女性の皆さん。
今、働いていて「楽しい!」と思える仕事の割合はどのくらいでしょうか?
私もひとりの働く女性として考えてみると、「楽しい」と感じる瞬間は多々あります。
それでも「結婚したら」「出産したら」と考えると……今と同じことに楽しいとは思えなくなるし、働き方が変わっていくことに多少の不安もあるんですよね。
いつか働くことに「楽しい」なんて言っていられなくなる。
しかし、まだまだ多くの女性が抱えるこんな問題を、仕組み化して解決することで働き方をクリエイトしている企業が長野県上田市にあるんです。
「仲間になりたい」いや、なんなら「ここで働きたい」
思わずそう感じてしまうステキな取組みの様子をご紹介します。
株式会社はたらクリエイト 「はたらくをクリエイトすることで仕事を楽しむ人を増やす」をミッションとし、「これから事業拡大していきたい」「新しいことにチャレンジしたい」という企業向けにBPOサービスを展開。記事作成等のコンテンツ制作業務やカスタマーサポート、Web・SNSの運営業務、バックオフィス業務などを請け負い、パートナー企業の優秀な人材が本来の業務に集中できる体制づくりと事業の継続的な発展を支えている。長野県内に2拠点を構え、就業する約120名のスタッフの多くは子育て中や介護中の女性。 女性の働き方の多様性を広げ、主体的にキャリアを選択・構築していける仕組みづくりが評価され、2019年には第8回日本HRチャレンジ大賞「人材マネジメント部門優秀賞」を受賞。 |
Contents
組織づくりの基本は丁寧なコミュニケーション
「ぜひ取材に行きたい!!!」
とSoloPro編集長 松田にかけ合い、東京から新幹線で1時間30分。ドキドキしすぎて寝る間もなく長野県上田市に到着。
はたらクエリエイトのオフィスは、上田駅から徒歩10分に位置する「海野町商店街」の一角に。
もともとは、女性と社会をつなぐコワーキングスペースとして運営されていたのがはじまりで、今は株式会社にカタチを変え「働く女性を応援する場所」となっています。
さっそく、オフィスに入ってみると、約60名ほどの女性達がそれぞれの業務に取り組む姿が。(※社会情勢によっては在宅勤務に切り替え)
はたらクリエイトでは、皆さんパートタイマーでの雇用からスタートし、短時間正社員からフルタイム正社員へとお子さんの成長など環境の変化に合わせたキャリア形成が可能です。業務内容やスキルに応じて、在宅勤務も可能なのだとか。さらにオフィスの2階には託児所があり、親子で出社する方もいます。
そんな風に聞くと多くの人が「女性に優しい企業なんだな」と思うのではないでしょうか。
しかし「女性に優しい企業」であるイメージが価値感の乖離を生んだ時期もあったと、取締役COO 高木奈津子さんは言います。
高木さん:はたらクリエイトが立ち上がってから3年半くらい経つんですけれども、最初の半年間で50~60人くらい採用していてるんですね。そうなった時に「事業を成り立たせるする」ことに精一杯で、ミッション・ビジョンが言語化できていなかったんです。 託児所があって、時間も変動しながら働けて……となると「女性に優しい会社」というイメージが先行してしまって「なんで子育て中の女性にこんなに責任の重い仕事を任せるのか」とか「そこまで頑張れません」というメンバーも一部で出てきました。そこで、価値観の乖離というかベクトルが揃っていないことに気がついたんですね。 そこからちゃんと言語化しようといってできたのが「はたらくをクリエイトすることで仕事を楽しむ人を増やす」というミッションで、それを実現するためにバリューを定義したり、浸透させるためにワークショップや個別面談をやったり。徐々に徐々に構築して、目線をあわせていったのがこの3年間ですね。 |
一言に「女性に優しい企業」と聞いても、その価値観は一人ひとり違います。やさしい仕事が多いんだろうと感じる人もいれば、自分らしく働ける環境なんだろうと感じる人もいて千差万別。
そうしたズレを経て、現在はミッションである「はたらくをクリエイトすることで仕事を楽しむ人を増やす」を軸に同じ方向を見ていける方を採用しているそうです。このミッションは社内の様々な施策の軸にもなっていて、例えば社内制度の「みんクリミーティング」や「はたクリPON」などにも活かされています。
こうした日々の丁寧な積み重ねがミッションを浸透させ、自然と同じ方向を見て進める組織づくりに繋がっていると感じました。
仕事を楽しむ人が増えれば社会はもっと良くなる
はたらクリエイトでは、「はたらくをクリエイトすることで仕事を楽しむ人を増やす」というミッションの他に
・とにかくやってから振り返ろう
・変化を楽しもう
・DisagreeをAgreeしよう
という3つのバリューと、「ともに成長するチームをつくろう」というサービスビジョンを掲げており、これらを軸に、まずはメンバーから「仕事を楽しむ」ための様々な施策がされています。
社内を案内してもらっているといたるところに掲示物が。メンバー全員が自身の強みから作成した「私の取扱説明書」やオフィスに必要たど感じるものを書き込む「WISH LIST」、全体ミーティングのブレストに使用したふせんなど。特に珍しいなと感じたのは、意見や課題を「仕事をもっと楽しむための種」と捉え、全員で育てていく「はたクリ畑」という施策です。
このアイデアもメンバーからの意見だそうです。解決すると花が咲く様子は見ていてもちょっと嬉しい……!
こうした様々な施策やミッション・ビジョン・バリューの浸透について高木さんはこうお話してくれました。
高木さん:働くことにブランクのある女性たちがキャリアを再構築していく、それ自体がすごくクリエイトなことですが、課題にぶつかりやすいんです。新卒時代にも近いかもしれません。だから最初は丁寧に、「この仕事にはどんな意味があるのか」「お客さんは今どんな状況なんだろう」というところをちゃんと想像して「より良くしていこう」という、一見当たり前のスタンスを、ベースとして育むことを大事にしています。 何か問題が起きたときには、「この課題が解決できたらどうなるのか」「一緒に解決してくことで仕事をより楽しくしていこう」というメッセージを積極的に伝えるようにしているのですが、そこでミッション・ビジョン・バリューが役に立っていますね。 過去の仕事では、自分の力で課題を解決する経験をあまり積めてこなかった人もいるので、ここでは「自分で意見を出していいんだ」「変えられるんだ」という経験を積んでほしいです。そしてその経験が、会社という組織を一緒に育てていく上でもそれが大事なことなんだよということをちゃんと伝える。いっしょに取り組むなかで、一人ひとりが「はたらくをクリエイトしていく」主役であるという意識が育っていけばいいなと思います。 |
経験を重ねることで「自我」が育ち、自分の意志で未来を変えていく。それが仕事の中に喜びや楽しみを見つけることに繋がっているようです。
一日滞在してみて感じたのは、意見交換から勤怠管理まで事細かに「仕組み化」がされていること。でも、決してそれが押し付けるようなルールになっておらず、働く上でうまれる不安や疑問を解決するための手すりのような役割を果たしていること。
こうした柔らかな仕組みがミッション・ビジョン・バリューを身近に感じさせ、働く人同士の間に心地よい関わりを生んでくれるのかもしれません。
ママ、楽しそうに働いてるねって感じてほしい
上田オフィスと佐久オフィス、それぞれで働くメンバーさんにもお話を聞いてみることに。
上田生まれ上田育ちという塩原さんと、就職をきっかけに長野県に移住した手塚さん。それぞれの想いを伺いました。
塩原さん:子どもを連れて遊べる場所を探して「うえだ家族」のサイトを見ている時に、たまたま求人募集を見てはたらクリエイトの存在を知りました。地方にありがちな「新しいものに対する抵抗」はなくて、むしろ自分の求めていたことにマッチしているなという感覚でした。 これまでは私立高校で国語の教師をしていたのですが、今はライターの仕事をしています。ライターとしては未経験でしたが、国語教師の経験を活かしてレギュレーション作成などにも関わったりしています。 文章に関わる仕事をしていて、自分の存在が何かに貢献できていること、書いたものが配信され世に出ることは嬉しいですね。それに、いろいろな人と会話することがモチベーションアップにも繋がっています。 |
手塚さん:前職はブライダル関連の接客業をしていました。知人がFacebookで求人情報をシェアしていたのを見て興味を持ったのがきっかけです。 働き方を変えたいとずっと思っていて、もっと子どもとの時間を持ちたかったのでいいチャンスだなと思いました。未経験の怖さよりやってみたい気持ちが勝っちゃいましたね。 業務は記事制作とディレクションを担当しています。書く仕事も初めてで最初はわからないことだらけでしたが、元々接客業だったこともあり対お客様の部分は元々の強みが活かせていると思います。 難しいことも大変なこともあるけど「働くのは楽しい」って姿を子どもたちに見せたいですね。「疲れた~」って言って帰るより「今日も働いたぞ!」って帰って、「ママ、楽しそうに働いてるね」って子どもたちには感じてほしいです。 佐久オフィスのマネージャーをさせていただいていることもあり、今後は直接仕事で関わらないメンバーへのフォローなど社内に目を向けていきたいです。社内求人制度もはじまったので、やりたいことがあるけど何をはじめたらいいかわからない人のバックアップができたらと思っています。 |
正反対の背景を持つお2人ですが「今までの働き方を変えたい!挑戦してみたい!」という共通点をお持ちでした。出身地や前職に関係なく、はたらクリエイトは感度の高い女性が集まる場となっているよう。
そして、手塚さんのお話にあったように、ママの職場とお子さんの距離が近く、ママの働く姿を間近で感じられるのはお互いに良い影響を与えあっているみたいです。ランチタイムになると階上の託児所からお子さんが降りて来て、一緒に食事をとることができます。
佐久オフィスでは、晴れた日には併設のウッドデッキで親子ランチを楽しむ姿も見られるそう。焚き火やBBQができるこのウッドデッキは、クライアントとの商談でも活用しており、現在はサウナの設置工事をはじめたとか……!!(取材時2020年12月現在)
川のせせらぎも聞こえてリラックス効果も抜群。働く人が楽しめる場、訪れる人も楽しめる場として活躍してくれそうですね。
私も3年前までは地方で働く女性のひとりでした。大学を辞めて働きはじめてからの数年は、肩書もなく名刺を持つこともなく、何となく社会で自分が何者であるかわからない……そんなグラグラと不安な気持ちを抱えて働いていたこともあります。
働く女性の多くが抱える課題は、「働き方」以上に「関わり方」ではないでしょうか。
会社との関わり方、一緒に働く人との関わり方、家族や自分自身との関わり方。こうした「関わり方」に迷って職場を離れていく人もたくさん見てきたし、もちろん自分が迷って離れたこともありました。
はたらクリエイトを訪れて感じたことは、自分の役割が明確になることで「自信を持って働ける」こと。そして、その役割は個性ややりたいことを尊重して決定されていること。
働く女性がずっとずっと求めているのは、自由な時間でも、大きな収入でもなく、こうして「社会に居場所を持つ」ことではないでしょうか。
ママである前に、ひとりの女性であり、ひとりの人なのですから。
この企業の取り組みを、存在を、日本で働くすべての女性たちに知ってほしい。そうして地方の働く女性の可能性が、少しずつ広がっていけばいいなと強く実感する機会でした。
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