次の時代を切り拓くのは、「今」を楽しむ力。自分の仕事の役割、その意味を問う働き方戦略とは?【オンライン×マインドフルネス:井上 広法さん】 #はたサバ

記事のポイント
✅マインドフルネスとは、心の状態を評価・判断せず、今に意識を向けること。「今、心はどんな感じだろう?」と俯瞰して見る習慣がつけば、生き方が変わる
✅ワークショップのオンライン化により、マインドフルネスがより身近になった(場所・時間を問わず参加できるため、仲間づくり・習慣化がしやすい)
✅After/Withコロナ時代「そもそも社会にとっての自分の仕事の役割は何か? 」問い直す必要がある

新型コロナウイルスの影響で在宅ワークやオンライン上での仕事が増える中、自分のスキルとIT・テクノロジーを掛け合わせてどんなことができるのか ──。これからの働き方について想いを巡らす方もいるのではないでしょうか?

そこで働き方メディア「SoloPro」では、毎週月曜日21時〜「オンライン×働き方・スキル」をキーワードに、いろいろな業界の第一人者やチャレンジャーに、公開インタビューを実施。

「After/Withコロナ時代の働き方サバイバル戦略」略して、#はたサバ

6月29日(月)のゲストは、光琳寺住職の井上 広法さんです。

心理学を学んだお坊さんとして、仏教を現代社会に広める活動をしている広法さん。その活動の幅は、人生相談ができるWebサイトの設立やお坊さんバラエティ番組「ぶっちゃけ寺」の立ち上げ、マインドフルネスワークショップの講師など、多岐にわたります。今回はそんな広法さんを働き方メディア「SoloPro」編集長の松田然が公開インタビュー。

数々のイベントでファシリテーターを務めているオンラインファシリのプロ 小林 千夏さんも招き、オンライン×マインドフルネスをメインテーマに、広法さんが考えるWith/Afterコロナ時代におけるマインドフルネスを取り入れた働き方やキャリアについてお聞きしました。

【ゲストプロフィール】
■井上 広法 さん
光琳寺住職 1979年宇都宮市生まれ。中学卒業後、高校へ進学せず一年間ひきこもる。その間、人生を問い続け、一年遅れて高校へ進学する。その後、佛教大学で浄土学を、東京学芸大学で臨床心理学を専攻。現在、仏教を現代社会に広めるために活動している。
2012年には僧侶に人生相談ができるWebサイト「hasunoha」のリリース、2014年には史上初のお坊さんバラエティ番組「ぶっちゃけ寺」の立ち上げとゴールデン進出に貢献した。また2016年にマインドフルネスをベースにしたビジネスパーソン向けプログラム「cocokuri」のスタートアップ、2018年にご先祖様を見える化するおもちゃ「いのちの積み木®︎」の開発、2019年にコワーキングスペース「áret」のオープンなど仏教への入り口を数多くデザインしている。
著書に「心理学を学んだお坊さんの幸せに満たされる練習」(永岡書店)などがある。
【インタビュアー】
■松田然(もゆる)働き方実験家・SoloPro編集長 
2007年に未経験からライターとなる。その後、すぐにリーマンショックが起こり不眠不休の激務を通じてココロの体力を付け、2010年に独立・起業。2013年に2社目となるライターカンパニー「合同会社スゴモン」を立ち上げ代表を務めると同時に、ライターになってから現在に至るまで13年で4000人以上を取材しているインタビューライター。
いろいろな人の働き方や生き方に触れたことで、自分の旗を立てる、働き方のサードプレイス「SoloPro」を運営し、メディアやコミュニティ作り、キャリアコーチングなども行っている。
趣味では、自転車旅人としてリモートワークをしながら47都道府県全てを走破したりトライアスロンに挑戦したり……その際に出会った全国の仲間と一緒にプロジェクトを動かし、地方の働き方支援(行政と連携した地方創生の取り組み)や、各種メディアでの情報発信や場づくりなども行う。
総じて、いろいろな働き方を実験している人なので、肩書きは「働き方実験家」。

そもそも、「マインドフルネス」とは何?

もゆる

広法さんとは、キャンプ場でビジネスを学ぶイベント(The LIfe School)でお会いして以来、宇都宮で一緒に餃子を食べたり、取材させていただいたりした仲ですよね。とても幅広い活動をされているので、まずは普段どのような仕事・活動をされているのかあらためて教えてください。

広法 さん

宇都宮にある光琳寺というお寺の住職をしています。

具体的な活動の軸は2つです。

・悲しみを抱えてお寺にくる方のケア

・不安定な時代を、自分らしく幸せに生きるためのサポート

前者ではお葬式を執り行ったり、遺族の悲しみに寄り添う活動を。後者では仏教の教えと、臨床心理学を掛け合わせ、仏教を現代社会に広める活動をしています。例えば、マインドフルネス講座や企業研修、テレビ番組などのメディア出演、著書の執筆など、ですね。

もゆる

「お坊さん」は、お葬式などを執り行う仕事をイメージする人も多いと思います。広法さんは、爆笑問題のバラエティ番組「ぶっちゃけ寺」の立ち上げや、著書「心理学を学んだお坊さんの幸せに満たされる練習」の執筆など、お坊さんのイメージとはかけ離れた活動をされているのが印象的です……!

広法 さん

僕の使命は「広法」と名前の通り、「法(仏教)を広めること」。

みなさんに、よりわかりやすく仏教をお伝えするため、その時々に合った活動をしています。

もゆる

その想いの原点とは?

広法さん

現代社会にこそ仏教が必要だ、と気づいたことがターニングポイントでした。寺の長男として生まれましたが、子どもの頃は「お坊さんになりたくない!」と思っていたんです。

でも専門的に仏教を学び始めると、仏教にこそ、現代人が抱えるストレスや・悲しみ・不安を緩和する効果や、社会問題を解決するヒントがあると感じました。

もゆる

なるほど。

広法さん

にも関わらず、現代社会に仏教の教えは浸透していない。その現実を受け、根拠がわかりやすい心理学と掛け合わせたら、より良く生きるヒントをわかりやすく伝えられるのではないか? と考えました。仏教の大学卒業後、もう一度センター試験を受け、大学で臨床心理学を学び、現在の活動に至っています。

もゆる

そういった経緯が、今の幅広い活動につながっているんですね!

今回は、近年注目されているマインドフルネスについて伺っていきたいのですが、そもそもマインドフルネスとは何か教えてください。

広法さん

マインドフルネスとは、心の状態を評価・判断せず、今に意識を向けることです。「今、心はどんな感じだろう?」と俯瞰して見る習慣がつけば、生き方が変わります。

もゆる

具体的には何から始めればいいのかわからない方や、実際に行うイメージがわきにくい方もいると思います。もう少し、内容を知りたいです。

広法さん

最近、私はこんな例えで紹介しています。このペットボトルに入ったコーラを心の状態に置き換えて考えみましょう。コーラを上下左右に振ったら、どうなりますか?

もゆる

中身がシェイクされて、開けた途端に吹き出す危険な状態になります……!

広法さん

そうですね。(この放送日である)月曜の朝は、心が、シェイクされたコーラのような状態の人も多いのではないでしょうか。休日明けでエンジンがかかりづらい。でも「メールチェックしなきゃ! 」「ZOOMの使い方確認しなきゃ! 」「資料作成しなきゃ!」と、やることは山積み。意識があちこちへ飛び、心が不安や焦りに囚われている状態です。

もゆる

ありますね〜。そういうときって、考えれば考えるほど、頭の中がシェイクされて爆発しそうになります(笑)

広法さん

では、シェイクしたコーラを泡を立てずに開ける、唯一の方法は?

もゆる

……何でしょう? そんな方法ありますか?

広法さん

放っておくこと、です。

「今、私は◯◯に焦っているんだな」「今、◯◯に不安を感じているんだな」と、心に浮かぶ感情や考えを、評価・判断せずに感じましょう。そうすればパニックにならず、心穏やかな状態を保てます。

もゆる

なるほど。でも頭ではわかっていても、いざというとき、テンパってしまいます(汗)

広法さん

『マインドフルネス瞑想』を習慣化することで、徐々にできるようになっていきますよ。

例えば、初めて挑戦するスポーツもそうですよね。最初は失敗ばかりだったとしても、コツコツ練習すればいつかは上達します。

心も同じです。トレーニングを積み重ねれば、どんな波が来ても乗りこなせるようになる。だんだんと常に、穏やかで安定した状態を保てるようになります。

日常生活の些細な場面に、マインドフルネスを

千夏さん

モデレーターの小林千夏です。マインドフルネスによって得られる効果について、より詳しく聞きたいです!

広法さん

心の状態を俯瞰して見られるようになり、感情の原因に気づけるようになります。例えば、なんかイライラする……わからないけどモヤモヤする……。なんてこと、ありませんか?

千夏さん

ありますね。ずっとそのことばかりを考えてしまい、憂鬱になったり。

広法さん

マインドフルネス瞑想を続けると、「あ、朝コンビニの店員に嫌な対応をされたからイライラしているんだ」「信号待ちしているとき、急にクラクションを鳴らされたからモヤモヤしてるんだ」と、ネガティブな感情の原因に気づけるようになるんです。

千夏さん

私の場合、モヤモヤするときは、紙に書き出しています!

広法さん

いいですね。書き出すことを『ジャーナリング』といい、『書く瞑想』とも言われています。書き出すときは、イライラする! ムカつく! など、同じ言葉をなんど書いても構いません。気持ちを紙に書き出すことで、心の中を可視化することが大事です。

もゆる

原因に気づければ、囚われていた感情を手放せて、心が楽になれるんですね。

広法さん

おっしゃる通り。さらに、書き出した内容を「自己認知」することも重要です。「またこのパターンで落ち込んでいるんだな」と、心のクセに気づけると、同じことを繰り返さなくなりますから。

千夏さん

なるほど……! でも、マインドフルネスの効果は理解つつ、「瞑想」に抵抗がある人もいるかと思います。日常に取り入れやすい方法はありますか?

広法さん

頭の中でおしゃべりをせず、目の前のことに集中できることであれば何でも良いですよ。

僕は、歯磨きをしているときもマインドフルな状態です。

千夏さん

歯磨きですか!?

広法さん

歯の一本一本に意識を向ければ、「今、ここ」に集中できます。他にも、皿洗いや掃除なども良いですね。

千夏さん

それなら、日常生活の些細な場面で実践できますね!

広法さん

先ほど、ジャーナリングを「書く瞑想」とご紹介しましたが、「歩く瞑想」などもあるんですよ。座って行う瞑想が苦手な方は、ご自身に合ったやり方で構いません。

もゆる

僕は、自転車に乗っていると「今、ここ」に意識を向けやすいですね。

千夏さん

(Facebook LIVEの)コメント欄にも、みなさんからマインドフルになれる場面が届いています。「ドラムを叩いているとき」「空を眺めているとき」……など、ふむふむ。

自分が夢中になれて没頭・集中できるものであれば、日常生活でも取り入れやすそうですね!

マインドフルネスは「継続」が大事!

もゆる

先ほどマインドフルネスは、習慣化させることで効果が得られるとお話がありました。でもなかなか続かない、という方も多いかと思います。トレーニングを続けるコツがあれば教えてください。

広法さん

サークルのように、仲間をつくることで習慣化しやすくなります。これは2500年前にお釈迦様が考えたモチベーション維持の方法です。

千夏さん

一緒に頑張る仲間となら、支え合えますもんね! 一方で、職場の同僚や友達にマインドフルネスを勧めてもなかなか魅力が伝わらない、仲間づくりが難しい、という声もあります。

広法さん

言葉で伝えるより、まず自分自身が「今、に意識を向け生きる」姿を体現することが重要です。周囲の人はそんなあなたを見て、「マインドフルネスって何? やってみたい」と興味を持つでしょう。

千夏さん

なるほど。

広法さん

例えば、掃除を人に勧めるとき、本人の部屋がゴミだらけだと説得力がないですよね。仏教用語には、「自利利他」という言葉があります。自分が実践し利益を得られて、初めて他者へ利益を与えられるという意味。自分にできないことは、他人には勧められません。

もゆる

伝える本人がマインドフルネスを実践し続け「今を生きる」ことが、遠回りのようで近道なんですね。

広法さん

私が携わっている地域の健康に貢献するお寺『ヘルシーテンプル・コミュニティ』では

宗派を超えた全国のお寺から、心と体を調える「朝の習慣」をオンラインでお届けしようと、毎朝7時からマインドフルネスワークショップを無料開催しています。

千夏さん

すでにあるコミュニティを活用すれば、仲間もづくりや習慣化もしやすそうですね!

広法さん

新型コロナウイルスの影響で、全てのワークショップをオンライン化せざるを得なくなりました。でもそのぶん、お寺やワークショップ会場に足を運ばずとも実施できるため、マインドフルネスがより手軽に、身近になったのではないでしょうか。

『ヘルシーテンプル・コミュニティ』も、全国どこからでも、朝起きてすぐにでも、スマートフォンから参加できます。毎朝マインドフルネスを行ってから出勤する方もいらっしゃるほど。オンラインというツールが、より多くの方にマインドフルネスに触れていただく、良いきっかけになっていると思いますね。

After/Withコロナ時代「自分の仕事の役割は何か? 」を問い直す

もゆる

最後に、この企画で皆さんに聞いている質問ですが、広法さんが考える、With/Afterコロナ時代の #はたサバ(働き方戦略)を教えてください!

広法さん

コロナ時代における自分のロールモデルをつくるため、「そもそも社会にとってのお坊さんの役割ってなんだったのか? 」問い直したいですね。

お坊さんの定義を、お葬式を執り行うだけではない、みなさんにより良く生きるためのヒントを与える存在だとすれば、ロールモデルは変わってきます。

もゆる

広法さんを3年前に取材させていただいた記事では、目標設定の話をさせていただきました。「目標がないと、目隠しした状態のまま進んでいるようなもの。何処に向かっていいのか分からない状態では、本来楽しいものも楽しくない。自分で決めた道だからこそ、楽しいと感じる」とおっしゃっていました。コロナ禍で、目標設定の仕方も変わってくるのでしょうか?

広法さん

目標設定の考え方は、変わりましたね。新型コロナウイルスの影響で、今まで積み上げてきた計画が全て崩れてしまった方もいると思うんです。VUCA(ブーカ)時代※1 と呼ばれている現代社会では、今後も予測不能な出来事は起こるでしょう。

※1:VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉で、現代の経営環境や個人のキャリアを取り巻く状況を表現するキーワードとして使われています。引用:https://bizhint.jp/keyword/40037

そうなると、遠い未来の目標を立てるより「『今』を楽む力」が大事になってくると思うんです。そもそも自分は何がしたいのか? どんなことで社会貢献をしたいのか? 今を楽しめているか? コロナ時代におけるロールモデルは描くには、自分に問いを投げかけるこが大事だと考えますね。

もゆる

私の職業のライターで言うと、新型コロナウイルスの影響でお客様から依頼される受託の仕事は減少していくと予想されます。加えてここ数年は、AIが文章を書けるようになれば、ライターの仕事は無くなるとも言われてきました。

広法さん

そうですね。

もゆる

こうした時代に先立ち、職種で括るのではなく、ライターの持つスキルが社会でどう役立つか? を問い直す必要があると感じています。ライターの持つスキルを分解してみると、人を動かす企画や、対象者の魅力を引き出すインタビューが得意な人もいて。発揮できる価値は、それぞれ異なります。

自分の強みを見つめ直すことが、コロナ禍における働き方のサバイバル戦略(#はたサバ)になりそうですね。

広法さん

まさに。そもそもライターの仕事とは何か? 根本に立ち返ることで、もゆるさんにとっての、次のライター像が変わってくるわけです。

私も月に1〜2本取材を受けるのですが、ライターさんの質問によって私自身でも気づかなかった考えを引き出してもらうことがあります。さらに記事にして見える化もしてくれる。それって、価値ですよね。

メンタル状態がマイナスな人を救うのがカウンセリングの役割だとしたら、インタビューはフラットな状態にある人の魅力を引き出し、輝かせる効果があるように思いますよ。

もゆる

ありがとうございます。今日も有難いお話をたっぷり聞かせていただきました……!

最後に、視聴者の方へメッセージをお願いします!

広法さん

ひと言、「コーラは振るな」ですね。

もゆる

わかりやすい(笑)そして本質ですね。

広法さん

私たちはパニックになるほど、刺激を加えようとします。「〜しなくちゃいけない! 」と慌てるときに限って、普段しないミスをしたり……。

千夏さん

身に覚えのある方も多いと思います。

広法さん

改善するにはまず、1日1回で良いので、「心の中のコーラを放っておく」時間を取りましょう。

心の声を受け止め、生きる。そんな人生を実現する役割を、マインドフルネスは担ってくれますよ。

 

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