自分の想いを仕事にできる時代に、社会課題領域で“活躍人材”になるには

「自分のスキル・経験を活かして、社会貢献領域に携わりたい」

ぼんやりとでも、そんな想いを抱いている人は、少なくないのではないでしょうか。

しかし、SDGsなどで以前より身近になってきたとはいえ、一部の意識の高い人たちだけが関わっている小難しいイメージや、何から手がけていいかわからないという方もいると思います。

そこで今回は、社会課題解決に特化したPRやブランディングや企画を支援している株式会社morning after cutting my hair取締役、中西 須瑞化さんに、この領域で“活躍人材”になるためのヒントをお聞きしました。

誰もが今それぞれが持っているスキルや知見を活用できる分野である反面、ある程度の準備をおこなうことは大切とも語る中西さん。自分の想いを仕事にしたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

中西 須瑞化(なかにし すずか)
株式会社morning after cutting my hair取締役・PRライター/文筆家大学在学時に「生きる選択肢を示せる大人になりたい」と休学し、いろいろな生き方・働き方をしている大人たちへ会いにいきながら全国で多数のプロジェクトの企画・運営に参加。独自の哲学と、思想に寄り添い言語化する力を買われ、一般社団法人防災ガールで団体解散までの事務局長を担う。フリーランスとしてPRライター・イベントディレクター・小説家としても活動し、2018年2月からは株式会社morning after cutting my hairの発起人の1人として、「人の心が動き続ける社会」をめざし、社会課題解決に特化した企画やPR、人材育成事業を行なう。言葉の力で、人を生かすひとであり続けたい。

多くの人が「社会課題解決」の領域に関わっていく未来に向けて

——SDGsなどを耳にする機会が増え、企業によってはアクションを起こし始めているところも増えてきた印象があります。社会課題解決を主に扱ってきた中西さんから見て、ここ数年で感じている変化はありますか?

中西:そうですね。もともと日本では、1995年の阪神・淡路大震災をきっかけにNPOの活動が注目されるようになりました。法整備がしっかりとされるようになったのもその頃からです。また、3.11の震災の時にもボランティアや寄付が身近なものとして注目されるようになったこともあって、「NPO=無償ボランティア、慈善活動」だと思われていた傾向が強かったように思います。ただここ数年、SDGsなどの世界的な取り組みの促進もあってか、ビジネスセクターとソーシャルセクター(※1)の距離はとても近くなっていると感じます。

(※1)社会課題の解決を目的としたNPO・NGO・ソーシャルベンチャーの総称

——営利企業もSDGsへの取り組みを始めたりしていますよね。

中西:はい。営利企業がそうしたアクションをとるようになり、社会課題というものに目を向け始めたことはもちろんですが、非営利組織の側も、きちんと事業収入を得て団体活動を継続させていくことへの意識が高まっているのではないかと感じます。ソーシャルインパクトという言葉がありますが、「良いことをただやっている」だけではなく、「その活動が本当にどれだけ社会を変えているの?」ということを自らも計測していくべきだと考える団体も増えているのではないでしょうか。会員からの寄付だけで成り立つモデルではなく、しっかり事業を推進していこうというところも、ここ10年ほどで増えているのかなと思います。

——中西さんの会社も、株式会社として営利事業をしながら社会課題解決に携わっている形ですよね。

中西:わたしが所属している株式会社morning after cutting my hairは、社会課題解決に特化したPRや企画、人材育成の会社です。クライアントさんは営利企業もいれば非営利企業もいらっしゃいますし、行政機関やアーティスト・クリエイターと連携した企画もあります。今は2025年の大阪万博に向けた取り組みも何かできないかと検討中です。

——なぜそのような形の会社を作ろうと思われたんですか?

中西:代表の田中と私が発起人なんですが、もともと私たちはこの会社の前に一般社団法人防災ガールという非営利団体を運営していました。法人化してからの5年に加えて、任意団体の時代も含めて、いわゆる「ソーシャルスタートアップ」の世界でゴリゴリ活動させていただいていたんです(笑)。

防災の領域は当時若者のプレイヤーが全然いなくて、男性比率も高く、命に関わる領域であることもあってかとても淡々とした、小難しいイメージの強い状態でした。だけど本来は、命に関わる領域だからこそ、情報をたくさんの人に届けなければならないし、日常の中に溶け込ませるような形で親しみのあるものにしていくべきなんじゃないか。そう思って、私たちは当時流行っていた山ガールや森ガールのようなキャッチーさで注目してもらえるように、「防災をもっとオシャレでわかりやすく」という活動から始め、認知度を高めた上で「これからの防災の話をしよう」とブランディングやコピーを一新し、旗振り役となって後任の若手プレイヤーを育てた上で2020年3月に有機的解散を選びました。

2013年から7年間活動し、2020年3月11日に有機的解散を選んだ一般社団法人防災ガール

——ソーシャルセクターでのご経験があったんですね。

中西:気づけば割と長くその領域にいて活動をしていく中で、営利企業・非営利企業を問わずたくさんご相談をいただいたり、お話させていただく機会がありました。そんな中で、「良いことをしているのに伝わっていない」人や団体と、「良いことをしているっぽいのに全然本質的じゃない」人や団体がいて、この二つが大きな課題なのではないかという印象を受けたんです。それで、「社会課題解決に特化したPRやブランディングや企画を支援する」というところを自分たちは手伝えるのではないかと思い、会社をつくりました。

——人材育成にも力を入れようと考えたのはなぜでしょう?

中西:もともと、防災ガールの頃から私たちの団体は「しっかり稼ぎ、社会を変えていくためのアクションを続ける」ということや、「自分たちの人生を犠牲にしない」ということを大切にしながら活動していました。最初の頃は「え、一般社団法人なのにお金をとるの?」と言われたりしたこともありましたが、そんなの当たり前のことですという感じで(笑)。

ただ、そうやって社会課題解決を仕事にしていると、よく「社会課題解決に取り組みたいけれど、どうすればいいかわからない」「興味はあるけれど、稼げないイメージがあって取り組めない」といった相談を受けることもありました。また、防災ガールの頃も今も、一緒に活動したいと応募してきてくださる方との面談などをおこなう時に、「あぁ、もう少しこういう視点があればな」と感じることと、「できますと言われていたスキルや能力が望む方向性やレベルとは異なっていた」ということが多々ありました。身近なソーシャルセクター の仲間に聞くと似たような悩みを持ちながらも人材を渇望している団体がいたりして、貴重なマッチングの機会を逃していることが多々あるのではと感じるようになったんです。

——そこで生まれたのが、「社会課題領域で活躍する“これからの活躍人材”になるための教育プログラム」ですか。

中西:はい。今後、ESG投資が日本でも普及するであろうことや、SDGsの達成へ向けた動きが加速することなども踏まえ、おそらく多くの人が「社会課題解決」の領域に関わっていくことになると思っています。単純に市場価値が増すだろうという期待から参入をはかる企業さんなどもいると思いますし、個人でも若い世代は特に社会貢献意欲が高いという調査結果もありますよね。組織・個人を問わず、これからは良くも悪くもソーシャルセクターとビジネスセクターの垣根は溶けていくんだろうと思っています。

——このメディアSoloProを運営する合同会社スゴモンでも、「働きがいも経済成長も」というSDGsの目標達成に向けた動きを予定しています。社会全体で目標へ進むのは良い変化ですね。

中西:おっしゃる通り、とても良い変化だと思います。ただ、一方で心配しているのが、「ソーシャルマインド」を醸成せずにこの領域に入ってきてしまうことで、意図せぬ炎上や加害に繋がってしまう可能性もあるということです。SDGsウォッシュといった言葉も聞いたことがあると思いますが、「実態が伴わないのにSDGsに取り組んでいるように見せかける」といった、本質的な課題解決への理解がないままにおこなった活動は、今はもうすぐに見抜かれてしまう時代です。最近でもいくつかSNSで炎上しているものを見ましたが、「気持ちとしては悪意は無かったんだろうな」と思えるものもあり、だからこそひどくやりきれない気持ちになりました。

大企業や広告代理店など精鋭のプロフェッショナルが集っておこなわれているプロジェクトであることも多く、クリエイティブはしっかりしていたり、波及力はあったりする場合もあるからこそ「誰か教えてあげられる人がいたら」「誰か『ちょっと待って』と言える人がいたら」……と、本当に悔しくて。素晴らしいスキルを持っていたり、資金力があったり、コネクションがあったりする人たちが参入してくれるのは「社会課題の解決」にはとても良い変化なのにも関わらず、このままでは「入り口を間違えたばかりに失敗が繰り返される=学習性無力感が増して、社会課題そのものに対する全体の意識が下がる」というようなことが起こってしまうんじゃないかと危惧しました。

幸いにもわたしたちはソーシャルセクターの感覚や気持ちもわかりますし、それでいてビジネスの視点も持って活動をおこなってきました。だからこそ今できることがあるのではないかと思って、自分たちができる範囲・できる形で、「社会課題領域でもスキルや経験を活かしたい」という人たちに向けて「活躍人材になるための準備」をまずはしっかりとおこなえる場を作りました。

社会課題領域でスキルを活かす“これからの活躍人材”になるためのプログラム「Leaping Rabbit」(8/1まで第3期生募集)

捉え方を変えると、誰もがソーシャルセクターのプレイヤーになれる

——このメディア「SoloPro」も、「働きがい」というものをメインのテーマに置いています。楽しく、働きがいをもって働くためのひとつの選択肢として、副業や複業があったり、場所を問わず働くスタイルがあったり。企業さんのブランディングも、その会社で働く人たちにとっての働きがいの向上に繋がるものとしておこなっています。その中のひとつに、「社会貢献」のような文脈があってもいいですよね。

中西:本当にそうだと思います。今後、企業には「従業員満足度」ではなく「従業員幸福度」を重視することが求められるようになるのではないかといった予測もありますよね。実際、幸福度が高い人ほど健康状態も良くパフォーマンスが高いという研究結果も出ていたりするそうで、企業にとっても個人にとっても大事な観点なんだろうなと思います。困っている人が笑顔になってくれるとか、誰かのありがとうが聞けるとか、自分が役に立っていると感じるとか、そういう喜びを得ることは、社会貢献に限らず「働く」ということの中でシンプルながらとても大切な要素だと思います。

——単純に嬉しいですもんね、誰かの役に立てたり、「ありがとう」の言葉が聞けるのは。

中西:はい(笑)。それに先ほどお話したプログラム「LeapingRabbit(リーピング・ラビット)」の卒業生には、学生時代に社会課題に関わる研究をしていたけれど社会人になってから疎遠になっていて、けれどやっぱり心の中に情熱があって……という長年の想いを果たすために参加してくださった方もいました。

その方は今、お仕事を変えてご自身の興味関心分野で働くために活動されていて、大変だとは思いますがとても清々しく前を向かれているなと思います。ほかにも、ずっと営業職をやっていた方が「本当は自分はフォロワータイプだった」と自覚して、元来の自分がやりたかったサポート側の部署に異動し、コロナ禍で困窮されている生産者さんをサポートしに奮闘されている事例もあります。働きがいという意味では、自分自身の課題意識にダイレクトに紐づく社会課題解決の領域はとても良い分野ではないかと思います。

Leaping Rabbit受講生の声や変化はnoteのインタビューでも公開している

——一方で、やっぱりいまだに「SDGsは大事だと聞くけどよくわからない」というような方も多いです。社会貢献をどうやって仕事にすればいいの?という方も多いのかなと思うのですが。

中西:SDGsは世界的に達成すべき目標を定めたものではありますが、実際のところ社会課題って「正解が無い」ものだと思うんです。

たとえばジェンダーの話題は最近SNS等でもよく目にしますが、女性の権利向上や男女平等がまったく話題にならず「当たり前のこと」として受け入れられていた時代もあるわけです。男性だろうが女性だろうが、生きてきた環境によっては「問題だと思わない」と言う人もいるでしょうし、個々人で意見も考え方も、それぞれが望む理想も異なると思います。時代や環境や個人の思想によって、「社会課題」の見え方は変わり、たとえ一度設定された最適解があったとしてもそれもまた変化していく。そんな答えのない、主観的なものが「社会課題」の中身ではないかとも感じます。だけどだからこそ、「それぞれが幸せに生きることを阻むもの」を社会課題として捉えると、誰一人として無関係な人はいないとも言えるのかもしれないと思うんです。

——なるほど。ひとりひとりの考えや意見が重要だということですね。

中西:営利企業だとか非営利企業だとか、公的機関だとか民間だとか、そういう立場や所属で区切られた誰かが扱うものではなく、ひとりひとりが自分自身の中に持っている価値観で考えていく、アクションをとっていくということが本質ではないかと感じます。そう考えると、今それぞれが持っているスキルや知見を活用しながらどんな貢献ができそうか?というのは少し想像しやすくなるんじゃないでしょうか。デザイン、ライティング、営業、経理、プロマネ、広報……と、仮に今まったく別の業界で活躍されている方であっても、そうしたスキルを持ってお手伝いできる団体さんや組織はたくさんあると思います。

それに「仕事」以外でも、たとえば買い物をする時に何を選ぶのかとか、選挙で誰に投票をするのかとか、目の前で発せられた悪口をどうするのかとか、そういう日常の中にあるものが「社会課題」であり「社会課題解決」だと思います。だから、マインドさえ醸成すれば誰もがソーシャルセクターのプレイヤーになるんじゃない? なんて思ったりもしますね(笑)。

——日常の中にあるものが「社会課題」。だからこそ、誰もが本当は関わっているし、興味があるならばより深く関わっていくこともできるというわけですね。

中西:はい。今は自分の想いを仕事にできる時代だと思いますし、社会課題領域だってもちろん仕事にしていくことも深く関わっていくこともできると思います。ただ、持続可能な形で実現するためには、ある程度の準備をおこなうことは大切です。社会課題領域に関心がある方は、今はさまざまなプログラムやスクールがあったり、インターンの募集があったすると思うので、ぜひ自分に合う準備の仕方を探してみてほしいなと思います。弊社がおこなっている「Leaping Rabbit」もまさにそうした「ソーシャルセクターでスキルを活かしていくための準備ができる場所」として設計していますので、興味がある方は一度note等を覗いてみていただけると良いかもしれません。

ここから、自分にとっての「社会課題」を考える機会に

働き方も生き方も、その真ん中には「幸福」を置いて選択していくことができる時代になりつつあるのかもしれません。あなたの人生を何に費やしたいかと考えた時、どんな人と、どんな場所で、何のために働いていきたいと思うのか。

自分にとっての幸福とは何かを考えることで見えてくる、あなたにとっての「社会課題」について一度考えてみることは、ご自身の「働き方」や「人生」を見つめ直す機会にもなるのかもしれません。

 

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