「変わりたい、でも勇気が出ない」アフリカに移住・起業した『RAHA KENYA』河野リエさんが、本来の自分を取り戻した3つのきっかけ

日本から遠く離れたケニアの地で、河野リエさんが立ち上げたアフリカ布ブランドブランド『RAHA KENYA(ラハケニア)』。

縁もゆかりもないアフリカに移住後、自分には誇れるスキルや経験がないことを痛感し、自信を失っていた河野さん。「今の私に何ができるのだろう?」と自問自答の日々を繰り返す中で見つけた、大切なこと。それは、小さな一歩から始めること。

今では、アフリカ布を通じて、多くの人のチャレンジの背中を押している河野さんがその気持ちに至る過程にも「変わりたい、でも勇気が出ない」という方に届けたいメッセージがたくさんありました。

今回は、そんな河野さんとケニアからオンラインで繋いで、プロの働き方発信サイトSoloPro編集長のもゆるがインタビュー。ブランドに込めた”想い”から、これからの生き方・働き方のヒントなどをお聞きしました。

河野 理恵
1987年 神奈川県生まれ。
就活で60社落ちたことがきっかけで人生の歯車が狂い出す。そこから「何がやりたいのかわからない」と悩みながら、紆余曲折した人生を歩む。2018年にケニアで起業した旦那との結婚を機に移住。
そこで感じた、自分一人じゃ何もできないという無力感から、本気で「自信がない。でも、変わりたい」と思うように、そんな時に、色鮮やかで個性あるアフリカ布を纏った女性たちに出会い、自信をもらったことをきっかけに、2018年、アフリカ布ブランド『RAHA KENYA』を立ち上げる。
松田 然(もゆる)
働くをトトノエル専門家。
2010年に独立・起業。2013年に2社目となる、聴く・書く・伝える「合同会社スゴモン」を立ち上げ代表を務める。ライターになってから現在に至るまで3700人以上を取材しているインタビュアー。特に「働く」に関わる企業ブランディング、採用支援、組織活性などを得意としている。

企業ブランディング構築・支援サービス「TotonouWork」運営代表。プロの働き方発信サイト「SoloPro」編集長なども務める。

趣味は自転車とサウナ。自転車旅しながらリモートワークで47都道府県全てを走ったり、週平均3.7回以上サウナに入っている(サウナ・スパプロフェッショナル)。

ミッションは、「日本の働くをトトノエル」

Contents

コロナ禍で事業がストップ。失意の帰国からの再スタート

もゆる

今回はケニアから繋いでインタビューになりますが、ネット環境は全然問題ないですね! お子さんの元気な声も後ろから聞こえてきます。

リエさん

ネットは全然問題ないですね。子供の声は、昨年日本に帰国した際に生まれた私の子で、このインタビュー中はケニア人のシッターさんに遊んでもらっています。アフリカはシッター文化が定着しているんです。

もゆる

ご出産のために帰国してから、またアフリカに戻られたのですね。世界中がまだコロナパンデミックの中で大変だったと思いますが、いかがでしたか?

リエさん

日本にいるときは実家で子育てをしていましたが、仕事の関係で夫が先にケニアに戻り、私も2021年2月の下旬にケニアに戻りました。こちらで暮らすのに不安感は全くなく、むしろ「やっと戻れる!」という嬉しい気持ちだったのを覚えています。

もゆる

今はとてもイキイキしているのが画面越しからも伝わってきます。

リエさん

振り返ると日本に帰国する前の2020年初頭はとても不安に苛まれていました。当時、妊娠もしていたので、コロナの影響も先行きもわからない状況で……一度帰国した方がいいという結論になり、ケニアで行っていたものづくりが中止になり事業も一時止まってしまったんです。

でも、私自身がアフリカからパワーをいただいて『RAHA KENYA』というアパレルブランドを立ち上げた経緯があったのと、お客様に対してもアフリカ布を通じて挑戦する背中を押したいという想いがあったのに、自分たちが止まっているのは違うよねと考え直すことができたのです。

もゆる

リエさん自身も、ご自身で立ち上げたブランドがパワーの源泉になっているんですね!

リエさん

本当にそうなんです。私がケニアで悶々とした日々を送る中で出会ったのが、カラフルなアフリカ布を身にまとった女性たちで。その話は後ほどしたいと思いますが、またやると決めてからは、現地のスタッフさんに急ピッチで制作を進めていただき、私も日本とケニアをリモートで繋いでオンラインイベントを開催したり、試行錯誤を重ねたからこその再スタートはやっぱり嬉しかったですね。

「誰かと会話するのが怖い」ケニアで感じた無力さ

もゆる

リエさんは旦那さんの仕事のご都合でケニアに移住したと聞いていますが、当時の心境を教えてください。

リエさん

もともと海外に住む願望があったわけでもありませんし、ネットを調べてみてもいまいち現地のことがわからなかったので、アフリカ?マサイ族?くらいの知識しかなく。

その反面、環境が変わることで自分が変わるかもなっていうワクワクや期待などが少しあったのも事実です。日本では、就活の際に60社落ち、周りの目を気にして、やりたいことがわからず転職を繰り返すなど、「周りから認められなければいけない」という想いで悩みながら過ごしてきたのです。

だから夫から移住の話を聞いたときに、「これまで何もなかった自分でも何かできるかもしれない」「どういう新しい生活が待っているんだろう」という気持ちが出てきたんです。

もゆる

不安はあったけど、それ以上にとてもチャレンジングな気持ちも湧いてきたのですね! 実際、現地で暮らしはじめてからはいかがでしたか?

リエさん

今はストレスフリーで生きていて、むしろ、こちらにいる時こそが本当の自分なんじゃないかとさえ思っています。先ほども触れた通り、日本にいる間は「誰かの軸」に従って生きていたことが多かったんですけど、ケニアの人は「自分が幸せか、楽しいか」という自分のことを一番に考えているなぁということが伝わってきて……。この環境で働くうちに先入観も無くなって、自然と、体や心に素直になり、初めて自分の想いが叶い始めた実感がありますね。

もゆる

自分に素直に自然体で生きている感じが声からも伝わってきます。

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リエさん

でも、移住した当初からそうだったわけではありません。むしろ逆で、「誰かと会話するのが怖い」と感じ、やりたいことを見失って2、3ヶ月は家に引きこもっているような状態になっていました。タクシーの運転手や家のガードマンの方との雑談の中で、悪気もなく「なんでケニアに来たの」「あなたは何ができるの?」と聞かれることがあり、移住は夫の仕事で着いてきただけだったので、河野リエという自分の存在に無力感を覚えてしまって……。現地に友達もいなかったので、誰にも相談できず、かなり辛かったのを覚えています。

もゆる

そこから、本来のリエさんを取り戻すきっかけはどんなところにあったのでしょうか?

リエさん

大きく3つの話をしたいと思います。1つは、引きこもり期間に内省をして、まず「自分にできることから始めよう」という思いで行動したことです。私にできる一番小さいこと……それこそUberを頼んだり、電話に出たり、ショッピングモールに買い物に行くことだったり。それができたら次のステップに進んでいく感じで。そこから主人のアドバイスなどをもとにアパレルブランド『RAHA KENYA』を立ち上げたのですが、本当にまずは小さな一歩からのスタートでした。

もゆる

慣れない環境で内省したことで変わった経験はぼくもあります。一番最初が大学を卒業してすぐにカナダで暮らしたときで、同じような心境になりました。

リエさん

大学卒業後に海外に出たんですね!

もゆる

スポーツマーケティングを専攻していたので、スポーツの本場を体感したいという想いから、現地で働けるワーキングホリデービザを取得したんです。でも、英語を喋れたわけでもないし、何かスキルを持っているわけではないし、おまけに人見知り……。最初は何もできない中で心の葛藤はありましたが、スポーツバーに1人で入ってみたり語学学校の先生に思いの丈を話してみたり(翻訳機を片手に)、小さなことを積み重ねた結果、1年間NBAやMLBのスタジアムで働くことができました。と、余談ですが……そのときのことを思い出して勝手に共感していました笑。

「私、なんでもできる気がする!」アフリカからもらったエネルギー

もゆる

先ほどアフリカからパワーをいただいて『RAHA KENYA』というアパレルブランドを立ち上げた話も出ましたが、なぜ手がけた事業がアフリカ布だったのでしょうか?

リエさん

それが2つ目の私を取り戻すきっかけにもつながる話になります。家に閉じこもり悶々としていた時期に、外に出た際に目に飛び込んできたのが、彩り豊かで個性的な柄を持つアフリカ布を身に纏った女性たち。日本の服しか知らなかった私には衝撃でした。彼女たちから溢れる自信に刺激されて布市場へ行き、自分で布を選びました。実際に自分のための一着を作ってアフリカ布のお洋服を身につけてみたら驚くほど前向きな気持ちになれたんです。

小さな一歩を通じて自信を回復していた時期ではあったのですが、さらに「私、なんでもできる気がする!」と胸を張って歩き出したくなるような自信をもらいました。服を通して、自信を持って生きられる人を増やしたい。この想いがアパレルブランドを立ち上げたきっかけにもなりました。

もゆる

アフリカ布って一枚一枚柄が違っていて個性的で、色もエネルギーに溢れていますね。リエさんのストーリーを聞いて、とても興味が湧きました️。

リエさん

ありがとうございます。最後に3つ目の自分を取り戻すきっかけは、アフリカで旅をはじめた時です。最初はどうしても現地の人への恐怖心があったのですが、ケニア、ウガンダ、ルワンダなどを旅して回る中で、私が自己開示すれば拙い言葉でも自然とコミュニケーションが取れるなっていうことがわかったんです。それからは、アフリカの人に対する先入観がなくなり、「何も恥ずかしいことはないんだ」「今の自分自身が全て正解なんだ」と、どんどん素の私を見せていけるようになったんです。

もゆる

旅をしながら気づいたんですね。ぼくも仕事で悩んでいたときに自転車旅に出たんですが、そこで出会った人々を取材したことが、より自分らしく生きるきっかけになったので、すごくわかります。その後47都道府県全て自転車で回ってしまったので自由になりすぎたかもしれませんが。

リエさん

笑。旅は元気になりますよね!

発信することで、全てが「自分ごと」になる

もゆる

リエさんはSNSでもいろいろと情報を発信されていますね。

リエさん

リエさん:はい。今でこそTwitterなどのSNSでしっかり発信しているのですが、移住前は個人での発信は鍵アカで交流どころじゃなかったんです(笑)。

最初は何を発信したらいいのかわからず、ケニアの景色とか可愛い小物とかをちょっとずつ発信するようになって。時間をかけるうちに、140字で自分の思いを伝えるということにハマってしまいました。たまたまですが、自分との相性が良かったんだなあって思っています。

もゆる

まだ本格的に情報発信をはじめて1-2年だと思いますが、Twitterのフォロワーさんも1万人以上いますね。アフリカと日本、距離があっても発信することで想いが伝わりますし、逆に何もしないとリエさんのことを見つけられなかったかもしれません。

リエさん

発信の面白さに気づいてからは、自分の想いを言語化することで全てを「自分ごと」で捉え始めました。ブランドを立ち上げて大きくしていくにあたってもTwitterにはお世話になったので、本当にはじめて良かったです。

また、自分の想いを発信しながら、小さく行動を積み上げることで、現在のブランドパートナーであるテイラーさんをはじめ、何人もの仲間と出会い、より多くのお客様に商品を届けることができるようになりました。

実際にアフリカ布の服を着用していただいたお客様からは「元気が出ました、頑張ります!」などとメッセージをいただいたりもして、「自分が長年届けたかった想いが届いているな」って確信を持ち始めています。

「一歩を踏み出す」きっかけをつくる存在でありたい

もゆる

最後に、この記事を読んでいる読者の皆様に、コロナ禍の大変の時代だからこそ届けたいメッセージがあればお願いします。

リエさん

そうですね……私の場合「アフリカという特別な環境だったからでしょ!?」と捉える方もいるかと思います。でも、日本でもどこでも、環境のこととか取っ払って、もっと図々しく生きていいというメッセージを送りたいですね。

そのための手段の一つとして、「付き合う人を変える」っていうのは大事だと思います。今まで会ったことのない人から刺激を受けて、きっかけが生まれたり、その繋がりが将来につながることもあると思うので。

もゆる

コロナ禍で人とリアルで会いづらくなりましたが、逆に今回リエさんとアフリカからもオンラインで会話できるように、人とつながるハードルは低くなりましたよね。

リエさん

そうですそうです。今ならオンラインイベントやコミュニティもありますし、お互い背中を押しあって切磋琢磨できる環境を作ったり参加することが大事。自分を出せる人間関係が築けると、小さな一歩も踏み出しやすいと思います。

ただ、せっかく環境を変えても、やっぱり最後に変わるか変わらないかは自分次第です。本当に変わりたいなら、できない理由じゃなくて、できる理由を探すってことは大事だと思います。私も驚くほど小さなことから始めました。そうやってできることから、他の人の目を気にせずに自分なりの幸せを一番に突き詰めて欲しいです。

もゆる

まずは自分を満たすこと。そのための小さな一歩となる変化を自分に取り入れてみることなどはすぐできそうですね。リエさん自身のこれからのチャレンジは何ですか?

リエさん

『RAHA KENYA』は日本だけでなく、ケニアにいる人たちとも一緒にで成長できるブランドにしてきたいと思っています。職人さんの労働環境の整備や新たな雇用創出など課題は尽きないので、自分ができることを模索しながら一つ一つ進んでいきます。

あと、個人的にもクラウドファンディングに取り組んだりと、どんどん新しい挑戦もしています。これからの河野リエと『RAHA KENYA』にもぜひ注目していてください!

>挑戦中のクラウドファンディング

取材/もゆる 文/伊藤達洋・もゆる 編集/もゆる 写真/河野リエさん提供

 

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