手放したくないフリーランスの条件は? クライアント側の本音を聞いてみた 【フリーランス協会主催 #IPF2019 】

「理由も告げられず突然契約を切られてしまった…」そんな苦い経験があるフリーランスの方は少なくないはず。継続して仕事を受注するためには、クライアントの気持ちを知ることが欠かせません。そこで今回は、フリーランスと関わりの深い方々に、「手放したくないフリーランスの条件」について語っていただきました。

 

※本記事は2019年11月1日(金)に開催されたイベント「世の中に自分の旗をたてよう!フリーランスのパワーを最大化する一日<Independent Power Fes>」内の「手放したくないフリーランスの条件 ここだけで聞けるクライアントの本音」セッションをSoloProで編集したものになります。

 

<登壇者プロフィール>

スピーカー : テレビプロデューサー/顔ハメパネル愛好家

鎮目 博道(しずめ ひろみち)

92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、AbemaTVのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルのメディアとしての可能性をライフワークとして研究、記事を執筆している。

 

スピーカー : グロービス学び放題 事業責任者/グロービス経営大学院 教員

鳥潟 幸志(とりがた こうじ)

大学卒業後、サイバーエージェントに入社。23歳でビルコムを共同創業。取締役COOとして、新規事業開発、海外支社マネジメント、営業、人事、オペレーション等、経営全般に10年間携わる。グロービス参画後は小売・グローバルチームに所属し、コンサルタントとして国内外での研修設計支援を行う。2016年より、「グロービス学び放題」の事業責任者。グロービス学び放題では、HRアワード優秀賞、日本e-LearningAward 特別賞、HRテクノロジー大賞 ラーニングサービス部門優秀賞、RubyBiz Grand prix 特別賞 など4つの賞を受賞。グロービス経営大学院や企業研修において思考系、ベンチャー系等プログラムの講師も務めている。

グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了

 

スピーカー : 株式会社Waris代表取締役/共同創業者/フリーランス協会理事

田中 美和(たなか みわ)

1978年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現 日経BP社)入社。編集記者として雑誌「日経ウーマン」を担当。取材・調査を通じて接してきた働く女性の声はのべ3万人以上。女性が生き生き働き続けるためのサポートを行うべく2012年退職。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て、2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェント株式会社Warisを創業し共同代表に。フリーランス女性と企業とのマッチングや離職女性の再就職支援に取り組む。フリーランス/複業/女性のキャリア/ダイバーシティ等をテーマに講演・執筆も。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会理事。国家資格キャリアコンサルタント。2018年に出産し1児の母。

 

モデレーター : BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長/AERA元編集長

浜田 敬子(はまだ けいこ)

1989年に朝日新聞社に入社。前橋支局、仙台支局、週刊朝日編集部を経て、99年からAERA編集部。記者として女性の生き方や働く職場の問題、また国際ニュースなどを中心に取材。米同時多発テロやイラク戦争などは現地にて取材をする。2004年からはAERA副編集長。その後、編集長代理を経て、AERA初の女性編集長に就任。編集長時代は、オンラインメディアとのコラボや、外部のプロデューサーによる「特別編集長号」など新機軸に次々挑戦した。2016年5月より朝日新聞社総合プロデュース室プロデューサーとして、「働く×子育てのこれからを考える」プロジェクト「WORKO!」や「働き方を考える」シンポジウムなどをプロデュースする。2017年3月末で朝日新聞社退社。2017年4月より世界17カ国に展開するオンライン経済メディアの日本版統括編集長に就任。「羽鳥慎一モーニングショー」や「サンデーモーニング」などのコメンテーターや、ダイバーシティーや働き方改革についての講演なども行う。著書に『働く女子と罪悪感』(集英社)。

Contents

仕事が途切れないフリーランスの特徴は?

浜田敬子さん(以下、浜田):さっそくですが、みなさんどんなフリーランスと一緒に働きたいですか?

鎮目博道さん(以下、鎮目):やっぱりオリジナルの世界を持っている人ですよね。独自の人脈や深い専門知識を持っている方だと、周りのディレクターのレベルも上がっていくので。あと、年齢を気にせず、フットワーク軽く現場に行ける人はありがたいですよね。

浜田:鳥潟さんはどうですか?

鳥潟幸志さん(以下、鳥潟)自分の意見をはっきり言える人ですね。フリーランスのいいところって、会社の仕組みとか文化におもねらないところ。客観的な視点から的確なアドバイスをくれる人は心強いですね。

浜田:鳥潟さんは主にエンジニアと仕事をする機会が多いと思うのですが、フリーランスから社員になった方はいますか?

鳥潟:はい。昔は社員がなかなか採用できなかったので、フリーランスの方に手伝っていただいていたんですけど。その中から数名正社員になった方がいます。その方々はいまでもコアメンバーとして活躍していますよ。

浜田:フリーランスの方を社員にする際の基準はあるんですか?

鳥潟:3つあるんですけど、1つは実績ですね。その方が過去にどんなことをされてきたかをチェックします。2つ目はコード。これは過去に書いたコードを見せてもらってチームのエンジニアが判断します。3つめはカルチャーフィット。うちはチームで開発することが多いので、周りのメンバーと円滑にコミュニケーションが取れるかどうかが重要です。

浜田:田中さんは、エージェントとして多くの企業の声を聞いていると思います。実際にクライアント側はどのようなフリーランスを求めていますか?

田中美和さん(以下、田中):先ほどチームワークとかコミュニケーションというキーワードが出てきましたけど、ビジネス領域のフリーランスも全く同じだと思います。クライアントと密にコミュニケーションをとりながらプロジェクトを進めていくので、基本的なビジネスマナーがあることが大前提になります。

あと、指名が途切れないフリーランスの方は提案力が素晴らしい。クライアントとの打ち合わせ段階から課題をしっかりヒアリングして、それに対して自分なら何ができるのか提案していく。そういう方はクライアントの期待値を超えることが多いので、仕事が途切れないのだと思います。

仕事を頼みたくないフリーランスの特徴は?

浜田:逆に、「こんな人とは二度と仕事をしたくない」というフリーランスの特徴があれば教えてください。

鳥潟「できる」と言ったことを後になってから「できません」と言う人ですね。売り込みたいがために過度に自分をアピールしてもいいことはありません。仮に契約できたとしても、実力が伴わなければ契約更新は難しいでしょう。

浜田:鎮目さんはいかがですか?

鎮目:テレビ番組ってみんなでつくっていくので、チームワークを大切にできない人だと困っちゃうんですよね。周りに厳しいことをガンガン言って雰囲気を悪くするような人とは基本的に仕事をしたくありません。昔は仮払いの出張費を持ち逃げする人もいたんですけど、そういう人はもちろん論外です(笑)。

あと、セキュリティに関するモラルがない人も困ります。売れっ子のディレクターは番組をいくつも掛け持ちしているので、毎日違うテレビ局にいるんですけど。こっちでリサーチしたネタを他の番組で使われてしまうことがたまにあって。そういうことをされると「また情報を漏らされるかも」という不信感につながりますよね。

浜田:ライターの場合もそうですよね。いろんな出版社に出入りがある人もいるから。

田中:そうですね。私も起業前は日経BPという会社で日経ウーマンとか日経トレンディの記事をつくっていたので、よくわかります。当然いろんな会社の事例を知っていることはフリーランスの強みにもなるので、汎用的な事例を他社への提案に応用する分には問題ないのですが。やっぱりモラルの低いライターさんだとお仕事を依頼しづらいですよね。

浜田:フリーランスエンジニアの場合もいろんな現場に出入りすると思うのですが、鳥潟さんは何か情報漏えい対策はしていますか?

鳥潟:もちろん秘密保持契約は結びますが、うちは性善説経営なのであまり細かいチェックはしないですね。フリーランスの方は結果で示していただくことが全てだと思っています。

どこまでコミットすればいいのか?

浜田:フリーランスの立場からすると、どこまでクライアントの業務にコミットしていいのか迷うこともあると思うんです。例えば、「組織体制や社員の育成について、明らかにこうした方がいいけど、指摘していいのかな」とか。そのあたりは鎮目さん、フリーランスになってみてどう思いますか?

鎮目:さすがに金銭面や経営の部分には口を出しません。ただ、スタッフの教育や番組の雰囲気づくりは自分の仕事だと思っているので、現場でスタッフにあえて厳しいことを言うこともあります。

浜田:逆にテレビ局員の方は元プロデューサーである鎮目さんに気をつかわないんですか?

鎮目:たしかに後輩だった局員に「〇〇さんのおっしゃる通り」とかいうと、「いやいや、やめてくださいよ」と言われたりもします。でも、立場の違いはわきまえているつもりで。委託された業務の範囲はきっちりやろうと思っていますね。

浜田:鳥潟さんはどうですか?社外の立場からいろんなことを言ってもらえるのはありがたいと思うのですが。どこまでフリーランスの方にコミットしてもらいたいですか?

鳥潟:僕は事業を立ち上げた責任者なので、できることならどこまでもコミットしてほしいです。実際にうちで活躍するフリーランスの中にはメンバーの育成やモチベーション管理をしている人もいますし、専門領域の知識を活かして「こうした方がいい」という意見をズバズバ提案してくれる人もいます。顧客やユーザーのためになるんだったら、どんどんコミットしてくれた方が僕はありがたいですね。

単価の高いフリーランスの特徴は?

浜田:やっぱり技術だけじゃなくてマネジメントや商品設計など、できることが多い人は単価が上がっていくイメージですよね。

鳥潟:そうですね。ファイナンスやマネジメントなど、「エンジニアリング+α」のスキルや知識がある人って、ビジネス全般のことをちゃんと勉強されているんですよね。だから会話もスムーズですし、相手の気持ちもわかるんですよ。そういう人は、単価が上がりやすい傾向にあります。

浜田:田中さんはいかがでしょう。先ほど「クライアントへの提案ができる人は強い」というお話がありましたけど、他に単価が上がっていく人の特徴はありますか?

田中:やっぱりオペレーションだけではなくて、戦略立案や企画などの上流工程も含めて対応できることですね。あと、人材育成ができる人も重宝されやすい。たまに「新人社員を半年で一人前の広報に育てる」という項目が業務スコープに入っている案件もあるのですが、こうした企業とマッチングできる方は当然単価が上がっていきます。

最近は人手不足なので、新規事業開発や財務など専門性の高い人って売り手市場なんですね。「正社員で採用が難しい職種はフリーランスでも積極的に活用したい」と考える企業も増えているので、希少性の高い専門性を身につけている人のニーズは今後さらに高まっていくと思います。

いつまでも愛されるフリーランスでいるために

浜田:最後にフリーランスの方にエールをお願いします。

鳥潟:うちで活躍するフリーランスの方は共通して仕事熱心だし、ものすごく勉強家です。そういう人がいるだけで、周りも影響を受けて読書会や勉強会をやり始めるようになるので、学び続ける人はすごく市場価値が高いと思います。

学び続けるためには、ラーニングコミュニティをつくるといいでしょう。いまは専門性の違う人とも簡単に繋がれる世の中になっているので、一緒に学べる仲間をつくって一スキルアップしていくことが大事だと思います。

田中:フリーランスは自己責任の生き方であり働き方。ライフも含めてしっかりと自分をマネジメントしてクライアントに価値提供することが、仕事が途切れないフリーランスの特徴だと思います。

実は私たちが行ったある調査で、メンタルヘルスが良好な人ほど、時間単価が高いことがわかったんです。ある大学の研究でも「自己決定をすることが、幸福度を高める」ということがわかっていて。「どこで」「誰と」「どんな仕事をするか」を自分で決めることができるフリーランスは、会社員に比べて幸福度が高い傾向にあります。

もう1つ、幸福度の高い人って「何を実現したいか」ビジョンが明確なんですね。「子どもと毎日ご飯が食べたいな」とか、大それたことでなくてもいいので、何を実現したいのかイメージしてほしいと思います。

鎮目:これから放送業界でフリーランスになる人は、若い人の言う通りにやれる柔軟性を身につけてください。放送業界ってここ10年くらいでものすごい変化をしていて、文化も目指すべきゴールもつくり方もすごく変わっている。そんな中で、昔のやり方を今の若い人たちに押し付けるのはナンセンス。大切なことは、いかに成功体験を捨てられるかだと思うんですよ。ゼロからもう1度スタートするくらいの気持ちがあれば、いくつになっても愛されるフリーランスになれると思います。

 

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