事業を創り継続していくのに必要なのは、想いと仕組みと仲間、そして”人間っぽさ”【オンライン×事業企画力:渡邉知さん】 #はたサバ

記事のポイント
✅場に雑談や余白を生み出してくれるオンラインファシリテーターは、重宝される!
✅ポートフォリオを構築しながら、次の世代にバトンをつなぐ使命を全うする
✅自分のビジョン・ミッション・バリューを考える働き方戦略を!

新型コロナウイルスの影響で在宅ワークやオンライン上での仕事が増える中、自分のスキルとIT・テクノロジーを掛け合わせてどんなことができるのか ──。これからの働き方について想いを巡らす方もいるのではないでしょうか?

そこで働き方メディア「SoloPro」では、毎週月曜日21時〜「オンライン×働き方・スキル」をキーワードに、いろいろな業界の第一人者やチャレンジャーに、公開インタビューを実施。

「With/Afterコロナ時代の働き方サバイバル戦略」略して、#はたサバ

8月31日(月)のゲストは、ファイアープレイス 代表取締役社長、渡邉知(わたなべさとる)さんです。

電通グループ→リクルートを経て独立。良質の問いと言語化を通じて、まちとひととコミュニティに火を灯す人で在りたいという想いから、イグナイター(点火する人)という肩書きを掲げています。

今回は、働き方メディア「SoloPro」編集長の松田然と、普段は大手企業で人事をになっている小林千夏が公開インタビューを実施。オンライン×事業企画力をメインテーマに、With/Afterコロナ時代の働き方やキャリア、そして求められるスキルをインタビューします。

【ゲスト】
■渡邉知(わたなべさとる) 
株式会社ファイアープレイス代表取締役
・経歴:
1999 年、電通グループのITコンサルティング会社(ISI-Dentsu)入社。人事部採用グループマネジャー、経営計画室勤務を経て、
2008 年より(株)リクルー トへ中途入社。大手企業の人材採用
・育成支援部門で営業活動に従事した後、
2010 年、同社 TOPGUN AWARD 受賞(全社営業表彰)。
2011 年よりじゃらんリサーチセンターエリアプロデューサー/研究員。 主として都市圏から地域への交流人口増をテーマにした社会課題に関わる。
2014 年より ISID オープンイノベーション研究所。 ビジネスプロデューサーとして、主に ICT を活用した地域コミュニティーづくりに携わる。
2015 年、株式会社 ファイアープレイス設立。コミュニティ起点の 場づくり事業を通じて、まちづくりや不動産価値向上に挑戦中。
東京都観光まちづくりアドバイザー。静岡県地域づくりアドバイザー。 株式会社 さとゆめ社外アドバイザー。
【インタビュアー】

■小林千夏(こばやし ちなつ)
大手通信企業 人事(採用・育成)/ 問話デザイン/ S1グランプリ イベントデザイナー/グローバル人事塾 企画責任者/SoloLabコミュニティマネージャー
2012年大手通信企業に入社。法人向けのコンサルティング営業にて新人賞、MVP賞などを取得した後、営業の育成を担い、人事へキャリアチェンジ。複業として、イベントの企画運営、プロファシリテーター、企業研修講師など、口コミのみで活動を広げ、パラレルワークを実践中。働き方、生き方を自分で自由に選べる力を身につけ、かかわる人にもそのキッカケとなる“場”を提供することをミッションとして活動している。

■松田然(もゆる)
働くをトトノエル専門家。
2010年に独立・起業。2013年に2社目となる、聴く・書く・伝える「合同会社スゴモン」を立ち上げ代表を務める。ライターになってから現在に至るまで3700人以上を取材しているインタビュアー。特に「働く」に関わる企業ブランディング、採用支援、組織活性などを得意としている。

企業ブランディング構築・支援サービス「TotonouWork」運営代表。プロの働き方発信サイト「SoloPro」編集長なども務める。

趣味は自転車とサウナ。自転車旅しながらリモートワークで47都道府県全てを走ったり、週平均3.7回以上サウナに入っている(サウナ・スパプロフェッショナル)。

ミッションは、「日本の働くをトトノエル」

Contents

オンライン時代に重宝される、心理的安全性を確保できるファシリテーション力

小林さん

まず、自己紹介含め、どんな活動をされているのか教えてください。

渡邉さん

ファイアープレイス 代表取締役社長として「ビジョンを繋ぐ、場とコミュニティの創造」を通じ、社会をより良くする活動を行なっています。

事業は主に3つ。

つながりを育むための「場所」として川崎のロックヒルズガーデン日本橋のCONNECT、2店舗を構えた『自社店舗運営事業』。商業施設、ビル、公園、遊休施設といった「不動産」を、つながりを育むコミュニティ起点で価値向上させていく『不動産価値向上事業』。まち、会社、組織、チーム、個人に伴走し、ビジョン策定やその言語化に伴走する『言語化支援事業』です。

小林さん

まちとひととコミュニティに火を灯す人で在りたいという想いから、イグナイター(点火する人)という肩書きを掲げている渡邉さん。コロナ禍でもオンラインイベントの登壇やオンライン会議で人と繋がる機会も多かったのでしょうか?

渡邉さん

そうですね。おかげでだいぶ慣れてきました(笑)オンラインイベントの登壇が多かったのですが、物理的にはお会いしたことない方ともつながれたのが印象的でしたね。Facebookの友達も300人くらい増えたかな。オンラインだと「1時間・30分話しましょう! 」と気軽に声をかけられるからコミュニケーションのハードルは下がったように感じます。

小林さん

たしかに。オンラインであれば、時間・場所に拘束されない分、人とつながる機会を自ら生み出しやすい側面もありますよね!

渡邉さん

ただオンラインだと雑談が生まれにくく、余白の時間をつくりにくいな、と。

もゆる

具体的に、どのような場面でそう感じましたか?

渡邉さん

やはり、アイデア出し・チームビルディング・心理的安全性の確保・メンバー同士の関係構築などは、対面でのコミュニケーションが適していますよね。相手の表情や反応を読み取ったり、ちょっとした雑談から相手のことを知れたり、そういう余白って大事だと思うんです。

小林さん

たしかに。それでもオンラインでやらざるを得ない環境なのが難しいですね。

渡邉さん

だからこそ、場に雑談や余白を生み出してくれるオンラインファシリテーターは、これからすごく重宝されるんじゃないかな。画面越しでも感情が伝わるリアクションをしたり、会話をいろんな人に振って場を回してくれたり。場の心理的安全性を確保し、和ませてくれる存在は有り難いですよ。

小林さん

私もコロナ禍をきっかけに、オンラインファシリテーターを仕事としてお声がけいただく機会が多くなりました。

渡邉さん

そうですよね。「会議・MTG・イベントで、ちょっと空気作ってくれない? 」というニーズは増えてくると思います。オンラインファシリテーションだけで仕事になる時代も、そう遠くはないかも。

もゆる

小林さんも、この「はたサバ」ではオンラインファシリテーターのプロとして入ってもらっています。今回のテーマである事業企画の側面からも、オンラインファシリテーションが必要とされている、と感じる場面はありますか?

渡邉さん

いろんな価値観を持った人の意見をすくい上げ、意見交換を活発化させる・新しいアイデアが生まれやすい場づくりをしてくれる存在として必要性を感じますね。

小林さん

たしかに新しい事業の立ち上げ時などは特に感じますね。

渡邉さん

同じ価値観を持った人が議論をしてもイノベーションは生まれない。やはりその業界・会社・職種ならではの考え方があるので、その中だけで話し合っていても、過去と似たような企画しか出てこないんです。新しいものを作るには、自分たちとは違う価値観を持った方と話をする必要がある。

もゆる

0→1は多様な価値観の中で生まれやすい、ということですね。

渡邉さん

おっしゃり通り。ただいきなり、価値観がバラバラな人たちが意見交換をしても、相手の言っていることが理解できない……。と、議論が良い方向に進まないことも。

そこで、大事なのは3点。

  • 多様性を受容する
  • 全員味方という空気感をつくる
  • 言葉の意味と意義を整える

その役割を担ってくれるのが、オンラインファシリテーターだと思うんです。

小林さん

なるほど。

渡邉さん

「認識が揃わないまま議論を進めるところだったな」「おかげで、多様な意見が出やすくなった」そんな風に、議論が活性化し、新しいアイデアや創造が生まれやすい空気をつくる人がいてくれると、助かります。

もゆる

オンラインの場で事業を企画するポイントの1つに雑談や余白を含んだ心理的安全性を確保できるファシリテーション力が求められそうですね!

組織でがむしゃらに働く中での気付き。転機は3.11

もゆる

知さんは、会社としてだけでなく、ご自身でも「全ての人がビジョンを介して有機的に繋がり合う社会の実現」というビジョンを掲げ大事にされている印象を受けます。会社員時代からビジョン・ミッション・バリューなどを意識しながら働かれていたのですか?

渡邉さん

いいえ。起業前は、電通グループのITコンサルティング会社やリクルートといった大手企業に勤めており、モチベーションはもっぱら給与や出世。「99%達成しても1%未達なら失敗だ 」と言われる結果が全ての世界で、周囲と競争しながら働いていましたね。周りは皆、ライバルに見えていました。

もゆる

そこからどのような転機があったのでしょう?

渡邉さん

きっかけは、東日本大震災です。自分も何かできないか? と、地方創生に関わる部署に社内異動し、働き始めました。でも、都市圏を離れ、ローカルでいち個人として仲間を集めようとしても、なかなか思うようにいかなかったり、地域の人からも信頼を得られなかったりして。会社の外で、仲間を集められない、共感接点を作れない自分の力不足を思い知りました。

それ以降、会社の中で与えられた仕事をこなすだけの働き方に違和感を感じ始めるようになって。自分は何のために働いているのか? 何のために生きているのか? というところまで悶々と考え込むようになりました。

小林さん

会社の看板を外したとき、いち個人として自分の存在意義を見出すのは難しいですよね。

渡邉さん

そうですね。自分で会社を設立してミッション・ビジョン・バリューを大事にする働き方を選んだのは、給与や出世を追い求めても終わりが見えないと気づいたことも大きいです。課長になっても次は部長を目指したいと思うし、タワーマンションの20階に住んだら30階に住みたいと思うようになる。もっと上、もっともっとという価値観に疲れた部分も大きいかもしれません。

もゆる

私も20代の頃は寝る間も惜しんで働いていたので、渡邉さんのエピソードにはすごく共感できます。そこから働き方を変えようと思ったのは東日本大震災がきっかけでした。

企業の中にいると、自分で働き方を選ばなくても、上から指示されたことをこなしていく心地よさがありますが、キャリアを重ねると「それでいいんだっけ?」という壁にぶち当たる気がします。自分の人生なのに語れることがない、みたいな。

渡邉さん

おっしゃる通り。

  • ビジョン
  • 経験/実績
  • できること/やりたいこと

それを1つのストーリーにして相手に伝えられる人って意外と少ないんじゃないかな。

小林さん

そうですね。本質的で大事なこと、と頭では分かりながらも自分自身を言語化できている人は少ないように感じます。

渡邉さん

自分は何者で、何屋さんなのか? 社会に生まれた一員として、死ぬときに誰にどんなバトンを渡せるか? 一旦立ち止まって考えることも必要です。

僕らが若い頃、いろんな方に影響を受けアドバイスをもらい育ててもらった恩恵を、また次の世代につなげていく使命があると思うから。

小林さん

深いですね……!

渡邉さん

すぐに答えが見つからなくてもいい。でも考え続け発信することで、共感してくれる仲間が集まります。そこからミッション・ビジョン・バリューに沿った事業・働き方ができるんじゃないかと思いますね。

もゆる

競争・結果が全ての世界が縦軸とすれば、そこで磨いてきたスキルを活かして、自分やチームのあり方を大事にする横軸の働き方を選ぶ。この二軸は自分のキャリアをより豊かにしてくれますね。

事業を仕組み化し、後世へバトンをつなぐ覚悟を

小林さん

はたサバは、働き方サバイバル戦略の略であります。知さんは飲食店も経営されていることもあり、新型コロナウイルスでの影響も大きかったのではないでしょうか?

渡邉さん

そうですね。緊急事態宣言が出た4月から3500万円くらいの損失は出ました(※コロナ禍ではない通常の年であれば計算できていた売上金額)。特に日本橋のCONNECTはオープン1年目だったこともあり、影響をすごく受けました。計画は全て白紙。リアルで集う場を否定されたような感覚にもなりましたね。

小林さん

そうだったんですね……。

渡邉さん

店を開けなくても家賃・設備投資・光熱費と息を吸うだけで毎月300〜400万円くらいはかかる。加えて、銀行からお金を借りるために、住んでいるマンションを担保に入れていたので、支払いができなければ住むところもなくなる。あまりにも現実感がなさすぎて、逆に笑ってしまいました。

小林さん

そこから現在は、どのような戦略を考えていらっしゃるのでしょう?

渡邉さん

事業のポートフォリオを再設定しようと考えています。Aの事業から収益を生み出せなくなっても、Bがある・Cがある、と円グラフのバランスを考えていかないとな、と。何が起こるかわからない不確実な時代。何かが欠けても、何かで補えるビジネスモデルを構築しないと難しいですね。

もゆる

そうですね。私もライターがメインの仕事ですが、会社を経営していることもあり、イベントやコミュニティなどの場づくり、コーチング・コンサルティングなど在庫を持たず自分のスキルや経験で提供できるサービスなどもポートフォリオに入れています。

渡邉さん

でも生き抜くための戦略を再構築できたのは、ある程度キャリアを積み経験を重ねてきたから、だと思うんです。今の私があるのは、10数年勤めた会社が私を育ててくれたから。一方で、入社したばかりの新入社員や、満足に学校生活が送れない学生はどうでしょう? いくら不確実な時代だからといって、若い子たちに「自分で考えて自分で行動しようね」「自分の身は自分で守ろうね」と言うのは違うなと思うんです。

小林さん

そうですよね。まだポートフォリオとなるスキルが身についていないときは、先輩や会社と一緒に経験を積む必要があります。

渡邉さん

それは僕の会社のメンバーに対しても同じです。私が一人で生きていくなら、コロナ禍で先が見えない中、家賃を払い続けるより川崎の店舗も日本橋の店舗も手放す方が楽だったかもしれない。会社も畳んで個人事業主として生きていく道を何度も考えました。でも私にはビジョンがある。描いたビジョンを、1人で達成したいのか? 10人で達成したいのか、100人で達成したいのか? 立ち返ったとき、代表であり続け事業を推進していくことを選びました。

想いを継続していくためには、事業という仕組みが必要です。そのためには仲間が必要で、役割分担が必要。次の世代にバトンをつなぐ使命を全うしたいですね。

小林さん

ご自身が大変な時期に、さまざまな人の立場から考え、決断を下された覚悟や姿勢、そしてその言葉は心に沁みますね……。

コロナ禍を、自分のミッション・ビジョン・バリューを考えるきっかけに

小林さん

では最後に、渡邉さんが考える、With/Afterコロナ時代の #はたサバ(働き方戦略)を教えてください!

渡邉さん

ご自身のビジョン・ミッション・バリューを考えること、ですね。コロナ禍をあえてポジティブに捉えるとするならば、スキル的な生存戦略ではなく、「なぜ生きていくのか?」 という自分がこの世に生まれた意味を考えるきっかけができたことです。

もゆる

普段はなかなか考えない本質なことですが、コロナ禍はそのきっかけにもなりましたね。

渡邉さん

自分の存在意義を問うことは、一生答えが出ないかもしれない。悶々すると思います。でもそんな人間っぽい劣等感や悩みに、周囲は共感し手を差し伸べてくれる。人は心の声が聞こえる人と一緒に何かしたいと思うものですから。

小林さん

その言葉を聞いて、答えが出ない問いにも怖がらずに向き合える人がたくさんいると思います。

渡邉さん

今は、こういった話もオンラインでできる時代。ファシリテーターのお二人、視聴者・読者の皆さんと考えを深められる機会があることに感謝ですね。

もゆる

こちらこそ、ありがとうございます。本日も、オンラインで繋がれたこそ、とてもいいきっかけを得られたと思います。感謝です!

 

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