記事のポイント ✅遊びの中に、社会課題の解決・地域のニーズを組み入れることで仕事になっていった ✅オンラインの場づくりは「コミュニケーションの量を増やすこと」が大事 ✅場づくりに挑戦するには3つのステップがある |
新型コロナウイルスの影響で在宅ワークやオンライン上での仕事が増える中、自分のスキルとIT・テクノロジーを掛け合わせてどんなことができるのか ──。これからの働き方について想いを巡らす方もいるのではないでしょうか?
そこで働き方メディア「SoloPro」では、毎週月曜日21時〜「オンライン×働き方・スキル」をキーワードに、いろいろな業界の第一人者やチャレンジャーに、公開インタビューを実施。
「After/Withコロナ時代の働き方サバイバル戦略」略して、#はたサバ
7月13日(月)のゲストは、株式会社ここにある代表取締役 / 場を編む人 藤本遼(ふじもと・りょう)さんです。
兵庫県尼崎市を中心に「尼崎ENGAWA化計画」や「カリー寺」といった場づくりの実践を重ねてきた藤本さん。2020年4月2日にはグリーンズ出版より書籍『場づくりという冒険 いかしあうつながりを編み直す』をリリースするなど、場づくりに関心のある方、必見です! 今回はそんな藤本さんを働き方メディア「SoloPro」編集長の松田然が公開インタビュー。
数々のイベントでファシリテーターを務めているオンラインファシリのプロ 小林 千夏さんも招き、オンライン×場づくりをメインテーマに、藤本さんが考えるWith/Afterコロナ時代の働き方やキャリア、そして場づくりを行う上で求められるスキルをお聞きしました。
【ゲストプロフィール】 ■藤本遼さん 株式会社ここにある代表取締役 / 場を編む人 1990年4月生まれ。兵庫県尼崎市出身在住。「すべての人がわたしであることを楽しみ、まっとうしながら生きていくことができる社会」を目指し、さまざまなプロジェクトを行う。「余白のデザイン」と「あわい(関係性)の編集」がキーワード。 現在は、イベント・地域プロジェクトの企画運営や立ち上げ支援、会議やワークショップの企画・ファシリテーション、共創的な場づくり・まちづくりに関するコンサルティングや研修などを行う。さまざまな主体とともに共創的に進めていくプロセスデザインが専門。代表的なプロジェクトは「ミーツ・ザ・福祉」「カリー寺」「生き方見本市(生き博)」「尼崎ENGAWA化計画」など。 |
【インタビュアー】 ■松田然(もゆる) 働くをトトノエル専門家。 2010年に独立・起業。2013年に2社目となる、聴く・書く・伝える「合同会社スゴモン」を立ち上げ代表を務める。ライターになってから現在に至るまで3700人以上を取材しているインタビュアー。特に「働く」に関わる企業ブランディング、採用支援、組織活性などを得意としている。 企業ブランディング構築・支援サービス「TotonouWork」運営代表。プロの働き方発信サイト「SoloPro」編集長なども務める。 趣味は自転車とサウナ。自転車旅しながらリモートワークで47都道府県全てを走ったり、週平均3.7回以上サウナに入っている(サウナ・スパプロフェッショナル)。 ミッションは、「日本の働くをトトノエル」 |
Contents
まちで遊んでいたら「場づくり」が仕事になった
「場」をつくる仕事をしています。私の出身地である兵庫県尼崎市を中心に、イベント・ワークショップの開催や、空間のリノベーション、まちづくりに関する研修・地域プロジェクトの企画運営を手がけています。
”場づくり”をキーワードに、活動の幅が多岐にわたっていますね! 具体的にはどんなプロジェクトを手がけてきたのでしょう?
例えば、「カリー寺」というお寺でカレーを食べる企画を立ち上げました。尼崎市にある浄土真宗のお寺・西正寺(さいしょうじ)で、ご住職と地域の人たちや檀家さん、関心のある方を巻き込み、年に一度開催しています。「カリー寺」以降、さまざまな企画や活動、取り組みが西正寺に持ち込まれて。今では、地域の寄り合いのような「場」になっていますね。
モデレーターの小林です。お寺のコミュニティづくり、素敵ですね……!
2017年には、障がいがあってもなくても楽しめるフェス「ミーツ・ザ・福祉」を尼崎市の野球場などで開催。当日は70店舗のブース出店、20組のステージパフォーマンス、音楽ライブや体験コンテンツなどで賑わいます。障がいがあってもなくても、それぞれの違いを受け止めながら活かしあう場になれば、という想いで企画開催しました。
フェスを楽しみながら、障がい福祉への理解も高まりそうですね!
藤本さんと最初にお会いしたのはgreenzのコミュニティの学校でしたが、そのとき「まちで遊んでいたら、場づくりが仕事になった」という言葉をおっしゃっていたのが印象的でした。
仕事と遊びの境界線が緩やかなんですよね。現在動かしているプロジェクトは20個くらいあるんですが、そのうちの1割から2割は、利益が出なくても面白そうだからやりたい! と思えるものにしています。そうじゃないと、自分も面白くなくなっちゃうから。
なるほど。
カリー寺は、僕がカレーが好きだから、という理由で始めた部分もあるんですよ。7月開催なんだけど、暑い時期だからこそみんなでカレーを食べよう!って(笑)
すごい(笑)そもそもどのような経緯で「場づくり」が仕事になったのですか?
20代前半の頃、生まれ育った尼崎市で遊び場をつくりたいと、趣味でイベント企画を始めたのがきっかけです。尼崎市は、大阪や神戸にもすぐ行ける立地の良い地域。でも他の都心部に出ず、地元で遊べほうが楽しいのでは? と想いがありました。そこでNPO法人に勤務をする傍ら、空いた時間でイベント企画をすることにしたんです。だんだんと活動の幅と規模が広がり、趣味として遊びでやっていた“場づくり”が、仕事になっていきました。
そういった経緯だったんですね! イベント企画とは、具体的にどんなことをしていたのでしょう?
最初は地域のいろんな場所を借りて、交流会や飲み会を開きました。尼崎市は銭湯が多いので、銭湯の番台のスペースを借りて飲み会を開いたり、神社の一角を借りて交流会をしたり。そこで出会った仲間と、商業施設の空きスペースを借りて改装し、地域の人が使える空間をつくったりしていましたね。
遊びを仕事に、というと憧れる人も多いと思うんです。実際、お金をいただくのと、ただの趣味としてやるのではどう違うのでしょう?
遊びの中にも、社会課題の解決・地域のニーズを組み入れて企画を立ててきました。お金をいただけるようになった要因はそこにあると思います。「地域の人・仲間が困っていること」×「やってみたいこと」を掛け合わせて、場をつくることは意識していましたね。
場づくりとは、「場を編む」こと
藤本さんは、なぜ、「場を編む人」を肩書にされたのですか?
「編む」という言葉に出会ったのは、「舟を編む」の小説がきっかけです。すごく美しい表現だと感じました。「場をつくる」とは、すでにあるモノ・コト・歴史、人といった素材を「編集」し、より多くの人に伝わりやすく、関わりやすくする仕事です。
縦糸と横糸を編むように、組んでいくイメージですかね?
そうですね。新しく0→1でつくるのはなく、今あるものを活かす。そんな想いで「編む」という表現を肩書きにしました。
だから、藤本さんの会社の名前も株式会社ここにある、なんですね。
私は、「問話(といわ)デザイン」を肩書きに活動していて、場をつくる時は「問」を置いて「話しあえる場」を作ることを意識しているのですが、藤本さんは場をつくるときに、具体的にどのようなことを意識されていますか?
どんな人でも参加しやすいように、入り口を広くすることは意識していますね。あと、おっしゃるように「問い」も、大事だと思います。でもいきなり「この社会問題についてどう思いますか? 」と問いを投げかけられても、興味を持ちづらい人もいると思うんです。
たしかに。
その分野への関心がない方にも、興味を持ってもらうには「なんか面白そう! 」「おしゃれ! 」と感じてもらえる入り口を用意することが大事。そうして実際に「場」に参加したときに「問い」が見られるようなデザインを心がけています。
たしかに、「カリー寺」や「ミーツ・ザ・福祉」も、お寺や福祉に関心がなかった人が、「面白そうなイベントに顔を出したきかっけで、興味を持った!」なんてこともありそうですね。参加者やプロジェクトメンバーを巻き込むため、他に意識していることはありますか?
自分が楽しそうにすること、ですね。
楽しそうな雰囲気に、自然と人は引き寄せられますもんね。
あとは、自分から関係性をつくりにいくこと。Facebookページに「いいね!」を押してくれた人には、できるだけメッセージ送ってみる 。なにかの機会に名刺をもらったら自分から連絡をする。小さなことですが、自分からアプローチをかけた先に、仲間になってもらえる方との出会いがあると思うんです。今まで、声をかけまくってきた自負はありますね。
オンラインでの場づくりでは、相互的なコミュニケーション量を増やす
新型コロナウイルスの影響で、場づくりもオンラインへと変化したのではないでしょうか?
そうですね。でもオンラインになっても、大事にしていたことは変わってないです。
大事にしていたこと、とは?
参加者と「相互的な関係になる場づくり」を意識しています。主催者や登壇者が一方的に話すのではなく、チャットを活用して皆さんの声を拾ったり、チェックインで喋ってもらったり、感想をシェアしてもらったり。オンラインではそれをより意識しています。
一方的なメッセージではなく、参加者が入ってこられる機会をつくっているんですね。
LIVEでやる醍醐味は、その瞬間に起こる人との関わり合いだと思うんです。コミュニケーションが一方的なら、それぞれが好きなタイミングで観られる動画で十分。「場づくり」においては、参加者とのやり取りの中で起こる化学反応を、どうしたら上手く捉えられるか? が大事になってきます。
オンラインだと雑談をするのも難しいのかな、と思うのですが、コミュニケーションを取る上でのポイントを教えてください!
コミュニケーションの「量」を増やすこと、ですね。主催しているオンラインスクールでは、イベント15分前にzoomを開けて雑談できる時間をつくったり、終了後もしばらく参加者同士で喋れる時間をつくったりしています。
遊びや余白の時間があると、コミュニケーションの量も増やしやすいんですね! オンラインになっても大切なことは変わらない、とおっしゃっていましたが、逆に新型コロナウイルスの影響で変化したことはありますか?
拠点を、新しく淡路島にも構えました。
拠点を増やしたんですね! すごい! その背景は……?
いまの時代は、自然との関わりを見直したほうがいいのではないか、と感じています。暮らしている尼崎市は、人口45万人の工業都市なので、自然に触れる機会が少ないです。もし淡路島のような自然とより近い場所に身を置いたらどう変わるのか? 試してみたくなりました。
なるほど。
あとは、人口の多い尼崎市だから場づくりができたんじゃないのか? という思いもあって。より人口の少ない地域では、どんな場づくりができるのか? どうやって他の地域と接点をつくるのか? 挑戦しようと、2020年の6月からプロジェクトを開始しています。
「ここにある」今、この瞬間を大切に
最後に、この企画で皆さんに聞いている質問ですが、藤本さんが考える、With/Afterコロナ時代の #はたサバ(働き方サバイバル戦略)を教えてください!
数年先を見据えた計画を立てず、今を大事に生きることが僕にとって働き方戦略ですね。
あえて計画を立てない! それ自体が戦略ですね。でも、その意図は?
未来を描くことは大事だと思う一方、人間の価値を損なう部分もあるのではないか? と思うんです。社会の変化はどんどん早くなっているし、そもそも自分が何年先まで生きているかわからない。
それなら、今この一瞬、一瞬、出会った人たちと一緒に何ができるだろう? と考えて生きたいんです。本当に大切なのは、「ここにある」それは社名にも込めた想いです。
たしかに、時代の変化が早い現代社会では、「今」をどう生きるか? に目を向けることが自分らしく生きるヒントになりそうです。でもその一方、社会だと、目的や目標から逆算して、今をどうするかを決めることが大事とされてる部分も大きいように感じます。
そうですね、なので既存の価値観に揺さぶりをかけたい。会社にいると、目的はなに? 目標はどこにあるの? と聞かれることも多いと思うんですよ。でも、寄り道したときに面白いものを見つけることや、今見えていない価値に気づいていく楽しさもあると思うんです。
まさに、藤本さんの「場づくり」は、お寺でカレーを食べて楽しめたり、障がいがあってもなくてもフェスを一緒に楽しめたり、知らなかった、見えていなかったという価値に気づかされることが多そうです!
あとは、計画を立てないからこそ「問い続ける」「固定化しない」ことは大事にし続けたいですね。こうすれば上手くいく、きっとこれが正解だ、と思わないこと。既存の価値観を揺さぶり続けないと、次のステージに行けませんから。過去に執着しないプロジェクトづくりをこれからも意識したいです。
ありがとうございます! 最後に視聴者(読者)に向けてメッセージをお願いします。
最後までこのイベントを見てくださった方、途中から見てくださった方、ありがとうございます(そして、この記事をここまで読んでいただいた方、ありがとうございます)。
これから場づくりに挑戦したいと思っている方は、まず最初の一歩目として「興味のある場・イベント」に参加してみてください。そして出会った参加者とコミュニケーションをとってみる。つながって帰ってみる。慣れてきたらどこかのタイミングで、興味関心の分野が近い人と小さく企画をしてみてください。そんなステップを踏んで、僕は今に至っています。
スキルやテクニックを磨くことも大事ですが、まずは気になる場に参加してみる、コミュニケーションを取ってみることはもっと大切ですよね。さらに、オンラインなら全国からそういった場を探せますし、自らイベントやコミュニティを企画するハードルも低くなりました。
いきなり企画が難しかったら、つくる側のお手伝いから始めるのもいいかもしれませんね!
お手伝いは最高だと思います。小さなことからでいい。一対一の会話も「場」です。その積み重ねが、イベント・ワークショップ・プロジェクト・事業と大きくなっていく。まずは「小さい対話の場」をたくさん積み重ねてみてください。
もし僕の話を聞いて気になったところ、一緒に何かやりたい! などあれば、SNS各種あるので、気軽に連絡ください。
最新情報をお届けします
まずは、どのような仕事・活動をされているのか教えてください。