「自分らしい文章を書くには?」心の内側を表現する文筆家・小野美由紀さんが見つけた答え

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こんにちは! 恋する旅ライターかおりです。ライターとして毎日文章を綴っている私ですが、これだけ書いていてもなお「自分らしい文章ってなんだろう?」という課題があります。

SNSやブログなど、自分の文章を不特定多数の人に見てもらえる機会が増えた現代。とくにソロで生きる私たちには、WEB上のプロフィールやサービス紹介など、言葉を使って自分の価値を伝えていかなければならない場面が多くあります。だからこそ物書きにかかわらず、自分らしい文章を書く能力が必要になるはず。

そこで今回は、 エッセイのデビュー作となった『傷口から人生。 メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった』やnoteの投稿など、独特な感性が散りばめられた文章で人気を集める、文筆家の小野美由紀さんにインタビュー。小野さんは今年から「自分らしい表現方法を深めるためのワークショップ」も開催しているそう。そんな小野さんに「自分らしい文章はどうやって生まれるの?」と素直な疑問をぶつけてみました。

小野美由紀
作家。1985年東京都生まれ。慶應大学文学部仏文学科卒業。14年12月、絵本『ひかりのりゅう』(絵本塾出版)を出版。15年2月、エッセイデビュー作となる『傷口から人生。~メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった』(幻冬舎)、15年7月『人生に疲れたらスペイン巡礼』(光文社)を出版。韓国版も発売している。
公式ブログ:http://onomiyuki.com/

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感情が揺れ動くものが「素材」になる

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かおり:小野さんは、今年から自分らしい表現方法を深めるためのワークショップを始められたんですよね。「身体を使って書くクリエイティブライティング講座」と銘打っていますが、具体的にどんなことをするんですか?

小野さん:朝から夜にかけて8時間かけて行うんですが、最初の3時間はまったく文章を書きません。身体を使って緊張をほぐしたり、子供の頃の感覚に立ち返るワークをします。後半の時間ではそれぞれがエッセイの題材を探したり、より深くそれが伝わるような表現方法を、3人の講師とともに探っていきます。

最終的には自分のエッセイを参加者に見てもらい、お互いにフィードバックし合います。ただ、その際に「批判はしない」など、独自のルールをいくつか決めています。

かおり:かなり濃い内容ですね。どんな方が参加されているんですか?

小野さん:前回は本業がライターの人が1人もいなくて、会社員の方とか先生とか、職種はさまざまでした。みなさん、noteやブログなどで個人的に文章を書いていて、食べていくためにというより、個人的な内面を表現したい、それを伝わる文章にしたいという欲求を持っていました。

かおり:ライターの人が1人もいないのは意外でした! 実際に講座を開催してみて、参加者の方からどんな反応があったのでしょう?

小野さん:自分の文章に対して見ず知らずの人々からフィードバックをもらう機会をつくることで、普段は他者の視点からフィードバックが得にくい、自身の感性の優れている点に気づけ、また、それを人前で堂々と発表していいのだ! ということを知り、自信を持てたという方が多かったです。

さらに自分以外の参加者の作品と、それができるまでの工程に触れることで、自分の作品や「書くときのクセ」を客観視したり、また、他の方の優れた点を真似したり、取り入れたりすることもできます。

実際、来てくれた方は一人一人感性がまったく違っていて、他者のオリジナリティのある表現に触れることで、逆説的に「自分にしかない感覚」も見えてきます。自分が「何が好きなのか」「どんなオリジナリティがあるのか」を知ることはその後の作品作りにつながります。その人にしかない激しい感情の動きや体験は、書くための素材になる。自分の中にある素材を発見してもらうことが第一歩なんです。その素材を見つけて磨いていくことで、自分らしい表現方法が身につくんじゃないかなと思います。

かおり:激しく感情が動くこと……私の場合は「旅」「恋愛」「人との出会い」かなぁ。でも、恋愛については自分の内面をあんまり書けてないですね(笑)。

小野さん:なんで書かないんですか? それが素材じゃないですか。

かおり:たぶん恥ずかしさがあるからかなって。あと、人にどう思われるかが怖いとか。それらを取っ払ったら自分らしい文章が書けるんでしょうか?

小野さん人からの評価を気にすることは、自分らしい表現をするうえでジャマになると思います。私もずっと社会の目を気にしていて、葛藤がありました。評価を恐れる気持ちは玉ねぎみたいに向いても向いても残るもので、薄くはなるけど消えることはない。でも、できる限りそれを取っ払ってゆく。それは書くこと、人に見せること、フィードバックをもらうことで成立する。その経験を講座でしてもらえればと思います。

人に言えないモヤモヤをブログにしたためていた

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かおり:小野さんが文章を書き始めたキッカケをお聞きしたいです。

小野さん:最初はmixi日記で文章を書いていたんですよ。そこからブログに移行していって。キッカケはなんだったんだろう。私も教えてほしいぐらい(笑)。ブログでは人に言えない自分の内面をさらけ出して書いていました

かおり:私も口に出せない気持ちを日記に吐き出して気持ちがスッキリした、みたいな経験があります。誰かにそれを見せる勇気はなかったのですが。でも、小野さんは最初から自分の内面を世の中にオープンにしていたわけで、それは「物書きとして生きていきたい」という思いがあったからですか?

小野さん:いえ、まったく。自分の文章でお金がもらえるなんて思っていませんでした。私は大学の文学部を卒業してベンチャー企業に就職したんですが、嫌すぎて2日で辞めてしまって……。やりたいこともこれと言ってなかったので、卒業してしばらくはは「まれびとハウス」というシェアハウスに住んでいて、そこで毎週イベントの企画・運営をして生計を立てていました。

ライターを始めたキッカケは、シェアハウスの同居人だったモリジュンヤくんに「greenz.jpで書いてみたら?」って勧められことです。書かせてもらえるなら書いてみようかなって思って。それを足がかりに、いくつかの媒体で1本2,000円ぐらいで記事を書いていました。

かおり:greenz.jpって寄付で成り立っているウェブメディアですよね。新しい試みだなと思って注目していました。小野さんは、作家としてのデビュー作が「ひかりのりゅう」という絵本だそうですが、この絵本はどのような経緯で発売されたんですか?
 
小野さん:東日本大震災のあとに、原発の歴史を子供たちにわかりやすく伝える絵本を作りたいなと思って、プロジェクトを立ち上げました。まずは、クラウドファンディングで資金を集めて電子書籍として出版し、それが話題になったことで出版社の方からお声がけをいただき、紙の絵本としても出版することができました。

この絵本が縁で、雑誌のAERAの記者さんとつながりができて、「ライターやってみない?」と誘っていただいたんです。名の知れた魅力的な方々にインタビューする連載で、おもしろさを感じていたものの、「こうしなきゃいけない」って抑えつけられていた部分も多く、ずっと雑誌のライターを続けていく未来が想像できなくて。そういうモヤモヤした気持ちも、当時のブログにしたためていたと思います。そうこうするうちにライターとしての仕事から遠のいていきました。

人生のなかでボーッとする時間が大切

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かおり:媒体の特性に合わせるために、自分らしさを封印して書いていると、私も苦しさを感じることがあります。

小野さん:窮屈さを感じる人は、本当にライターをやりたいのか、それとも別の表現者になりたいのかをよく考えたほうがいいと思います。

かおり:ただ、心からビジョンに共感できる媒体は、すごく気持ちよく書けるし、取材相手にも喜んでもらえて、こんなに幸せな仕事はないなと思えるんです。だから、ブログや体験記に加えて、気持ちよく書ける媒体でのライターの仕事を増やしていきたいですね。小野さんが一番書いていて気持ちいいのは、どんな文章ですか?

小野さん:今は小説ですね。12月初旬にポプラ社さんから初の長編小説が発売されるのですが、それは2年かけて取り組んできたものなので。ライターとしてだと、現代ビジネスさんで連載させていただいている「愛の履歴書」っていうインタビュー連載かな。愛をキーワードに人の半生を聞くような内容で、インタビューした相手の内面と世間の人々に関心がありそうな社会的なテーマを一致させて、自分の色を出した一つの物語を描けたときは、すごく気持ちいいなって。自分が楽しいと思って書いている文章は、読まれる作品になりやすいですね。

私、文章を書くのがすごく遅くて、一つの記事に半年かかったりもするんですが(笑)。人生のなかにボーとする時間がかなり多い。それが文章を書くために、どうしても必要みたいです。

かおり:余白みたいなものですかね? 私は気の合う友人とくだらないおしゃべりをする時間とか、知らない景色に出会える旅とか、仕事のことを考えない時間を意識的にとっていますね。そうじゃないと、あらゆる感情が薄れていってしまう気がして……。

小野さん:私は体の感覚をすごく大事にして書いていて、ボーッと散歩をしたり体を動かす時間をとるようにしてますね。武術家の甲野善紀先生が言っていたんですが、人間には3パターンのタイプがあって、ものを考えるときに「目」で考える人、「耳」で考える人、「内臓」で考える人がいるって。

目で考えるのは話しているときに頭の中に文字で考えが浮かぶ人、耳で考えるのは自分がしゃべったことを耳で聞いた上で正誤を判断している人、内臓で考える人は自分の内臓に聞いて、腹落ちさせて考えをまとめる人。

私は内臓で考えるタイプなんです。だから、1人で黙って体の感覚に集中する時間が必要なんです。これは、ブログを書き始めてから気づきました。

かおり:初めて聞きました。私は目で考えてるかもしれないなぁ。小野さんは、ブログでは意図して読まれるような文章を書くことはないんですか?

小野さん:ないですね。商業的な文章では、読まれることを意識して書いていますが。とくにWEBの記事って「こうしたらバズる」とか、ある程度の型があるじゃないですか。これまでの経験でバズらせることはできるようになったけど、結局バズっても虚しいなって感じてしまって。なんか、そういう文章に飽きちゃったというところもあるかも。もういいなって。

 

ーー 私はライターを始めてからずっと、平凡な文章になりがちなことをコンプレックスに感じていました。でも、私の中にも人とは違う「素材」があるのだと教えていただき、他人にばかり目を向けるのではなく、自分の内面の素材にしっかりと目を向けてみようと思うことができました。

きっとみなさんの中にも、誰とも違う素材があるはず。その素材をもとに、ひたすら文章を書いて、磨いていく。小野さんも書き続けるうちに、自分のテイストが見えてきたと話してくれました。最初は誰かにオープンにせずとも、自分の内面をぶつけるような文章をどんどん書いていくことが大事なのかもしれませんね。

小野さんの次回のワークショップは、2017年9月17日(日)に行われるそうです。興味がある方は、こちらからご覧ください。

 

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