでいるのは、職種軸ではなく、作業や工程で役割を分担する「分業」スタイルのチームなんだ。
坂口
ぶ…分業……?
松田
たとえば、「ライター」という仕事を細分化すると「企画」「取材」「文字起こし」「執筆」「CMS入稿(Webの管理画面に記事を入力すること)」などたくさんの作業があるよね。これらをほかの人と手分けしてやるのが「分業」
松田
「分業」をするときに大事なポイントは「メンバーそれぞれが、得意な工程に携わること」なんだ。それができると余計なストレスも時間もかからずに済むし、得意がかけ合わさることでアウトプットの質も上がるからクライアントも嬉しいし、自然と修正も少なくなるから、結果的に時間に余裕ができる
坂口
私の場合、書く作業も好きだけど、どちらかというと取材のほうが好きなので、取材は苦手だけど書くのが好きな人と組んだら最強かもって考えたことあります。
松田
それと同じ感じで、自分は文章を書くのは得意ではないけど(ライター歴10年以上なのにw)クライアントとのやりとりやプロジェクトのディレクションは得意だから、自分とは逆のタイプの人と組んで、案件の上流工程(主にクライアントサイド)に入ることが多いかな。
坂口
その場合、チームメンバーは、松田さんとライターの2人だけですか?

松田
Webライティング案件の場合、規模にもよるけどライター数人と、ディレクターサポート(通称Dサポ)とCMS入稿担当がいるかな。Dサポには自分と似たタイプの人を入れておくことで、自分ができないときはその人がやってくれたり、同じくディレクターやライターが「しばらく海外行ってきます」「家庭の用事があるので代打お願いします」となったら自分が入るなどして、お互いに自分の生活を優先しながら無理なく案件に関わることができてるよ。
松田
無理なく案件に関わってもらうのにもうひとつ大切なのは、「本人の働き方のスタイルに合わせること」
坂口
どういう意味ですか?
松田
たとえば、「海外に住んでいて日本で取材はできないけど音声をもとに文章は書ける」「お子さんがいてフルタイムではできないけど、空いた時間に文章の編集はできる」など、その人の事情と働き方を合わせるってことね。
坂口
なるほど。それを大事にしてもらえると、安心してチームにジョインできますね。
坂口
でも、細分化して仕事を請けると、一件の仕事の単価は下がっちゃうんじゃないですか
松田
もちろん、まるっと自分で引き請けるよりも、一件あたりの単価は下がる。でも、苦手なことをしなくていいぶん他の案件にも力を注ぐ時間が増えるし、自分ができないときに助けてもらえるから仕事に追われる感覚がなくなるし、得意なことだけをアウトプットすることで修正も少なくなるから、結果的に時間にも余裕ができるよね。売り上げと時間、どっちを優先するかは、人によると思うけど。
坂口
なるほど……。自分は、なるべく気兼ねなく旅に出たいし、仲間と仕事をするのも好きなので、断然チームでの働き方に興味がありますね。

チームメンバー、どうやって集めればいい?

坂口
各役割ごとに適任なメンバーを見つけるのって難しそうな気がします。松田さんはいつもどんな風にチームを組んでいるんですか?

松田
オンラインのコミュニティや個人的に付き合いのある友人・知人のなかから、得意や好きなことが合いそうな人に、案件ごと、個別に声をかけてるかな。
坂口
「オンラインのコミュニティ」には、たとえばどんなものがあるんですか?
松田
自分の場合、「SoloProライター」グループや、フリーランスの健康と仕事のためのサロン「FreeRun`s」などゆるい繋がりのある場所を作っていて、Chatworkのグループでは、案件の相談をするスレッドとか、子育て中の悩みを相談するスレッドとかを作ってるかな。ほかにも興味のあるオンラインコミュニティには何個か所属しているよ。
▲小さいお子さんのいるパパママフリーランスが悩みを相談するスレッド
松田
こうやってゆるく繋がりを持っておくことで、コミュニティのメンバーがどんなことに興味を持っているかや、どんな仕事をしていて、何が得意なのかが見えてくる。つまり、チーム作りのベースとして活用しやすいんだ。だから、コミュニティは意識して作るようにしてるよ。
坂口
私はTwitterで同業者ばかりフォローしてるので、タイムラインがその役割をしてくれてる感じがします。
松田
たしかに、Twitterでもそういう使い方ができるね。ただ、自分の場合、オンラインコミュニティを作るのは「主体性が見えやすいから」という理由もあるんだ。コミュニティで受け身の人は仕事でも受け身だし、自ら有益な情報を発信したりコミュニティを盛り上げたりしてくれる人は、プロジェクトでも主体的に動いたり周りへの気遣いができる傾向にあるから。
坂口
へぇ、そんなところも見てるんですね……!
松田
もちろん、盛り上げてほしいと強制しちゃうと会社のようになっちゃうので、あくまで本人次第だけどね。でも、自分は人のお尻を叩くのが苦手なタイプだから、コミュニティ内での関わり方は結構見るかなぁ。業者じゃなくて顔見知りに仕事を頼むようにしてるのも、受け身じゃなくて一緒にプロジェクトを良くしていこうと思える仲間になり得るから、って背景もあったりする。

上手なチーム運営のコツは「売上よりも人優先」

坂口
とはいえメンバーが確保できない場合もありそうですよね。そういうときはどうするんですか?

松田
その場合、無理に案件を請ける必要はないかなと思ってる。適任がいなかったり、人数が足りなかったりするのに無理しても、いいアウトプットになりづらいから。だから、自分が人に案件を依頼するときも、無理なときは無理って正直に言ってくれる人を評価してるんだ。
坂口
あ……たしかに、こないだ「こういう案件あるんだけど、興味ある?」って私に聞いてくれたとき、「嫌だったり無理だったりしたら正直に言って。無理にやってもらうのは本意じゃないから」って念押ししてましたもんね。
松田
そうそう。いいアウトプットが出せないとクライアントからの評価も下がるし、ミスや修正が増えると疲弊して、ほかの案件にも影響が出たりして、結局不本意な結果になっちゃうからね。案件を断るのは、フリーランスにとってはなかなか勇気がいることだと思うけど、自分が独立して8年間、営業もせずに売上が上がり続けてるのは、目の前の売上にとらわれず、いいアウトプットを出すことに注力してきたからだと思ってるよ。

組織化しないのは「いいチーム」を保つため

坂口
最後に、これは実際に自分が松田さんと働いてみて感じたことなんですが、松田さんて、すごく雰囲気がいいチームづくりをしていると思うんですね。ここに関して、何か気をつけてることってあるんですか?
松田
ナオちゃんは「いいチーム」ってどんなチームだと思う?
坂口
えっ、そうだな……。「お互いを尊重している」チーム、ですかね。ミスを指摘するときは、みんなの前でじゃなくて個別に伝えるとか、「ありがとう」や「ごめんなさい」がきちんと言えるとか?
松田
じゃあ、「悪いチーム」は?
坂口
それができてないチーム……ですかね。お互いの揚げ足をとるようなチームだと、常にピリピリした空気になってしまって、助けを求めたくてもできないし、結局無理をしてどんどん人が潰れていっちゃったり、すると思います。
松田
そういうチームにしないために自分が唯一やっていることがあるとすれば、それは「組織化しない」ことだと思う。社員としてメンバーを雇うと、固定費をカバーするため売上を上げなきゃいけなくなるよね。
坂口
あるある過ぎて頭が痛くなってきました。
松田
そこで苦戦している人は多いよね。売上第一になると、嫌な人でも売上に貢献してくれるならチームにいてもらわなきゃならなくなるし、案件との相性がよくない人にも頑張ってもらわなきゃならないシーンが出てくる。それをマネジメントして、チームの雰囲気をコントロールして……って手もあるし、そのスタイルが向いている人もいる。でも、自分はそういうタイプじゃないから、組織化してないんだ。

編集長がやっていたのは、「無理なく働けるプロジェクトチーム作り」

「” 急いで行きたいなら、一人でいけ。遠くへ行きたいなら、一緒にいけ “ という言葉通り、遠くに行きたいなら会社という組織に入ればいいし、速く行きたいなら、自分のタイプを知った上で、それに合ったプロジェクトチームを作るか探すのがいいんじゃないかな? 今の時代、その柔軟なスタイルの方が結果的に速く遠くへ行けるかもしれないしね」

というわけで、編集長が旅しまくっている理由は、「自分が無理なく働けるプロジェクトチームを作っていたから」ということでした。

実際に旅しまくっている人がやっているんだから、ちょっと自分も真似してみよう、と、この取材を経てさっそくやってみたことがあります。それは「テープ起こしの外注」。

正直、すっっっっごい快適でした。これが「得意な工程・作業に注力する」気持ちよさか……と感じました。テープ起こしをしてくれた人とは発注者・受注者の関係性なので、チームで動いたとは言えないのですが、「組んだ相手がいい仕事をしてくれたおかげで、自分のモチベーションまで上がる実感」を得ることができました。

今回紹介したヒントを活かして、「仕事に追われない」「自由な時間が増える」働き方を、もっともっと追求していきたいと思います。

松田
最後に……実はチームを作ることはフリーランスが働き方を変える1要素にすぎません。さらに個人で働く戦闘力をあげたい方はこちらのイベントでもいろいろポイントを伝授します!

あと、こういったイベントでできる横のつながりこそ、これから一緒に働く仲間を見つけるのにも最適だったり!?

 

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ABOUT US

東京都在住のフリーライター/編集者。2013年、別業種よりライターに転身。Webの取材記事をメインに活動を拡大し、2015年、編集者として株式会社LIGに入社。顧客のオウンドメディア運用(企画〜編集)、自社メディアの編集を担当する。2018年、再びフリーライターとして独立。現在はライティングに主軸を置きつつ、編集業で培ったマーケティングの視点を生かし「本当に読まれる記事」の制作に力を入れる。
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